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ピアノ防音室の設計・施工方針(木造)

東京に限らず、世の中には多くの専門家・業者が存在しており、音響・防音設計の手法も様々だと思います。

木造建物のピアノ防音室など音楽室の計画・設計にしぼると、大別できます。金太郎飴のような「分厚い防音構造を一律に施工する業者」、私のように「現場の環境や建物構造に応じてフレキシブルに防音設計する業者」。

どちらの手法が相応しいかを決めるのは、依頼者である音楽家(施主)・楽器奏者(ピアニストなど)です。私は、あくまで計画書や提案書を提示するだけです。

予算の制約もありますので、私の場合は施主様のDIYを含めて計画します。ご家族の健康状態(アレルギー・アトピー・気管支系疾患など)も考慮して使用する建材と工法(接着剤の有無など)を決めます。

スタインウェイのピアノ防音室の想い出

初めてスタインウェイの木造ピアノ室の防音設計を依頼された施主の家族(ピアノを演奏する娘さん)が、アトピーで気管支が弱いということで、使用する防音材や建築材に大きな制約がありました。

このため、使用する吸音材(吸音ウール)と遮音材(樹脂のマット)をご家族に触っていただき、数日間ほどサンプル材を預けました。その後、問題ないことが分かり、私の提案書が採用されました。

他の専門業者はグラスウールとセルロースファイバー、鉛遮音パネルを使用する提案だったので、すべて却下されました。それに、私の防音構造の厚さは約110ミリでしたが、他の業者の提案では約220ミリから250ミリだったので、これが決め手でした。

この防音室は、完成後にピアノの爆音が響く中でも、戸外には音は漏れずに、壁に耳をあてると、ピアノ音が響いているのが分かる程度まで抑えることが出来ました。

使用する防音材と設計仕様の最適化

施主や建物(近隣環境を含む)の状況に応じて瞬時に質問に答えたり、設計方針を即答できるように、頭の中に資材の詳細と工法の納まりや防音材の効果をストックする必要があります。

依頼者に理解していただく前に、自分が納得できる防音計画や工法を提示できるかどうか、これがプロとしての基本だと思っています。

マニアックな提案は不要です。普通の建築士や職人を上回る木材・木造の知識、施工方法を頭の中で描けるか。伝統的な木造建築など先人の知恵に学ぶ柔軟性や経験のストックも必要です。

木造に最適な内容を計画することが私の基本スタンスです。建築士や職人が私の提案をレアケースとして捉えたなら、それは彼らの経験不足を露呈するものです。なぜなら、私の設計仕様・工法は、先人の経験や知識を生かしたものであり、最先端の防音材知識ばかりではないからです。

木造ピアノ室の設計施工方針

他の投稿記事でも触れましたが、「木造ピアノ室全体で鳴り響きながら、戸外への音漏れを最小限に抑える」仕様が私の理想です。

木材をフル活用しながら、相性の良い専門的な防音材を使用します。

詳細な施工要領を現場担当の建築士と職人に渡します。

間取りと周辺の環境に応じて、音源からの距離減衰や遮音・吸音する既存空間を活かしながら、費用対効果の高い防音設計を実践しています。

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