見出し画像

木造ピアノ音楽室と防音設計(2023年)

今年の春(2023年)で、防音職人(サポートページ・プランニング・オフィス)が運営するウェブサイトが約20年を迎えます。
*自営業としては19年になります。ウェブサイトは準備期間が約1年ありました。

ピアノなど木造音楽室(防音室)の防音設計は、開業当時にお手本になるような事例が殆どなく、自分の小学校から高校時代の記憶をたどって、木材および音楽室の音響化粧板や穴開きボードなどの特性を調べることから始まりました。
古い木造建築や木造のホールにおける音響・防音(当時は主に吸音)対策の先人の知恵を学びながら、市販品を含めた防音材の製品カタログ及びサンプル材の収集、自宅における実験的な防音材の施工効果など、できる限りの資料や実体験で触れながら確かめました。

また、音響学会や建築学会の資料の重要な部分を抜粋しながら基礎知識を学び、国会図書館で廃刊になった古い書籍などをコピー・閲覧して補足しました。遮音設計マニュアルや建築雑誌を購入して、木造工法や防音設計に活かせる知識を探しました。

異分野の防音材から多くを学んだ

20年前も現在も基本的に、建築分野の市販の防音材は、大半が遮音パネル製品と遮音ゴムマット製品です。振動絶縁や遮音欠損防止、低音域の防音効果について性能的に弱いものが多く、建築以外の業界の防音材メーカーを探しました。

専門的な防音材の大半の工場が中部地域と埼玉県内に集中していることが分かりました。専門メーカーとしては、主に埼玉県・静岡県・愛知県に本社工場があり、その生産拠点から全国各地に直送されているシステムです。
このため、中間経費を省くには、通販サイトや大手商社から注文するのではなく、メーカーと直接取引が必要でした。
私の場合は運良く、運営していたホームページのコンテンツが防音設計メインだったので、高い評価と将来性を期待され、個人的な直販取引をすることが出来ました。
それが、現在の愛知県と静岡県のメーカー工場を統括する会社の製品であり、防音職人の主力製品としての防音材です。長い歴史のある異分野(車産業・土木工学・機械工学など)の製品です。

自分の木造防音室の現場などの音測定や音響など体感チェックを積み重ねながら、防音材に不可欠な要素として「面密度・柔軟性・制振性能・耐久性」と「幅広い透過損失」「コインシデンスなど弱点がないこと」が重要であることを経験しました。
これは木造住宅やピアノ防音室だけでなく、マンションなど住宅を含めた建物に共通して適用できる性質・性能であったのです。

木材など一般建材と防音材の相乗効果

木造ピアノ防音室は、他の投稿記事でも触れたように「木造軸組在来工法」が最も適する建物であり、プロの音楽家のリクエストも多く、経験的に音楽家が好む音響を得られる環境であることを理解しました。
このため、木造の大敵である湿気防止(断熱・防湿および通気・換気)を防音施工と両立させる工法・設計仕様を確立しました。

また、どこの大工職人でも施工できる設計仕様・施工要領を木製品の選定と一緒に開発し、専門的な防音材と相乗効果が得られる「独自の防音設計」を作りました。

プロのピアニストなど音楽家の経験談や好まれる音響の特徴などをヒアリングしてできる限り、自分の音響・防音設計に活かす工夫をしました。
音響と防音の相乗効果を出すには、木材・木製品の選定が不可欠であり、従来の遮音パネルや石膏ボードを多用する手法は、木造音楽室には全く向かないことを明らかにしました。

小さな狭い部屋でもグランドピアノが演奏できる防音設計

狭い木造音楽室でピアノを演奏するために、遮音効果にシフトしないで、音漏れを許容する方法(音響と防音のバランス型)を提案しました。
それは防音性能を強化すると必要以上に部屋が狭くなるだけでなく、音響が悪化するため、「薄型の音響・防音構造」を開発しました。

間取りによって近所へのリスクを軽減しながら、建物内部の家族の生活を考慮した防音性能を確保することをメリハリのある現場ごとの最適解を提示しました。
また、カーペット・ラグや手作り吸音パネル・防振パッキンなどDIY対策を併用する手法を提案してきました。

基本的にピアノ室の床はフローリングの場合は「針葉樹の無垢材」とし、これ以外の広葉樹を使用する場合は、必ずカーペットや防振パッキンを必要に応じて活用するように施主(依頼者)にはアドバイスしています。

古い伝統的工法や事例を防音設計に活かす

最近の若い建築士や他の専門業者は、ネット上の比較的新しい事例や防音材情報ばかりチェックしているようですが、木造音楽室は、古い伝統的な工法・職人技を学ぶべきです。

ちょっとした工夫で、壁と床の共振を回避できたり、使用する木材や木製パネルなどを活用することで快適な音響を確保できます。
特にピアノ演奏には木材の活用を忘れてはいけません。

昔ながらの無垢材の羽目板仕上げや穴開き合板は、私の学生時代の古い音楽室では標準的な仕様でした。その音色は素朴で温かいものであり、ピアノやオルガンにマッチしていました。

私の防音設計の原点は「木造校舎の音楽室」と「大工職人の木材加工技術及び伝統的工法」です。今後も私の設計手法は基本的には変わらないと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?