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マンションの主な防音課題

防音設計は、「遮音」「制振(防振・絶縁)」「吸音」の3つの機能を複合化することによって構築する技術であることを約25年前に学びました。そして、防音対策の主な課題は、マンションにおいて直面することが多いです。

マンション騒音対策の課題


マンションの主な防音課題は二重天井・二重床、GL(胴縁2重壁含む)壁の騒音対策であるという点は、26年前から現在(2021年3月現在)に至るまで変わっていません。
防音設計・施工の難しさは、大半がマンションの課題の中に含まれています。現実的な費用と工法でいかにして問題を解決するのか、音の特性を踏まえた複合的な課題と向き合うことが要求されます。

マンションの騒音対策で最も難しいのが二重天井です。天井裏の空気層がバネとして主に低音を増幅してしまうという難題があります。その主成分は低周波音および250Hz以下の音であり、30~100Hzの帯域は子供などが走る音、重いものを床に落とす音などに相当し、近年のマンションにおいても同様です。
これは二重床の部分で問題を解決する仕様を確立すればかなり音が小さくなりますが、業界は重量衝撃音対策には消極的です。

GL工法の問題は人の声や重量音に相当する周波数帯の音を余計に伝えやすくするというマイナス面があり、これに代わる工法は二重天井以上に重要な課題であると考えられます。ここでは業界がこの工法を続ける理由について省略しますが、これは昭和の時代のマンションから現在まで同様な遮音上の欠点を抱えるものです。(各論の課題や対策施工については別稿で述べる予定です)

二重天井の重量衝撃音の騒音

日本音響学会の分析では、マンションの二重天井は重量衝撃音に対して「共振体」となり騒音が増幅されるので構造的に対処方法はないと言われています。それは、特定の周波数帯に的を絞った対策をしても、これ以外の周波数帯の生活騒音を同時に遮断・減衰させる有効な方法がないと彼らは考えていました。

上記で述べたように、低周波音を主成分とする重量音が最も共振するのは、概ね63Hz付近です。天井裏の深さによって、これは前後します。10センチから20センチ程度の深さの天井裏に何も対策しなければ、低い周波数の騒音が増幅されることを避けることができないという事実は、私の担当した現場で検証済みです。

東京には多くの専門業者が集まっていますが、マンション二重天井の防音設計が出来る専門家は殆ど居ません。現役のエンジニアに限定すると、私を含めて10人足らずです。実際に防音工事を担当できる建築会社は、大手のゼネコンを含めても非常に少なく、施工会社を探すのに苦労します。

*知人のベテラン建築士(遮音設計の建築学会小委員会など研究会で活動中)による報告とネット上の検索、私の26年間の専門家との付き合いの中で調べた結果です。(※私が担当した対策事例については別稿でご紹介する予定です)

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