ドリームプラン【★★★★☆】

※本文はネタバレ要素も含むので、ご注意ください。


本作は世界最強プレイヤーと称されたビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を、全くテニス経験のない父親リチャード・ウィリアムズが育て上げた模様を描いた伝記作品。

実話をもとにした映画というのは逆に予備知識を全く入れずに観た方が純粋に観れるなと今回改めて感じた。
さらに、テニス自体いまいちルールもハッキリ把握していないものだから、余計な邪念に苛まれることもなく最後まで楽しめた。

なまじっか史実に詳しいと、実際とは違う部分や美化され過ぎたところに嫌悪感を抱いてしまうこともあるかもしれないが、そういうことも無い。

ということで、純粋に「作品」として楽しめ、最初から最後まで1秒も弛むことなく夢中になって観ることが出来た、所謂「大当たり」だった。

映画としての演出や構成も申し分なく、きっと描くところはたくさんあっただろうが、「作品」として最高の要約とクライマックスを描いてるなぁと感じた。

…と予備知識無いくせに言うとります。

特に最後の試合からエンディングに向けては、個人的にベストだったと思っている。


父親役のリチャードを演じるのは名優ウィル・スミス。
僕はウィル・スミスが大好きだ。
どこか飄々としていて、芯のある演技にいつも圧倒される。

そして、天才姉妹ビーナスとセリーナを演じたのはサナイヤ・シドニーとデミ・シングルトン。
彼女たちはこの撮影のためにテニスの訓練を受けたらしいのだが、素人から見るとプロのそれにしか見えないくらい様になっていて迫力のあるプレイだった。

そして、リチャードと共に彼女たち含め5人の娘を育て上げた陰の立役者でもある母親オラシーンを演じたのはアーンジャニュー・エリス。
破天荒な父親に振り回される娘を優しくフォローし、強引な夫に物怖じせず、家族を大きな優しさで包み込む存在感は物語には欠かせない。
まさに「母は強し」の象徴のような人を見事に演じている。

貧しい暮らしの中で、娘をプロテニスプレイヤーに育て上げることを決意したリチャードは、目標に向けた明確なプランを実現させるために毎日奮闘する。
早熟すぎて道を外してしまわないようにあくまで子供らしさを忘れさせず、勉学も怠らせない、コーチとしてだけでなく父親としての教育も徹底しておこなった。

初めて出場したジュニア大会で優勝したビーナスや姉妹が勝利の悦に浸る中、リチャードは「勝者も敗者もベストを尽くした。謙虚な気持ちを忘れるな」と強く叱咤するシーンはとても印象的だ。

ビーナス、セリーナ共に類まれなる才能を持っていることは間違いないが、やはりどこかで優劣というのは生まれてくるものだ。
力の差はもちろん、その時のコンディションや運によって、どちらかが勝ってどちらかが負けることも珍しくない。
そうやってどちらかに生じる劣等感に対し、リチャードはどのように接するのかが子を持つ親としてすごく気になって観ていた。

有名コーチから指導を受けられることになった時、選ばれたのは姉のビーナス1人だった。
ジュニア大会で初めて結果を出して注目されたのもビーナスだ。
そんなビーナスが華々しくプロデビューしたコートを見ながらセリーナは一人立ちすくんでいた。
その姿を見つけたリチャードはセリーナにこう声をかける。

「お前に秘密を教えよう。ビーナスは間違いなく世界最強の選手になる。そして、お前は世界最高の選手になる。今までよく耐えてきた。お前なら耐えられると思っていた。安心しろ、俺の中にはお前のプランもちゃんとある。」

その言葉通りセリーナは、後にグランドスラム(全豪オープン・全仏オープン・ウィンブルドン・全米オープンのテニス界の世界4大大会を制覇)を23回(女性歴代2位)獲得、オリンピックでも金メダルをとっている。

今をときめく大坂なおみ選手にも多大な影響を与え、2021年の全豪オープン女子シングルス準決勝ではセリーナ選手と大坂なおみ選手が激突し、見事大坂なおみ選手が勝利した。
試合後2人は熱い抱擁を交わしている。


このように、結果的にリチャードは自分が立てたプランを全て叶え、プロテニス界に大きく貢献した。
娘の才能と自分が信じた未来を決して疑うことなく、かつ親として愛情を注ぐことも欠かすことは無かった。
娘もそんな父親をどこまでも信じ続け、家族の絆でいくつもの勝利を収めていった。


この映画を通じて改めて子供との接し方や、育て方、総じて「教育」について深く考えさせられた。
しかし、リチャードの教育法が正解として教科書代わりになるわけではない。
たまたまこのやり方がウィリアムズ親子にとって最善だっただけで、全ての人に当てはまるとは限らない。
それでも彼が信じる心と、その心から出る言葉の強さにはたくさん勇気をもらったし、これからも忘れずにその気持ちを持ち続けたいと思った。

ウィリアムズ親子を知らない方も、テニスを知らない方も、子供がいない方も、全ての人に観てほしい素晴らしい作品だったということで

【★★★★☆】(4.8点)

とさせていただく。
何のマイナス0.2点やねんという話だが、物語に夢中になりすぎて途中から出てきたコーチ役の人が、大好きなドラマ「ウォーキングデッド」に出演していた人だと気付かなかったから。

あと、終始ウィル・スミスが短パンで太もも丸出しだったことがセクシーすぎるということでマイナス0.2点だ。


ということなので、文句無しの素晴らしい作品「ドリームプラン」是非劇場でご覧あれ!

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