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メガシンセシス・ケンブンロク pt6・FMエディット III

令和に生まれた、ガジェット岡。
金星人もビックリなスペースシンセサイザー、メガシンセシスに関するお話。



ちなみに毎度のことながらFM合成に関しての説明は完全に意訳です。
間違っている部分も多々ある可能性があるので詳細を知りたい方はWebで!


と言うワケで今回はFMエディットの続編です。
前回はアルゴリズムとフィードバックに関してでしたが、今回はオペレータの主要パラメータについて。

FMエディット中は各オペレータが信号がアルゴリズムに沿って流れて
最終的にサウンドとして出力されます。

FMエディット中は各オペレータが信号がアルゴリズムに沿って流れて最終的にサウンドとして出力されます。
メガシンセシスのベースとなっているYM2612はポーと言う音の正弦波がオペレータごとに出力され、それらを重ねる事によってサウンドを作っていきます。
この音を重ねる事を周波数の変調(Frequency Modulation)と呼びます。
そうです、FMとはこのFrequency Modulationの略なんですね。
前回の説明でハリセンで叩く人、叩かれる人、叩かれたフリをする人、アルゴリズムによって役割が変わったオペレータ同士が最終的に「ホゲェ」って声を出すと言う部分、この”叩く”という行為が周波数変調と言うワケです。

各オペレータではハリセンをどういう風に叩くか、つまり「ポー」と言う音をどんな感じで出すかと言うのを設定して行くことになります。
全てのオペレータでは同じ設定が行われ、アルゴリズムによる信号の流れによって出て来る「ホゲェ」が変わるワケです。
ただしオペレータ1だけは自分で自分を叩くこと(フィードバック)が出来るド変態なので、設定によってはサウンドが著しく変化させる事も出来ます。

オーバーレイシートではメガドライブ1の電源LED周りの様な、またはメガドライブ2のカセットスロットの蓋の色の様な赤紫色に囲まれている部分がオペレータ毎に設定が行われる部分を指します。
またそれ以外の部分は音色共通の設定・機能となります。

各オペレータは基本的にサウンドの時間的変化の設定を行い、次のオペレータにバトンタッチする形になります。
と言うのも一般的なシンセサイザー(減産合成方式/サブトラクティブ)ではノコギリ波や矩形波等の倍音を多く含んだオシレータ波形からフィルターによって周波数を削り取り、エンベロープ(ADSR等)によって任意の時間軸で音の鳴り方を調整し、最終的な音を作り出していきます。
つまりこの方式のシンセサイザーはオシレータ→フィルター→エンベロープの順番で信号が流れて行きます。

一方でFM合成方式ではオシレータの代わりにオペレータがこれらを担います。
これらと言うのは、オペレータにはオシレータの代わりとなる部分(正弦波ジェネレータ)とエンベロープが内包されている状態となります。
基本はポーと言う正弦波を、音の高さだとか大きさ、音量の時間変化等を決定し、次のオペレータにバトンタッチして行く形になります。
FM合成とはつまりハリセンで隣の人(オペレータ)をどんな強さで、どんな角度で叩くかを調整するだけの簡単なお仕事ってワケです。(いやそんな事はない。決して。)
ちなみに最近のFM音源機種によってはフィルターが搭載(多分、サウンド合成後に変化させられるタイプだと思います)されているものもありますし、メガシンセシスにはFXの中にフィルター(ローパス or ハイパス)を搭載しているので、これらを選べば出力サウンドに対してフィルターをかけてサウンドを変化させるなんてことも可能です。

前置きが長くなりましたが早速オペレータ毎の設定を見て行きましょう。
左からFeedback、Attack Rate、Decay Rate、Sustain Level、Sustain Rate、Release Rate、Level(Totak Level)、Multiplier、Detuneとなっています。

