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バカリズムの脚本ドラマ『ブラッシュアップライフ』ヒットした様です。

本日(2023.03.11)『ブラッシュアップライフ』終わってしまいました。

今シーズンの注目ドラマはこれと、「女神(テミス)の教室(フジ月9)」と「木曜ドラマ・警視庁アウトサイダー(テレ朝木曜21時)」及び「今夜すきやきだよ(テレ東金曜深夜0時12分)」「全力で、愛していいかな?(金曜深夜0時52分)」でした。

※草彅剛主演で話題になっていて、視聴率8.5%と高めですが、旧来のドラマ構成であり、興味はわきません。


脚本がバカリズムのドラマは前から注目していたので、2023年1月29日 に記事を上げています。

■バカリズムのテーマ

最初に「『人生やり直しがきくのか?』と問いている」と思っていたが、より深い「人生の意味」がテーマだった。

『幼馴染と老後迄一緒に地元で過ごす事の幸福』

時代の空気は変わったのだろうか。
ドラマは、うらやましい老後で終わった。



■安藤サクラ主演『ブラッシュアップ』がヒットした5つの理由

日刊SPA 高堀冬彦 2023年03月10日

最後の最後に名言を吐いている。バカリズムらしくない。
年取って行くと1年が短く感じるのは、5歳児にとっての1年は1/5年だけれど、50才の1年は1/50だから、だって。

 日本テレビ『ブラッシュアップライフ』(日曜午後10時半)は間違いなく傑作だ。中盤までは軽妙なコメディだったが、終盤から感動作に姿を変えた。鮮やかな移行だった。5日放送分の第9話のコア視聴率(13~49歳の個人視聴率)は5.0%で冬ドラマの中でトップ。最終回のコアが同4.9%だった秋ドラマのヒット作『silent』(フジテレビ)と肩を並べた(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。  
なぜ、ヒット作になったのだろう。理由を5つ挙げてみたい。(※以下、ネタバレあり)

理由1 一般的なタイムリープ作品とは正反対の斬新な構成

たとえばTBS『テセウスの船』(2020年)の場合、31年前にタイムリープした田村心(竹内涼真)が、父・佐野文吾(鈴木亮平)の犯行とされた殺人事件の真相を知ろうとするところから物語は始まった。ほとんどのタイムリープ作品は物語の序盤で主人公の目的が明かされる。

ところが『ブラッシュアップライフ』は違った。主人公・近藤麻美(安藤サクラ)の真の目的が幼なじみを救うためだと明かされたのは第8話。それまでは麻美すら自分が成すべき役割に気づいていなかった。既に物語は終盤に入っていた。第7話までは麻美が幼なじみのなっちこと門倉夏希(夏帆)、みーぽんこと米川美穂(木南晴夏)と共有する時間が繰り返し描かれた。無邪気な会話と取るに足らない行動。意味はほとんど感じられず、単に作品の持ち味だと思われた。  しかし、違った。第7話までは観る側に対し、3人はお互いが空気のようなものだと伝えていた。あると意識しないが、消えてしまうと生きていくのが辛くなる存在である。親しい幼なじみがいかに大切なものであるかを表現していた。斬新で巧妙な構成だった。


第7話までの壮大な伏線

第7話までの麻美は徳を積んで来世も人間に生まれ変わることしか考えていなかった。あくまで自己本位。ところが、第8話で、なっちとみーぽんが航空機事故で死亡し、それを救おうとした5周目人生のパイロット・まりりんこと宇野真里(水川あさみ)も死んだことを知ると、考えが変化する。

同話の終了5分前、麻美は建築資材の落下事故でまた死ぬ。
4周目の人生だった。死後案内所の受付係(バカリズム)から、今度は来世も人間と伝えられる。満願成就だ。研究医として世のために働いたことが認められた。

けれど麻美はちっとも喜ばず、宙を見つめ、しばし考え込んだ。
胸中に去来したのは3人と過ごした楽しかった日々。直後に麻美は人間に生まれ変われるチャンスを捨て、受付係に告げた。 「(5周目を)やり直せますか」  それが可能だと知ると、今度はうれしそうに笑った。親しい幼なじみを救うため、身を投げ打つことを決心した。  

脚本を書いているバカリズムにとって、この場面までの物語は全て伏線だったのではないか。友情は創作物の永遠のテーマであるものの、ドラマで描こうとすると臭くなってしまいがち。だが、タイムリープという状況を使い、コミカルタッチにしたことで、それが防がれた。

