見出し画像

⓪アナフィラキシーの実態

アナフィラキシーはどこでも起こり, 誰もが初期対応を適切に行う必要があります. 自分が処方した薬で, 点滴で, 造影剤で起こることもあり, 常に意識しておく必要があります. 今回はイントロダクションとして, アナフィラキシーの実態について, そして次回からはポイントとなる7 rulesに関してまとめておきます.

アナフィラキシー 7 rules

アナフィラキシー 7 rules

アナフィラキシーは見逃されている?

みなさん, ”アナフィラキシー”の患者さんを診たことがあるでしょうか. 救急外来で仕事をしていると出会う頻度が高いですよね. 救急搬送症例, walk-in症例以外にもCT室から造影剤投与後の患者さんの診察依頼が来たり, 病棟でも抗菌薬などによるアナフィラキシー..., 忘れた頃にやってくる, そんな感じでしょう.
『皮疹+喘鳴』のような典型的な症例はわかりやすいですが, 実はアナフィラキシーは見逃されていることも多く, そして唯一の治療薬であるアドレナリンが適切に投与されていないというのが実態であり, 問題視されています(1).
「え?アナフィラキシーなんて認識するのは簡単だし, アドレナリンを投与するのなんて常識!」, そう思っているあ・な・た, 意外と悩むこと, 見逃しがちなこと, あるんです.

アナフィラキシーによる心停止・呼吸停止

アナフィラキシーによって心停止・呼吸停止に至ることがあるのですが, どの程度の時間的余裕があるのでしょうか. 「アナフィラキシーかな, どうかな???」と悩んでいる時間はあるのでしょうか.
薬剤で5分, ハチ毒で15分, 食物で30分と報告されています(2). あっという間ですよね. もちろん多くの症例は心停止・呼吸停止に至ることなく介入することができますが, なかには短時間で心停止へ陥ってしまう症例があるのは事実です. 私も造影剤投与後, 抗菌薬投与後数分以内に心停止へ陥った症例を数例経験したことがあります. アナフィラキシーは”瞬時に”判断し介入する必要があるのです.

アナフィラキシーによる死亡

前述の通り, アナフィラキシー症例のなかには心停止・呼吸停止へ陥ってしまう症例が存在するわけですが, それに至るまでにアドレナリンが投与されている割合が14%と非常に低いことが報告されています(3). この数値を覚える必要はありませんが, 本邦の医療事故調査制度の結果をみても, アナフィラキシーの症状が認められてからアドレナリンの投与までの時間がかかっていることが転帰不良と関連しているのは明らかです. とにかく, アナフィラキシーは早期に認識し, アドレナリンを適正使用することが超重要です.

参考文献

#1. Sclar DA, Lieberman PL. Anaphylaxis: underdiagnosed, underreported, and undertreated. Am J Med. 2014 Jan;127(1 Suppl):S1-5. PMID: 24384132.
#2. Pumphrey RS. Lessons for management of anaphylaxis from a study of fatal reactions. Clin Exp Allergy. 2000 Aug;30(8):1144-50. PMID: 10931122.
#3. Pumphrey RS. Lessons for management of anaphylaxis from a study of fatal reactions. Clin Exp Allergy. 2000 Aug;30(8):1144-50. PMID: 10931122.
#4. 注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析. 医療事故調査・支援センター 一般社団法人 日本医療安全調査機構

ミュージカル好き救急医から, 知っているとチョコッと役立つ知識を少しずつお届けします. ぜひ!