全裸監督【★★★★☆】

僕は基本的に日本の映画やドラマはあまり観ない。
なぜならその世界観があまりに現実的すぎるので、リアリティに欠ける描写やセリフがあるとつい反応してしまうクレーマー気質だからだ。



誰がクレーマーやてめこの。



なので観るとすればもっぱら時代劇というお爺さん気質なのだが、そんな僕が珍しく観たのがそう、今話題沸騰中のNetflixオリジナルドラマ「全裸監督」である。

実在する伝説のAV監督、村西とおるの絶頂から転落、そして復活までの半生を描いたドラマで、村西とおるを演じるのは山田孝之。


結果から言うとこのドラマ、ぶっちゃけとんでもない最高傑作です…。
軽い下心も携えながら観始めた自分に後ろからリキラリアットをかましたいくらい、本当に素晴らしいドラマだった。

しかし、題材が題材なだけに注意しなければいけない点もある。

そう、このドラマの主人公はアダルトビデオの監督だ。
なのでもちろんAVを撮影するシーンなどの濡れ場も多く存在する。


本物のAVをカニだとすると、
このドラマの濡れ場はほぼカニ(カマ)である。

これでどれだけ過激かは100人中100人にご理解いただけたと思う。

なので、エロに耐性の無い方にもあまりオススメは出来ないし、ちびっ子なんてもってのほかの全力NGご視聴禁止である。
ご家族と同居しているお父さん方にもヘッドホン装着しての視聴を推奨しておきたい。
万が一視聴中に家族に見つかっても「社会勉強」もしくは「芸術鑑賞」この言葉で逃げ切っていただきたい。

そんな過激なシーンもあり視聴者を選ぶ内容のドラマではあるが、僕はそこを差し引いたとしてもこのドラマは「最高」だとあえて断言しよう。

色んな意味でめちゃくちゃ刺激の強い中身だが、それは裏を返せばつまり、


「制作サイドの本気度」なのである。


出演者、スタッフ、全員の本気が詰まりに詰まったこのドラマを観ない理由は正直、交差点にも夢の中にも探しても見つかる気がしない。


ちなみに僕は村西とおるさんを全く知らなくて、予備知識ゼロの状態で最後まで見通してから、Wikipediaで村西とおるさんを初めて検索した。
そんな僕ですらこれだけ面白かったんだから、村西とおる作品と共に青春時代を過ごした人達や、バブル絶頂期を生き抜いた人達にはたまらない設定や描写が盛りだくさんだと思う。
そんな全裸監督の魅力を、僕なりに感じた点をまとめながら認めたいと思うので是非ティッシュを用意して読んでほしい。


シーズン1

シーズン1は村西とおるが英会話教材の営業マンを辞めて、エロの世界に足を踏み入れ、様々な仲間と出会い、AV監督として花を開いていくところを中心に描かれている。
僕は改めてこの山田孝之氏のポテンシャルに脱帽した。
ウォーターボーイズで初めて山田さんを観た時も「同い年やのにすげー!!」ってなったし、
電車男は当時好きだった女の子と一緒に観に行った事を思い出して切なくなる。(知らんがな)

村西とおるさんを知らないのに、「村西とおるみたい!!」て思ってしまうくらい村西とおるそのものである。

意味は分からないが、分かったふりで続きを読んで欲しい。



体型もぼってりと太り、いわゆるデニーロアプローチというやつで、俳優としての本気を見せつけられた。
村西さんっぽい喋り方もついつい真似したくなるのだ。

実際に声に出して真似してみたが全く似てなかったので、金輪際やめようと心に誓った。


もう1人の主役、黒木薫

そして、全裸監督で欠かすことの出来ない人物と言えばやはり黒木薫だ。
黒木薫役を演じたのは森田望智(みさと)さん。
この黒木さんというのもどうやら実在の人物らしく、おそらく森田さんはこの役作りのために相当自分の中に黒木薫を憑依させたに違いない。

その本気度は脇を見れば一目瞭然である。
そう、黒木薫と言えばなんの遠慮もなくたっぷりたくわえた脇毛が有名…らしい。
そこまでしっかりと再現している。
おそらく本物だと思う。
違ったらごめん。

そして、なんといっても初めて村西監督とまぐわう濡れ場。
これが彼女の初のAV撮影になるのだが、これが本当に迫真の演技。

そこに至るまでの彼女のバックボーンを嫌という程見せられてきている視聴者は、ついに解放する彼女のエロスに一緒になってエクスタシーを感じてしまうほどに感情移入させられているのだ。
ここまでの魅せ方、そして迫真の絡みのシーンは中途半端な覚悟でやっていない事をまざまざと見せつけられた。

