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防音設計の検証と新しい理論

建築業界の防音設計理論は、私の知る限り、研究者やゼネコンの技術者が集まって作成した「遮音設計マニュアル(建物の遮音と防振)」と「建築学会が策定した建築基準法の遮音基準」が出発点になっていると思います。

現在でも、殆ど改訂されていなく、いまだに吸音材はグラスウール表示だけで解説されています。床衝撃音の遮音レベルについても、LHの対策は軽視されており、大半がLL表示の軽量衝撃音対策の研究が主流です。

では、防音設計理論は、その後まったく修正されていないのかということですが、書籍や学会の報告書レベルでは公開されていないようです。新しい理論としては、少なくとも3つあります。

低周波騒音の遮音対策

通常、普通の吸音材や遮音材だけでは低周波音は減衰できないと見られていますが、最新の研究や私の担当事例では、そうではないです。

約30Hz以上の周波数帯の低周波音であれば、対策は可能です。この事実は、どんなマニュアルにも記載されていないようです。

*ただし、工場騒音や社会問題になっているエコキュート・エネファームなど敷地内に設置した設備から発生する低周波騒音には、20Hz以下の超低周波も含まれていることがあり、音源での対策が必要な場合があります。

環境省や音響学会の研究者だけが、低周波音には「高比重の厚さ10ミリ以上の遮音層を施工するれば減衰効果はある」とレポート(資料)で公開しています。かなり面密度(重量)が必要なので、一般的な住宅においては、先に構造的な補強をすることが前提になります。

私の推奨する設計理論は「多層構造の構築」です。遮音層・制振層・吸音層を構成して対処する工法です。実際に木造住宅とマンションでの実績があります。ですが、まだまだ検証すべき課題が残されています。

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吸音ブースの活用

これは、最近、取引先の建築士が実物大のモデルで精密測定を実施して確かめました。

ボックス型のブース内部を吸音層で構築して、天井を含めた5面のうち1面だけ開放された空間として造ったものです。音のエネルギーがブース内部で吸収されて、出入り口の開口部から一定量減衰されて出ていくシステムです。

主な用途は打合せスペースやテレワーク対応のPC及び電話室です。オフィスや自宅のリビングでの設置が想定されています。

これは、ボックス型の木造音楽室にも応用できるシステムです。利点は、軽量化された構造体で実行できることです。

構造体の剛性と重量音対策

これは主に木造建物における対策です。理論はシンプルです。

建物の床や壁の下地の剛性を強化すると、重量衝撃音など重低音の防音効果が高まるという理論です。この事実は、ほとんどスルーされていて、誰も検証していないようです。

最近の現場では、担当の建築士に私がアドバイスし続けているものですが、費用も余りかからないので、推奨しています。

専門的な防音材を使用しなくても、木造住宅においてD-40を実現できます。

最近の木造住宅の壁の遮音レベルはD-30が標準ですので、ツーランクもアップできると、人間の耳では遮音性能が倍になったように体感できます。

例えば、戸外からの車の重低音が壁などを透過するのを半減できます。

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