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②雷鳴頭痛とクモ膜下出血のリアルを知る!

危険な頭痛のポイントは整理できたでしょうか. 3つの意識する点, そしてSNOOPがポイントでしたね(具体的なこれらの項目から想起する頭痛の原因は確認しましたね?!).
今回は雷鳴頭痛(Thunderclap headache)で有名なクモ膜下出血について, 実際の救急外来における受診パターンも含め理解してしまいましょう.

頭痛診療の心構え:頭痛 7 Rules

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雷鳴頭痛とは

雷鳴頭痛(thunderclap headache;TCH)とは, 1分以内にピークに達する頭痛を意味し, TCHの代表的な疾患は, みなさんご存じクモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage ; SAH)です. しかし, 以下の2点については理解しておかなければなりません.
❶SAH以外にもTCHを認める疾患が存在する
TCHの代表的な疾患はSAHですが, それ以外にも表1の様な疾患が雷鳴頭痛を認めるとされます. 頻度からするとSAHが多いため, まず覚えるべきはSAHなのですが, それしか知らないと困ることがあるのです.
可逆性脳血管攣縮症候群(Reversible cerebral vasoconstriction syndrome;RCVS)という病気を知っているでしょうか. 表1の最も上に書いている通り, この疾患は意外に多いのでは?といった疾患です.
50歳前後の女性に多く, 診断までには平均4.7回の受診, 9.3日の時間がかかるとも報告されています(2). 以前と比較し現在はCTやMRIが何処でも撮影できるようになり, 実はあの痛みの原因がRCVSだったのでは, さらにはSAHの原因が実はRCVS...なんてこともあるようです. RCVSは見過ごされている可能性が高いと示唆されています(3).
RCVSはSSRIやトリプタン製剤, コカインなどの薬剤の影響などもあるとされます. 片頭痛やうつ病の患者さんが, 頭痛を訴えて来院した際, 頭部CT, MRIなどの精査を行っても異常が見いだせないと, 「片頭痛だろう」, 「気持ちの問題だろう」などと思いがちですがそれではいけないわけです. わかっていないことも多く, 私も詳細な説明はできませんが, 救急外来での対応はシンプルです. 検査結果よりも患者さんの訴えを重視する, ただそれだけです. 検査で異常が見いだせなくても, 患者さんが痛みで苦しんでいる, 突然発症であったなど危険なサインを訴える場合には軽視してはいけません.
※RCVSの診断基準を添付しておくので確認しておいて下さい(表2).

雷鳴頭痛の原因(表1)

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RCVSの診断基準(表2)

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❷SAHの頭痛は1分以内ではなく10分以内にピークに達すると覚えておく
突然発症であればらしさは増すため, 必ず発症様式は確認します. 「何をしているときに痛みを認めたのですか?」の問いに対して, 再現ドラマが目の前に浮かぶような病歴が確認できれば突然発症でしたね. 夜間に目が覚めた場合, そして失神も瞬間的な意識消失発作でしたから突然発症でした .
しかし, 雷鳴頭痛でなければSAHでないかというとそんなことはありません. そもそも痛みで辛いときにどの程度で痛みがピークに達したかなどは正確にはわかりません. 痛みが辛い場合や困惑している場合などは, 実際には短い時間であっても長く訴えるものです. SAHの場合には10分程度までは十分あり得るため1分ではなく10分と覚えておくとよいでしょう. 1時間以上かけてジワジワ痛くなってきた場合などはらしくないのです(例外は言い出したらきりがないためシンプルに覚えましょう).

クモ膜下出血と頭部CT

最近のCTであれば, SAHの診断はほぼ100%できるのですが, これにはいくつかの条件が必要です. ここでは3つ覚えておきましょう.
❶発症からの時間
発症から間もなく来院した場合には, CTでほぼわかります. 時間が経つとともに感度は下がるため, 受診のタイミングを意識して読影するようにしましょう. 発症から6時間以内での来院と24時間以上経ってからの受診とでは検査の感度は異なるのです.
❷貧血の有無
貧血を認める患者では, そうでない患者と比較して画像がハッキリしないことがあります.
❸読影力
これは当たり前なのですが, 読影力は超大切です. 発症6時間以内のSAHは100%頭部CTで検出できるというのは, 読影がきちんと出来る人の話. Sylvius裂や橋前槽など見逃しがちな読影ポイントを整理しておきましょう.


クモ膜下出血はいつ見逃されるのか

見逃される理由はズバリ2つ. 1つは疑っていない, そしてもう1つが読影力の問題です. 症状が軽いから, 歩いて来院したから, 頭部CTではっきりしないからと否定してしまう, 画像で疑わしい所見があるにも関わらず気付くことができない, これらが原因なのです.
今回取り上げた事柄を頭に叩き込み整理しておきましょう.


参考文献

#1. Schwedt TJ. Thunderclap Headache. Continuum (Minneap Minn). 2015 Aug;21(4 Headache):1058-71.
#2. K.Taerim et al. Reversible cerebral vasoconstriction syndrome at the emergency department. Clin Exp Emerg Med 2015;2(4):203-209
#3. Ducros A, Boukobza M, Porcher R, Sarov M, Valade D, Bousser MG. The clinical and radiological spectrum of reversible cere- bral vasoconstriction syndrome: a prospective series of 67 pa- tients. Brain 2007;130:3091-101. 

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