もし僕がほら貝をくわえていたら間違いなく一緒になって3回吹いていたに違いない。


昭和の渋谷

舞台は1980年代ということで、随所に昭和を思い出させるセットや小道具が散りばめられている訳だが、中でも圧巻なのは当時の渋谷を再現している合成CGだ。
スタッフの並々ならぬ努力と本気度が作り上げた、このドラマのクオリティを思いっきりぶち上げているひとつの大きな要因だと思う。

僕もギリギリ昭和の人間なので

懐かしー!と思う部分は多少なりともあったので、昭和世代の方にはその映像だけでも観る価値はあるのでは無いかと思う。


シーズン2

シーズン1とは打って変わってシーズン2は救いようのないほどの転落の連続で観ている側の心の強さも試される。

波乱を含みながらも快進撃を続ける村西とおるが次に目をつけた事業が衛星放送で

「空からエロを降らせるんだ!」

という情熱のもと、衛星放送にアダルトビデオ放送チャンネルをもつ夢を叶えようと奮闘する。

しかしこれが転落への第一歩となり、坂道を転がるように破滅への一途を辿っていく。
仲間は次第に村西のもとから離れ、はたまた裏切りにも遭い、手元に残るのは多額の借金。
今までどんな苦難や逆境も何とかかんとか乗り越えてきた村西だったが、人間関係の瓦解により全てを失っていく。


とことん嫌われる村西とおると山田孝之

転落を決定づける回になったのが第6話。
村西のとある暴走により、スタッフや女優から詰め寄られるが逆ギレをして、全員事務所から追い出そうとするシーンがあるのだが、これが本当に衝撃的で観ているこっちまで村西とおるに憎悪を抱いてしまうほどに緊迫したシーンになっている。

山田孝之さんがラジオ番組でこの回について話していたのだが、実は台本に無いセリフも山田さん自身が付け加えたらしくそれはおよそ台本の2倍もの量に膨れ上がっていたと言う。

この理由については、
どうやったらそこにいる全員を事務所から追い出せるか考えた時、村西とおるはもちろん、山田孝之としてもそれぞれの俳優にとことん憎んで嫌われないといけないということでわざと嫌がる言葉を自ら足していったと話している。
怒りながら裸になるという描写も山田さんのアイデアらしい。

これにより各女優さんが本番以外の時も目を全然合わせてくれなくなり、ガチで嫌われていたと嘆いていた。
あの時は山田が本当に嫌いだったと女優のみなさんも語っていたくらい、みなさん役に没頭していたようだ。

しかし、それによりあのシーンがよりリアルで緊迫した空気を生み出し、山田孝之という俳優の狂気じみた俳優魂を見せつけたことは間違いないだろう。


細かい事は気にしない!!


シーズン1の頃からちょこちょこと気にはなっていたのが、台詞の甘噛み。
気にならないと言えばならないが、なると言えばなる程度の甘噛み。
しかし、それを凌駕する空気感であったり、違うこだわりを優先した上での「あえて」だと思って観ると、それはそれでリアリティがあってそれすらもいいと思えてしまう。
最終回の終盤で、山田さんがとんでもない噛み方をしているのだがそれすらもそのまま使っている。

あれはわざとなのかな?
そういう台詞だったのかな?

もしそうだとしたら天晴れだとしか言いようがない。
そうでなくとも、そう思わせるほどの技術で魅力しか無い。


「死にたくなったら下を見ろ。俺がいる」

とにかくこのドラマには妥協が無い。
どこまでもとことんこだわり、面白いと思ったもの、作りたいと思ったものに対してとことん追求している。
その本気度が随所に散りばめられていて、気がつけば昭和の時代にタイムスリップして、チーム村西の一員となり一喜一憂している自分がいる。

僕もそうだが、今から観る人はシーズン1からイッキ見出来るので、是非たっぷり時間がある時に堪能していただきたい。

そして村西さんの「死にたくなったら下を見ろ!俺がいる」この言葉に胸を震わせて欲しい。


ということで、僕の評価は

【★★★★☆】4.1点

とさせていただきます。
どれだけオススメだと言ってもやはり観る人を選ぶ作品である事は確かなので、あえて控えめにこれくらいにしておく。

逆を言えば、控えめでも4.1点というところで、どれだけ面白かったかということを感じていただければと思う。
そして、今まで隠していたけど正直に言おう。


僕は山田孝之が大好きだ。



この作品について書くかどうか迷っていたけど、やはりここまで心を動かされたものをほったらかしにするわけにはいかないと思ったので、このnoteはもはや僕のメモだと思っていただきたい。

最後まで読んでくれたあなた、ナイスですね!!


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