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木造防音室と生活防音

今年は、新築の木造防音室と新築木造住宅の相談が増えました。数年前までは中古住宅のリフォームが多かったのですが、最近は傾向が変わりました。

木造防音室はピアノだけでなく多様な楽器の対策を必要とするもので、部屋の面積だけではなく天井高に留意することになります。ヴァイオリンのように弓の長さや依頼者の身長を考慮しないと、演奏できないことになりますので、要注意です。

新築木造住宅の方は、ピアノ教室など音楽防音室を併設する件だけでなく、安心して眠れる寝室を確保するための生活防音のリクエストが増えました。もしかしたら、自宅での生活時間が長くなったことなど需要の変化があるのかもしれないです。

木造軸組在来工法の防音設計業者が少ない

別の投稿でも触れたと思いますが、全国的に木造軸組在来工法の防音設計が出来る専門家・専門業者は少なく、私のような零細な自営業者に毎年のようにコンスタントに依頼が来る状況が一つの証だと思います。

問題は、相談者(依頼者)の「木造は遮音性能が低い」という先入観とリスク回避の仕様をご理解いただけないことです。新築業者が推奨する仕様を鵜呑みにする人が少なくなく、これを説得するところから始めるので、私も相手によっては諦めることがあります。

基本的な知識を新築業者も施主も勉強すべきと思いますが、建築士でも知らないような事項を素人に理解して欲しいと言うのは無理がありますね。

*参照ページ(古いページですが):木造防音の基本

木造軸組在来工法の特長として、将来のリフォームに柔軟に対処できる可変性に富んだ構造であることを留意してください。ツーバイ工法は間取り変更など改造には向かない構造です。*木造の防音対策(在来工法)

木造の防音設計のチェックポイント

木造の新築・リフォームに共通して重要なチェックポイントは「天井・壁・床の断熱材の種類・厚さ・密度」、これが最も重要です。

次に「床の下地合板の種類と厚さ」ですが、必要な剛性を確保するには最低でも厚さ21ミリ以上の構造用合板を推奨します。ピアノ室の場合は厚さ24ミリ以上の構造用合板が望ましいです。

さらに「天井裏と床下の深さ」ですが、この空間によって将来のリフォームなどに制約となりますので、建築計画に余裕があれば、天井高は十分に確保しておくと良いと思います。

これらのことを施主や新築業者に説明すると、私のことを防音設計の専門家?なのかという疑念を持つこともあるようです(笑)。たぶん、私の設計理論や理想像が理解されないのだと思います。

専門的な防音設計は、上記のような仕様を満足しているかどうかで費用対効果が変わってきます。砂上の楼閣にどんな立派な防音構造を構築しても、効果がないだけでなく機能が崩れてしまいます。

質量則にシフトした原始的な防音仕様は、30年以上前の古い設計です。木造建物の基本構造や基本仕様を備えていないと費用対効果の高い防音構造は造れません。無駄に分厚い金太郎飴のような木造防音室はナンセンスです。

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