⑥見落としがちな原因を知ろう!
二相性反応に関しては理解できたでしょうか。とにかく一相目を適切に介入することがなにより大切ですので、アナフィラキシーの認識、アドレナリンの適切な使用を心がけることをまずは意識しましょう。
今回は見落としがちな原因に関して。アナフィラキシーに至った原因が造影剤、蜂に刺されたなど明確な場合にはよいですが、原因が同定できていない場合には以下のことを考えてみるとよいでしょう。
○前は大丈夫だったのに...
甲殻類のアレルギーなど、普段からアレルギーを指摘されている方が誤って食べてしまった場合であれば原因は明らかですが、これまで特に問題なかったものに対してアナフィラキシーを起こしてしまった場合にはどのような状態を考えればよいでしょうか?新たにアレルギーを獲得したことも考えますが、以下の可能性をも考えておきましょう。
●ヒスタミン中毒
赤身魚(特に青魚)に含まれるヒスタミンによって引き起こされる中毒反応です(図1)(1)。赤身魚にはヒスチジンが多く含まれていますが、これを室温で放置すると細菌が増殖し、ヒスチジンがヒスタミンに変化して蓄積します。このヒスタミンは加熱調理しても分解されないため、生魚を室温で放置することは避けなければなりません。
集団で発生した場合には原因の特定が比較的容易ですが、個別に発症した場合には、摂取した食物の鮮度を意識しないと、誤って好物を避ける指示を出しかねませんので注意しましょう。
その他、パンケーキ症候群(経口ダニアナフィラキシー)、アニサキスなども意識しましょう。
○遅発性アナフィラキシー(late onset anaphylaxis)
IgEを介した即時型アレルギーは、通常抗原暴露から2時間以内に症状が認められますが, それ以上経過してから発症することもあります。消化管で吸収されるのに時間がかかることが要因と考えられていて、その代表的なものが納豆です。
●納豆アレルギー:粘り強い問診が必要
納豆アレルギーは約半日程度(5〜14時間)経って症状が出現します。運動や胃腸炎などの腸管粘膜障害によって、誘発までの時間が短縮することもありますが、食べて直ぐに症状がでてこないことには注意が必要です(2,3)。原因が同定できた場合にはOKですが、原因がはっきりしない場合には、直前だけでなく半日程度遡って確認するとよいでしょう。14時頃に症状を認めたとしても、原因が前日の夕食に食べた納豆かもしれないのです。
遅れて症状が認められたのだから、それ程重篤化はしないだろうと思うかもしれませんが、アナフィラキシーショックに至ることもあるので注意です。
また、納豆アレルギー患者の多くはサーフィンなどのマリンスポーツ歴があることも報告されているため、患者さんに問診してみてくださいね(4)。
参考文献
#1. 一般財団法人東京顕微鏡院:ヒスタミン中毒.
https://www.kenko-kenbi.or.jp/columns/food/2035/(2024年8月アクセス)
#2. Inomata N, Osuna H, Yanagimachi M, et al. Late-onset anaphylaxis to fermented soybeans: the first confirmation of food-induced, late-onset anaphylaxis by provocation test. Ann Allergy Asthma Immunol. 2005 Mar;94(3):402-6. PMID: 15801254.
#3. Inomata N, Nomura Y, Ikezawa Z. Involvement of poly (γ-glutamic acid) as an allergen in late-onset anaphylaxis due to fermented soybeans (natto). J Dermatol. 2012 Apr;39(4):409-12. PMID: 22035089.
#4. Inomata N, Chin K, Aihara M. Anaphylaxis caused by ingesting jellyfish in a subject with fermented soybean allergy: possibility of epicutaneous sensitization to poly-gamma-glutamic acid by jellyfish stings. J Dermatol. 2014 Aug;41(8):752-3. PMID: 24943113.