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伝統的工法と木造防音室

最近の若い建築士や防音室のエンジニアは、木造の伝統的工法を軽視する傾向が強く、木材・木製品の特長や効果を体験することなく、新しい製品に飛びつき、検証することなく設計仕様に入れます。
現場の職人の意見を設計仕様に反映させないで、自社の製品や設計・工法を盲目的にトレースするだけです。

これが致命的な欠陥を見落としたり、改善するための柔軟な思考を伴わない安易な施工に直結することが多いです。この業界の防音設計技術が進歩しない主な要因となっています。古き良き工法や事例から学ばない事は、宝の山を掘り起こさないで放置するようなものです。
先人の知恵を経験的に知る現場の職人との乖離を生む原因となります。
*適正な予算と工期を確保できれば、職人はそれなりに細かい造作も苦もなく出来ます。予算をケチるから嫌がるだけなんです。

木造軸組在来工法と音響・防音対策

他の記事でも触れましたが、ピアノ防音室においても、在来工法が弱点となることは絶対に有りません。むしろ、ツーバイ工法の方が共振しやすいので圧倒的に不利になり、費用もかさみます。

防湿・通気構造は、防音構造と区分して対策できますので、在来工法の仕組みは通常通り施工するのが前提となります。
なので、床下空間を潰してモルタルによる湿式防振工法を採用すると、木部が湿気で劣化しやすくなり、音響も悪くなりますので、木造には不適切な工法と言えます。木造建物の寿命と将来のメンテを考慮して施工方法を選択してください。

在来工法の木造防音室は適切な工法と防音構造で構築すれば、部屋も狭くならないし、最適な音響と防音効果を実現できます。
むしろ、在来工法を生かしたほうが費用総額を抑えることが出来ます。
木造建物の音楽室は、新築・リフォームともに木造在来工法が得意な建築業者に依頼したほうが無難です。
*防音設計と専門的な防音材納品だけ外注すれば大丈夫です。

部屋を狭くしないコンパクト防音設計の技術

木造防音室において、出来るだけ部屋を狭くしない工法は重要であり、とくにグランドピアノなど大きな楽器を配置する場合は、分厚い防音構造は費用が嵩むだけでなく、配置の自由度や空間的な価値が下がります。

防音職人では、約18年前から比較的薄い費用対効果の高い防音構造を設計してきました。24時間演奏可能な木造防音室でも「防音壁の厚さは18センチ以内」です。
夜10時までの演奏であれば、防音壁の厚さは約12センチ以下であり、近所との距離がある程度あれば、標準防音壁の厚さはさらに薄く出来ます。ちなみに、D-45からD-50レベルの防音壁の厚さは既存構造によっては45ミリ以下で施工できます。

設計仕様の特長は、無垢の木材や木製品を多用することと、専門的な遮音材・制振材を併用することです。また、天井裏や床下・壁内部の空間を有効活用して無駄な防音構造の厚さを軽減することです。
遮音層は防湿層を兼ねますので、結露も防ぐことが出来ます。

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