黎明期の防音設計(木造)
当ブログの他の投稿記事でも触れましたが、日本の防音設計(遮音設計)の原点は、木造における大鋸屑(おがくず)・藁等の植物繊維と土壁です。
ところが、木材や木の繊維の特性を生かした設計仕様は開発されませんでした。建築業界では、その後、グラスウールやロックウール等の化学繊維、他分野の遮音ゴム・遮音シートに特化しながら、石膏ボードを主な遮音材として製品化してきました。
土木業界のアスファルト基材の遮音材の製品化でさえ比較的新しく、設計マニュアルも確立されていないと言えます。
特に木造建築物における防音設計は、まだ黎明期と呼んでも過言ではないと思います。それは原点である木材を軽視してきたからです。
ですが、活用できる製品はすでにいくつか生まれています。ただ活用方法を検証していなかっただけです。
*例えば、合板やシージングボード、ウッドファイバーなど
パクられた吸音材の商品名と防音職人の製品
私が自分のウェブサイトに掲載し始めた吸音材「吸音ウール」という略称(総称)が、ある大手建材メーカーに無断流用され商品登録されました。防音職人は説明をわかりやすくするために独自の製品の名称を付けています。この吸音ウールの正式名称は「PETウール」ですが、用途がイメージできないため「吸音ウール」に変更していました。私の取引先メーカーも私の呼び方を採用して「試験研究所における吸音率計測と化学物質揮発検査」において、この名称で申請しました。(画像のグラフの記載名称を黒塗りで隠していますが、ここに吸音ウールと明記されています。大手メーカーが後発の製品化を行う前のデータです)
このオリジナルデータは、計測当時の担当者が独立したため、この資料を使用するのは私(防音職人)だけになりました。この資料には続きがあり、法定化学物質の揮発濃度等の検査結果が付いています。検査結果では法定化学物質の検出量はゼロでした。極めて安全性の高い製品であることが証明されています。
この他、防音職人が選んだ防音材はすべてF☆☆☆☆基準を大幅にクリアしており、厳しいメーカー各社の基準でチェックされています。すべて受注生産(契約企業向け)であり市販品ではありません。
■特長と概要
・防音職人では吸音ウール50ミリは455×910サイズで1袋あたり10枚入りです。現時点では1袋税込みで9800円です。別途送料がかかります。
*出荷工場は愛知県内ですので、納品先が近い場合は送料を値引きます。
・耐熱性に優れている(熱変形温度:240度、連続耐熱温度:150度)
・燃やしても有害ガスを出さない
・人体に最も安全な吸音素材(チクチクせず、粉じんも飛ばない)
・水をはじき、型崩れしないポリエステル繊維(衣類、スポーツアンダーウェアーなどに使用されている素材)
・吸音性能が他の吸音材に比べて長期間変化しない(防音職人の体験では約25年間劣化しない)
・グラスウールやセルロースファイバーよりも一般的に吸音率が高い
などです。
このように、防音職人では開業前からメーカー各社と個人的取引をして、防音材の選定準備をしていました。当時、パクったメーカーを含めて、市販品には費用対効果の高い防音材は存在せず、施工要領も整備されていませんでした。
私は、かなり苦労して防音材を建築業界以外の先端産業や土木・機械工学関係のメーカーに打診しました。現在、防音職人がホームサイトに掲載している製品は、私が実際に使用して厳選した防音材です。
*防音材ページ(建築現場用)
専門家・専門業者のコンテンツ流用を繰り返す業者
約20年以上前には、住宅・木造建物の防音設計そのものが解説されたコンテンツはウェブ上では公開されていませんでした。このため、素人業者である大手建材メーカーや通販会社、防音室の施工会社、不動産会社などに、防音職人のコンテンツは繰り返し流用されました。
悪質な業者には、ウェブ上で情報を公開し、警告書を当該業者のウェブサイトに送信しました。すでに、ウェブ上から消えた会社もいくつかありますが、厚顔な業者は現在も営業しています。
*私の契約者には内部情報として、盗作業者を明らかにしています。
大半の後発業者や異分野から転業した業者は、防音設計そのものの経験と知識がありません。現在も同じです。
ただ単に、自社の取扱い製品を販売したり、大手防音室メーカーなどの代理店としてメーカーの設計書をそのまま施工しているだけの業者です。
防音設計。施工のプロではありません。
このような業界において、老舗の真っ当な専門会社は少なく、横のつながりや交流もないため、業界としてのレベルアップは数十年間止まったままです。その中で、住宅・木造防音室の防音設計や防音材開発は最も遅れている分野です。
木材の防音効果の検証と製品化
木造住宅に特化して開発された吸音材にウッドファイバーがあります。名前の通り木材の繊維を吸音材として製品化したものです。間伐材や廃材をリサイクルして製品化しています。
また、同様な素材で下地材として製品化されたボードに、シージングボードがあります。防音職人では木造住宅の生活防音や木造防音室・音楽室(ピアノ、金管楽器など)に多用しています。
ただし、他の同業者の類似事例がないので、まだ検証は十分ではありません。取引先の防音設計及び防音材開発が専門のベテラン建築士は、すでに現場仕事を引退しており、私の担当現場以外では、防音工事と建材の効果を確かめることができません。現状では、木材・木製品を多用している専門家は私一人になったようです。
地方の取引先の建築士にも情報を確かめているのですが、私と同業の建築士は居ないようです。なので、木造の防音設計は、防音職人と同様の設計仕様に関して、まだ黎明期と呼んでも良いかもしれません。
私自身も、まだ試したい内容や製品化がありますが、製品価格の問題がクリアできない限り、受注生産の専用ラインを確保することは難しいと思います。
既存の製品を組合せて費用対効果を高める工夫を検証するところまでは、事例を積み重ねて行きたいと考えています。我々に残された時間は多くはないです。
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