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防音設計・施工の専門業者

他の投稿でも関連した内容に触れましたが、私の業界(防音設計・工事)においては、約28年前(私が初めて自分で防音設計を行ったとき)には、専門業者は非常に少なく、騒音調査やビル・工場・防音スタジオ・大規模音楽ホールの設計・コンサルティング会社ばかりでした。

現在は、関連業種が増えましたが、大半は防音材など製品の通販業者と異業種から衣替えした業者です。普通の工務店が建築業界の構造的不況や飽和状態によって、事業メニューに「防音工事」を付け加えたものです。

少なくとも住宅や木造音楽室(防音室)の防音設計の理論や実績のない専門業者(専門とは言えないが)です。

東京など首都圏・中部・関西においては、木造の防音設計だけでなくマンションの防音設計が出来る、まともな専門家・業者は、探しても居ませんでした。ただし、大手ゼネコンの設計部や技術研究所にはマンションの防音設計・工法を立案できるセクションがありましたが、現在はあまり活動していないようです。

自分の専門分野を大事にしている専門業者は居るのか

騒音調査とオフィスビル・防音スタジオに関しては、自社の専門分野を大事にしている専門業者が居ます。

ですが、マンションや木造住宅、木造防音室(主に音楽室・ピアノ室)においては、私の目から見たら納得のできる設計理論や実績を持っている防音の専門業者は、現在においても見つかっていません。

それが、緊急事態などの大きな影響で世の中のライフスタイルや需要構造が、ステイホームスタイル・需要による案件が増え、後発の新規参入業者が出てきました。よくみると仕事を仲介・紹介するような、何が専門なのか正体の見えない、非常に怪しいものです。

先日、私の方にいくつか、よくわからない業者から電話営業があり、提携したいという申し出でしたが、即行で断りました。

さて、取引先の建築士(私と知人がウェブサイトを作ってサポートした)も当初は、私と同じ分野の防音設計のコンテンツをなぜ作ってくれなかったのか?と不平を言っていましたが(笑)。現在は騒音調査と防音製品開発業務が忙しくなり、私の設定したテーマが需要にマッチしていたことが証明されました。(※無料で作ってあげたのだから、文句言うなといいたい・・笑)

みな、得意不得意や専門分野があるわけで、無理して欲張っても良い仕事は出来ませんし、依頼者を失望させるリスクがあります。儲け主義に走るような業者は専門家ではないです。私の場合は大好きな「木造音楽室」「木造住宅など木造建物全般」の音響・防音設計及びコンサルティング(相談業務)を大事にしています。→私の主な業務実績プロフィール防音設計の常識

要するに、万能な防音設計・施工のプロは居ないのです。

木造の防音設計に力を入れた理由

当初はマンションの生活防音の設計に力を入れていましたが、もともと木造が好きであることと、次第に木造住宅と木造防音室の依頼が増えていったからです。

そして、実務を通して「比較的薄いコンパクトな防音を設計できる業者が居ない」ことに気づきましたので、10年以上の研究と担当現場での測定を繰り返して設計手法と独自の施工要領を開発しました。

木造は空間的な制約と構造的な耐久性を考慮すると、無駄に分厚い構造は現実的ではなく、地震の多い日本では、防音と構造的補強を兼ね備えた設計理論が必要だと痛感し、独自のコンパクト防音設計を確立しました。

これは分厚いスタジオ防音とは対極にあるものであり、費用対効果と部屋を狭くしない設計・工法が不可欠です。また、音の減衰効果を勘案して間取りやライフスタイル、近隣の状況を考慮してメリハリのある防音設計・工事が要求されるので、難易度としては高くなります。

ですが、木造であれば、それは自然な流れだと思っています。技術や製品は必ず進歩する部分と伝統的に継承する技術とがミックスされて成り立つものだと考えています。これからも、同じ姿勢で取り組んでいきます。あと、何年続けられるか分かりませんが、誠実な依頼者との出会いを期待して継続します。

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