防音相談と木造ピアノ室
今年(2022年)も、新築業者と施主(依頼者)の考え方が大きく食い違って契約後にもめたあげく、防音職人に相談された事例が多かったようです。
その典型的な事例を過去の投稿から引用して、合わせて分析します。
次のコメントは契約者であるピアニスト(プロ)からいただいた文章です。
「新築の計画段階で、色々な専門業者に見積りや提案を依頼しましたが、どこの業者も天井や床・壁が驚くほど分厚くなる設計で、とても受け入れることができませんでした。それに遮音性能はD-50ということで、夜遅くのピアノ演奏は無理でした。しかも、床をコンクリートで造るなんて、木造の新築なのに意味が分かりません。(床下換気をつぶすと建物の寿命が短くなることを、あとで防音職人さんや大工さんにお聞きして、驚きました。)そこで、地元に専門業者が居ないのかと探しましたら、私の出身の国立音大の付属小学校・中学・高校の近所に「防音職人」さんが営業されているのを見つけました。
そして、木造の長所を生かした薄型防音の提案に目から鱗のような感じで、詳細をご説明いただき、ヴァイオリンが得意な主人と一緒に納得して契約した次第です。石膏ボードを使わない構造や今まで提案されたことのない防音材を含めて、他の専門業者とは全く違う設計内容に驚きました。
完成後の防音効果には、正直ここまで音漏れがないということで、期待以上の出来栄えになり非常に嬉しいです。今まで音漏れにビクビクしていたのですが、これからは何も心配しないで夜遅くというか、24時間ピアノ演奏ができる喜びでいっぱいです。」
木造の長所を活かそうとしない新築業者と専門業者
最近のハウスメーカーは、木造の伝統的工法や従来型の木材軸組の劣化を防ぐ換気や通気を軽視する傾向があり、防音室の専門業者が床下換気を潰すことに安易に同意するようです。
このため、床下空間をコンクリートで埋めるような工法や軽鉄軸組工法をピアノ室に適用することもあります。これでは木造の長所である音響や湿気防止などの機能が損なわれます。
また、木材軸組部分を軽鉄の二重壁で被せてしまい、分厚い過重量な構造を構築して木造部分に負担を掛けています。
このような構造は木造ピアノ室には向かないので、音響や木造部分の寿命に悪影響を与えます。
防音職人の設計仕様とは全く異なる内容です。しかも、防音構造が分厚くなりピアノ室が狭くなります。
石膏ボードを多用して軽鉄軸組を使用する業者は要注意
石膏ボードは最も一般的な不燃材・遮音材ですが、硬質遮音材の宿命であるコインシデンスによる遮音低下が複数の周波数帯で起きます。
これに遮音パネルやグラスウールによる二重壁構造を重ねても、無駄に分厚い過重量な構造になるだけでなく、音響が悪くなります。費用対効果の低い防音対策になります。
一般的に防音専門業者は木造の長所を理解していないことが多く、硬質遮音材を多用する傾向があります。弱点のある防音製品を重ねる設計手法は木造建物の利点を活かさないので、音響・防音の相乗効果が出ません。
しかも、木製品に遮音・制振・吸音機能を有するものがあることを知りませんので、木材・木製品と防音材の相乗効果理解していないのです。伝統的な木造工法を活かすという視点が欠如しています。
また、広葉樹と針葉樹の木材の特性を理解したり、効果的に活用する手法を軽視しているので、ピアノ室に平気で硬質な広葉樹合板やフローリングを使用します。
木造ピアノ防音室の専門業者
木造ピアノ室の専門業者を探す場合は、まず木造の利点や木製品の活用方法について質問することをお勧めします。
そして、「コインシデンス」や「木材と防音材の相乗効果」に関する考え方を確認して下さい。説明できなければ、その業者は木造防音室の専門家ではありません。
また、グラスウールを多用する専門業者は要注意です。吸音効果が大幅に低下します。
遮音パネルなど硬質遮音材を使用する場合はリスクがあることをご留意意ください。
床下換気や壁内などの通気を遮断するような防音工事は、木造ではやってはいけない危険な施工です。建物の寿命が短くなります。