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薄いコンパクト防音設計の基本

一般住宅や木造防音室の防音設計ができる専門家が少ないと、相談者から言われます。
では、本当に専門家なのかというと、異分野から開業した建築業者が近年増えており、なかなか、一般の人には判別できません。見分けるポイントには主に次のような諸点があります。

「理想的な遮音材、吸音材、制振材をそれぞれ説明できるかどうか」「素材の周波数特性(透過損失など)を理解しているか」「質量則を超えた相乗効果や大幅に遮音低下するコインシンデンスを考慮しているか」この3つの項目が防音設計の常識として重要です。
これらが理解できない設計者には、薄いコンパクトな防音構造は立案できません。※参考:防音設計の常識 | 防音設計の留意点(木造)

制振材の選定や確保が最も難しい

木造防音室や木造住宅の生活防音において重要であるにも関わらず軽視されているのが「制振材」です。
主に床の防振および壁・床の共振回避を目的として使用する防音材の一種です。大半の製品が「遮音ゴム」を使用したものが多く、特定の周波数への同調や劣化の問題を抱えています。

防音職人が専門メーカーおよび取引先の専門家に対して調べたところ、受注生産の防音材としては、「ブチルゴム」「高密度フェルト」「軟質ウレタン」「アスファルト基材」を使用した製品があります。

私の担当する防音室では、費用対効果と耐用年数を考慮して「高密度フェルト」および「アスファルト基材」を主な材料とする防音材を使用しています。

素材の周波数特性への理解力

防音材(遮音材・制振材・吸音材)や一般建材(ALC、石膏ボード、合板など)には、必ず周波数特性が有り、製品ごとの固有の特徴があります。

特に薄い防音構造を設計して構築するには、これらの特性を十分に考慮しなければなりません。
木造のような物理的強度に大きな制約がある建物において、防音材と建材を組合せて相乗効果を出せるように工夫することが、コンパクト防音設計の基本です。

例えば、低音と高音域に弱点がある「石膏ボード」や「グラスウール」ばかりを重ねても弱点は解消されず、いたずらに分厚い構造体となり、部屋を狭くするだけです。

質量則と相乗効果およびコインシデンス

質量則を超えた相乗効果を生み出す防音設計・施工は、実際の現場を精密に測定したり分析しなければ確立することは出来ないです。

ネット上に公開されている机上の理論や簡易的な理論式で解明することは出来ません。理論式には「素材の周波数特性や性質」「コインシデンス」が考慮されておらず、素材の面密度しか想定されていないからです。

私は他の専門業者が理論式のみで設計施工した現場の失敗事例をたくさん見てきましたし、依頼者からセカンドオピニオンとして防音相談もお受けしてきました。そこには具体的な周波数特性やコインシデンスへの配慮が欠落していました。

とくに、防音室の施主や建築士のみなさんは、以上の基本事項を踏まえて専門家を探すことをお勧めします。

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