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マンションの天井防音工事

予想通り、昨年秋以降から今年にかけて、マンションの天井防音の相談が増えました。それは、コロナ禍で在宅で仕事をする人、家族の滞在時間が増えたからです。

主な相談は、上階からの足音などの振動騒音、戸境壁などに回り込んでくる生活騒音です。別の投稿でも触れましたが、住宅の防音工事で最も難しいのが天井の防音設計・工事です。

キーワード検索すると、通販業者などの自称専門業者?が上位に出てきますが、これらは20年前には存在すらしていなかった業者です。しかも、実績が何も示されていません。建築士のかたは、実績のない業者に外注されることはないと思いますが、素人のマンションユーザーは騙されて役に立たない工事をしたり、防音製品を購入する事例が沢山あります。

そこで、まずは誠実に仕事をされている「建築士」へのアドバイスを投稿します。施主から最初に相談されるのが担当者である建築士です。

専門業者の見極めのチェックポイント

天井の防音工事にグラスウールやセルロースファイバーを推奨する業者は素人です。それは天井騒音の主成分である250Hz以下の音、とくに100Hz以下の音には殆ど無力であるからです。

天井の防振吊金物は、天井裏の深さが最低20センチ以上ないと防音天井は構築できないので、どの程度天井を下げられるのかをチェックする必要があります。しかも防振吊金物は重量衝撃音には殆ど効果はないです。むしろ、全ネジ金物のほうが役立ちます。

東日本大震災以降、吊金物を固定するインサートの増設は許可されません。それは構造的な保証を求められるからです。なので、従来型の工法は通用しませんので、大半の業者には対処できないはずです。

吸音・防振(絶縁)・遮音の諸機能を構築する設計手法を持たない専門業者にはマンション二重天井の防音対策は無理だと思います。

重量衝撃音の主成分

上階からの足音など重量衝撃音の精密測定をすると分かりますが、主成分は約30Hzから250Hzの周波数帯の音です。

このうち、「ドンドン」という重い音の周波数は約30Hzから63Hzに集中します。主成分は低周波騒音です。日本音響学会の研究者たちは、これに対処できる防音工事はないとまで言います。(実際はあるのですが、難易度が高くコストが嵩みます)

重量衝撃音は天井裏の空気層を共振させて、天井ボードを透過してきます。低い周波数の音は多少の遮音層は透過します。天井の石膏ボード二重張りも意味がないです。むしろ逆効果になることが多いです。

にわか専門業者が手に負えるような分野ではないです。

さて、今年も天井の防音相談が来ていますが、相談者にメカニズムと費用を理解していただくのが大変です。これを無料相談で対応するのは、はっきり申し上げて心が折れます(笑)。東京方面の男性は、詳しく説明すると、みなさん諦めてくれます。女性のように計画的に費用を用意しようとする人は、最近数年間で一人も居ませんでした。要するに女性以外はチャレンジする人は居ません。

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