見出し画像

木造住宅の遮音性能を左右する断熱材

新築木造住宅の防音相談で多いのが、壁の遮音性能の改善対策です。設計マニュアルにもハウスメーカーのパンフにも断熱材の弱点について説明がないので、建築士でも間違えるのですが。

断熱材は「高気密=高い吸音性・遮音性」ということにはなりません。その典型例が高気密住宅に使用されている発泡断熱材ですが、吸音性能がグラスウールやロックウールに比べてかなり低いです。このため、出来上がった木造住宅は近所の人の声や車の音がかなり聴こえます。

むしろ、普通のグラスウールを使用している住宅のほうが、ツーランク(約10dB)程度、発泡断熱材を使用している高気密住宅よりも遮音性能が高くなります。

画像1

発泡断熱材の周波数特性

硬質発泡断熱材(スチレンフォーム・ウレタンフォームなど)は、約2000Hz付近を境目にして、低い周波数帯も高い周波数帯も吸音率が低くなります。

人の声の周波数帯でよく聴こえる約200Hzから1000Hzあたりの吸音率が非常に低いため、近所の話し声まで聴こえます。ある相談事例では、「近所の人の悪口を家の中で話していたら、聞こえたようで、人間関係が壊れた」という報告をいただきました。

また、小型犬の鳴き声が筒抜けで聴こえるという事例もありました。すべて使用されている断熱材は「発泡材」でした。

最近の防音設計マニュアルに記載がない

近年、出版されている住宅の遮音設計に関する書籍には、発泡断熱材に関する留意事項が記載されていないようです。

古い遮音設計マニュアルには「発泡材を壁内に使用すると逆効果になる」という記述がありましたが、いつの間にか、この重要事項が継承されないで消えてしまったのです。

製品カタログの説明を鵜呑みにして、高気密イコール遮音性が高いと誤解している建築士や施主が多くなっています。もちろん、石膏ボードや防音材のつなぎ目を密封して音漏れのリスクを無くすことは、気密性が高いことにもつながるのですが、断熱工法とは別の話です。

最近は、断熱性能の高いグラスウールやロックウール製品が開発され、最適な工法も確立されてきていますので、新築住宅を計画されている建築士や施主の方は、施工業者とよく相談して検討してください。

寒冷地では発泡材とグラスウールを併用する工法もあるようですから、十分な壁厚を確保できる場合は、対処できると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?