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車・機械設備業界が開発した制振材

掲載した画像は、私の取引先の受注生産の制振材です。市販されていない、特定企業への卸売専用の資材です。契約企業が確定数量を発注してからメーカーの専用工場が生産して現場に直送便で納品するシステムです。
*製品は車産業・機械設備メーカーの企業が開発したもので、一般的な使用目的は設備の制振・絶縁材、振動騒音の緩和目的の養生シートです。

契約企業の大半は大手企業・代理店ですが、建築業界では主に床材の下地材として使用することが多く、私(防音職人)のように生活防音や木造防音室に使用している専門業者は居ません。
*正確には他に数社存在していたのですが、現在は防音設計・工事分野から引退しており、住宅に限定すると、私だけになりました。

制振材は使いかたが難しく、詳細な設計仕様の検討や防音工事における施工要領とセットで取り扱うため、実績のある専門家しか使いこなせないためです。資材の単価は、類似品の中では、私の取引先メーカーが最も安いです。市販品を含めても、約5種類しかなく生産しているメーカーも、現在は4社程度となっています。このうち、私の取引先は2社です。

防音職人での名称は「制振フェルト」と「特殊フェルト」ですが、これは防音設計の仕様書に明記するときの資材名称であり、各社メーカーの製品名とは異なりますので、ネットで検索しても同じ製品を特定することは出来ません。取引先メーカーから生産工場・事業所名称を記載しないように要望されているためです。

軽量衝撃音と制振材

市販品は耐久性や制振性能に難があるため、大半が軽量衝撃音を緩和するために、カーペットやウレタンマットの下に敷くことを想定しており、主に軽量音を軽減する目的で使用します。
*畳の下やカーペットの下に敷き詰める事例が大半です。

掲載した画像の2種類の制振材も概ね軽量音対策に使用しますが、併用する遮音材などとの組合せで防音効果が変化します。
また、耐用年数が長いので、住宅の居室だけでなく、木造防音室にも使用します。

ですが、大半の専門業者は、床の軽量音対策として制振材を販売したり、現場で使用します。
防音職人のように木造住宅や木造音楽室、マンションで防音工事に使用している専門業者は、現在は居ません。
木造ピアノ防音室の防音設計・施工で活用している専門家は私一人になりました。

重量衝撃音と制振材

通常、制振材単独で重量衝撃音対策に効果のある製品は存在しませんので、複数の防音材や建材と併用して組み合わせることが前提となります。

対応可能な用途は、ピアノなど木造音楽室と木造住宅の固体伝播音の軽減目的です。例えば、グランドピアノ・チェロの共振や振動音の抑制、木造住宅の足音の軽減。スピーカーなどの絶縁材としても活用できます。

ですが、この製品の販売だけを要望して来る建築士や建築業者が時々居ますが、具体的な用途の説明もなく安易な取引のみを希望される場合は断っています。防音設計の苦労や注意点を軽視するような建築関係者のご相談には全く興味がありません。

薬と同じで特効薬というものはありません。あくまで複合的な処方・工夫によって構築される現場において効果を発揮するものです。
安易な思い込みだけで使って欲しくないです。
私は、現在使用している2種類の製品の実用化にあたり、自分の担当現場に廉価で納品して防音効果を検証した上で、標準仕様に漕ぎつけたものであり、かなり苦労しています。

ちなみに、私の使用している白い制振材(制振フェルト6ミリ)は、類似品の単価の半額以下です。黒っぽい繊維で出来ている特殊フェルト5ミリは、類似品より約3割から4割値引きしています。

私は、会社勤め時代から建築業界の防音材の製品開発に不満を持っていました。それは具体的な設計マニュアル・施工要領が確立されていないからです。製品カタログの説明をそのままコピーして使うだけで、現場で効果を検証していない。実績がよくわからない防音材を信頼できなかったのです。
自分の目と耳で確かめてから防音工事に使って検証するまでは、自分の取引先の製品でさえ信じていませんでした・笑。

万能な防音材はありません。必ず使用条件や施工要領があります。


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