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木造防音室と固体音・制振材

今までの投稿記事において、固体伝播音の抑制には制振材が不可欠であることを述べてきました。
特に床と壁を共振させる楽器の木造防音室においては、制振材および構造体の多層構造が相乗効果を出すことを多くの実例の中で体感・計測してきました。

木造建物における固体音の制御は、音楽防音室としての音響調整において重要な役割を持ちます。
例えば、グランドピアノやチェロなどの楽器は床に強いインパクトを与えるため完全遮断することが最適と考えられますが、実はそうではありません。
「適度に音を響かしながらも適度に音を減衰させる環境」が、楽器の音響と防音には最適であることが長年の研究と経験で分かってきました。
それが出来る建物構造が「木造軸組在来工法」の最大の特長です。

この事実を認識するとともに、実現する設計仕様と施工要領を現場経験と各種防音材の試験データを総合的に勘案して適用し構築することが重要です。

制振材の選定と構成

ピアノなど楽器防音室の防音設計において定める制振材は、専門的な防音材と一般建材の中から選定します。
専門的な制振材は、現場を担当する職人が扱いやすい製品を指定する必要があります。一般建材については、彼らは熟知していると思いますので、あとは施工要領だけ指定すれば問題有りません。

基本的に楽器防音室の床対策は、複数の制振材と遮音材を使用します。それはピアノのような幅広い周波数帯の音を発する楽器は、単一の防音材だけでは弱いからです。※主な素材は高密度フェルト、アスファルト基材、樹脂
また、剛性や制振性能を高めるために、合板類などの一般建材を併用します。音響を考慮する場合は軟質シージングボードも活用します。
これらの建材も制振材としての補助機能を持っています。

防音壁・床の相乗効果と多層構造

木造防音室における多層構造は「遮音・制振・吸音」の3つの機能を複合化するように設計します。
防音壁と床が共振すると防音効果は大きく低下するだけでなく、音響が悪化します。特に狭い部屋において顕著となります。

このため、音楽室(防音室)を建物内部のどこに配置するかが重要なため、建物の間取り及び近隣への影響予測が費用対効果にも大きな影響を与えます。不利な配置をすれば、費用が嵩むだけでなく、最適な音響と防音効果を比較的狭い音楽室に実現すること自体が、かなり難しくなります。
*新築計画や大規模リフォーム計画の段階が最も重要であり、私が作成する「防音計画」の難易度を大きく左右します。

防音計画における多層構造の概要は、新築物件においては、出来るだけ早い段階において提案し、新築の建築設計に反映させる、整合させる必要があります。
防音壁・床の相乗効果が出るように構築するのが「多層構造」であると言って良いと思います。費用対効果にも大きく影響します。

以上述べた内容をコンパクトに実現する防音設計によって、他の専門業者と同等の遮音性能を約半分の厚さで対処してきました。
これは制振材等を加えた多層構造によって構築してきました。
*施工要領では、専門的な制振材だけでなく、一般建材の床と壁の共振軽減・絶縁も考慮しています。
これが防音職人の設計仕様および施工要領による特長だと思います。


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