理由2 地方都市を舞台にした点

この作品は架空の地方都市・埼玉県北熊谷市を舞台の中心にしている。
大概のドラマは東京の港区や渋谷区など都心部が舞台となるから異色だ。

ただ、それは目先を変えたわけではなく、必然性があった。
物語のキーワードが「幼なじみ」だから、同じ公立小中学校に通ったほうが描きやすい。
遠方からも通う子供もいる私立小中学校組が多い都心部を舞台にするより、地方のほうが良かった。

麻美を始め、登場人物は地元から心が離れない。これも地方ならではのこと。都心部以外に住む現実の視聴者も多くが地元に拘っているはず。ひところ地元に拘る人を「マイルドヤンキー」と呼んで特別視する風潮が一部にあったが、これは不可思議な話だった。人が母国や出身地、地元に思い入れを抱くのは世界的に見ても当たり前の話なのだ。
だから高校野球やJリーグなど地元色が強いスポーツが盛り上がる。海外サッカーも地域のチームを応援する。麻美らの成人式後の飲み会は通っていた公立中学校単位で行われたが、そんな例は数多い。地元に拘っているからだ。

地方都市感を出すため、実在する「ラウンドワン」や「夢庵」「ココス」「ジャスコ」などを登場させた。これは違う意味でも作品に役立っている。

タイムリープや幽霊などが出てくる現実離れした物語の場合、それ自体が大ウソだから、ほかの部分はなるべくリアルにしたほうがいい。
そうしないと、観る側を大ウソの世界に引き込めない。小説や映画にも通じる鉄則である。「ラウンドワン」などが実在するから、非現実的な物語の説得力が増した。

理由3 物語のシンプル化が図られている

 麻美は人生5周目、まりりんは6周目。
ややこしい物語のようだが、なるべくシンプルになるよう努められている。たとえば、なっち、みーぽんのパーソナルデータは全く分からない。
2人の職業は明かされていないし、交際している相手の有無も不明。物語の本筋とは関係ないから、思い切って削ぎ落としたのだろう。麻美が人生をやり直すたびに成人式後にレミオロメンの『粉雪』を歌い、その歌声を耳にこびりつかせた加藤(宮下雄也)に至ってはセリフすらないに等しい。その分、麻美の5周におよぶ人生を克明に描けている。

理由4 伏線と考察の面白さ

 第7話前半でのこと。時は2003年で、麻美は4周目人生の中学生だった。地元に「ラウンドワン」が出来たので、まりりんは麻美に向かって「今までイオンくらいしかなかったもんね」と声を弾ませた。麻美も「だよね」と応えた。クビを捻った。ジャスコがイオンになったのは2011年で、麻美が高校3年生のときだ。  だが、2人の会話のナゾは同話後半で解ける。まりりんもタイムリーパーで、後の歴史の記憶を共有していたからだ。麻美が人生2周目だった第3話にまりりん(当時は誰なのか不明)が登場していた理由も明かされた。あーちんの交通事故を防ぐためだった。  
全編、幼なじみ愛が溢れ、伏線が張りめぐらされている。

理由5 世界的映画並みの出演陣

 麻美を演じている安藤は権威ある「キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞」を2012年から6年間に3回も獲っている。ほかの映画賞も山ほど得ており、挙げたらキリがない。疑いようがなく国内トップレベルの女優だ。  
この作品での安藤の演技も出色の一語。考えてみると、安藤は1周目人生の地方公務員から5周目のパイロットまで5役に扮しているわけで、その演技力の高さには驚かされる。
その上、20歳前から39歳まで演じている。麻美役を演じられるのは安藤くらいではないか。

ほかにも映画界の一線級がそろった。不倫問題でぶち切れたレナちゃんこと森山玲奈を演じている黒木華(32)、トホホなミュージシャン志望者のふくちゃんこと福田俊介に扮している染谷将太(30)、8周目人生をマイペースでエンジョイする河口美奈子役の三浦透子(26)、水川、夏帆、木南ら。こんな豪華布陣、海外映画祭に挑もうとするような映画でないと、考えられない。  

映画界では「安藤サクラさんが出るのなら自分も出たい」と言う人がいるという。演技の勉強になるためらしい。この作品も安藤の主演作だから出ている人がいるのだろう。  

さて、最終回(第10話)はどうなるのか。第9話に短く登場した浅野忠信(49)が正体不明だが、やはりタイムリーパーなのではないか。キーパーソンだろう。何らかの理由で4人の航空事故死を防ごうとしていると読む。 <文/高堀冬彦>

高堀冬彦
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。
スポーツニッポン新聞東京本社での文化社会部記者、専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」での記者、編集次長などを経て2019年に独立



■最終回の予告



「ブラッシュアップライフ」最終回 安藤サクラ“麻美”、水川あさみ“真理”に「170年!お疲れ様」「完璧な大団円!」など感動の声上がる


ちなみに、視聴率9話平均 6.2%



終わり


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