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マンション二重天井の防音設計

他の投稿記事で『日本音響学会の分析では、マンションの二重天井は重量衝撃音に対して「共振体」となり騒音が増幅されるので構造的に対処方法はないと言われています。それは、特定の周波数帯に的を絞った対策をしても、これ以外の周波数帯の生活騒音を同時に遮断・減衰させる有効な方法がないと彼らは考えていました。』と記述しました。これは通常の工法では無理という判断は間違っていません。

天井の防振吊金物

既製品の防振吊金物は、上階からの重量衝撃音のうち、低周波を主成分とする衝撃音(重い足音、強いインパクトなど)には殆ど効果がなく、軽量衝撃音の遮断に効果のある製品です。しかも、天井裏の深さが20センチ以上ある現場にしか使えません。

また、2011年の東日本大震災以降、吊金物を増設するためのインサートを既存スラブに追加することは許可されません。構造的な保証を求められるからです。リフォーム型の防音工事では採用できない工法です。一般のマンションには出番はないのです。さらに、音響学会が提案する別仕様は現実の現場では適用できない工法です。それは、特定の周波数帯だけ減衰させる方法だからです。他の周波数の生活騒音の大半が透過してきます。

天井防音の新しい設計仕様・工法

私は20年前にインサートに通常金物を取付けて防音施工ができる工法を開発していましたが、これはインサートの数が足りない現場では、新規で増設するものでしたので、2011年以降は改良しました。

既存インサートを活用するだけでなく、既存スラブに接触点を設けない「遮音・防振・吸音」工法を開発しました。これによって、重量音だけでなく軽量音も減衰させることが可能になりました。ですが、この設計・施工仕様は通常の防音工事よりも費用がかかるだけでなく、特別な施工要領や職人の技能を要するため、私と私の提携先しか対処できないものとなりました。

ちなみに、2010年に私が担当した「福島市内のマンション天井防音構造」は、2011年の強い複数回の地震に耐え無傷でした。耐久性と安全性を兼ね備えた設計仕様が開花した瞬間でした。

マンションの天井防音工事は普通の専門業者には対処できません。また、簡易的なDIY製品では対応できません。ネットで検索すると通販業者の防音製品が出てきますが、大半が無責任な誇大広告です。

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