通常のシンセサイザーにもアタックタイム、ディケイタイム、サスティンレベル、リリースタイムと言ったようなエンベロープでサウンドの時間軸に沿った音量変化を作り出す事が出来ますが、そっちと違う部分はTimeではなくRateとなっている部分。
なので見た目とか名前はよく似ていますが動作が全然違ったりします。
例えばAttackに関してですが、アタック・タイムの場合、数値が最も小さい(ノブが左一杯)だと音が速く立ち上がり、右に回すにつれて音の立ち上がりがゆっくりになって行きます。

一方でアタック・レートの場合、数値の大きさが「音が立ち上がる速度」を示す為、大きければ大きいほど速度が速い=音が速く立ち上がると言う概念になります。
その為、メガシンセシスでは数値が最も小さい(ノブが左一杯)だと音は非常にゆっくりと立ち上がり、右一杯だと音が最も早く立ち上がります。

Plogue社のchipsynth MDやTwisted Electrons社MEGAfm等は一般的なシンセサイザーの動作に合わせているので、これらは最小値(ノブであったりフェーダーであったり)で最も音が速く立ち上がり、数値が上がるにつれて音の立ちあがりが緩やかになって行きます。
一方でInphonik社RYM2612は(おそらく)YM2612を忠実に再現している為、アタック・レートは数値が高ければ高いほど音の立ち上がりが速くなっています。
メガシンセシスも同様のパラメータ変化となっています。
なので通常のシンセサイザーの様にAttackを0にしてしまうと音が鳴らない(キーを押し続けないと鳴りださない)なんて事になったり・・・
そんな感じで幾つかセオリーと違う数値部分はありますが、慣れてしまえばそこまで難しくはありません。
ではパラメータを細かく見て行きましょう。

Tips:FMエディットを行う時はLatchモードはOFFにしておくとオペレータを切り替えてパラメータを設定する場合に便利です。
一方、既に1度エディットを行ったサウンドを再編集する場合はLatchモードをONにしておくと現在のパラメータをチェックできるのでサウンドが不用意に変わらずに済みます。
LatchモードのON/OFFは通常モードで行えるのでFMエディットに入る前にチェックしておくと良いでしょう。


1-4・・・前回に書いた通り編集するオペレータ番号の選択ボタンです。
選択中の物が赤色、非選択の物が緑色、funcボタン+番号でそのオペレータをミュート(オレンジ色)にする事が出来ます。


FEEDBACK・・・オペレータ1のフィードバック値を設定します。
値は0~127で、数位が大きくなれば大きくなるほどサウンドがノイジーになって行きます。

Tips:FEEDBACKはオペレータ1にのみ許されるスペシャルな項目。
これが自分で自分を叩く事が出来るパラメータですね。
創り出すサウンドがノイズ混じりになりやすい場合はFEEDBACK値を下げ、更に各オペレータのLevelを小さめ(とりあえず100以下)にしてみましょう。
大体普通の音に変化してくれます。

ATTACK RATE・・・前述のとおり、音の立ち上がり速度を設定します。
値は0~31までで数値が大きくなればなるほど立ち上がり速度は速くなります。

DECAY RATE・・・ノートオン(キーを押している間)中にSustain Levelまで到達する速度の設定。
値は0~31までで数値が大きくなればなるほどSustain Levelに到達する速度は速くなります。
尚、Sustain Levelは後述のLevel(TL)の設定値を維持する音量となります。

SUSTAIN LEVEL・・・ノートオン(キーを押している間)中にLevel(TL)で設定した音量を維持する値の設定です。
値は0~127で数値が大きいほど音量(Level)が大きくなる他、すぐ隣のSustain Rateが0に設定されている場合はノートオンの間、サウンドが持続されます。

SUSTAIN RATE・・・ノートオン(キーを押している間)中にSustain Levelが0(最小)になるまでの速度。
値は0~31までで数値が大きくなればなるほどSustain Levelが最小になるまでの速度が速くなります。
これを0に設定している場合はノートオンをしている限りサウンドが持続しますが1以上に設定するとノートオンをしていても徐々にサウンドが小さくなっていきます。

RELEASE RATE・・・ノートオフ(キーが離された時)後に音量が0になるまでの速度。
値は0~31までで数値が大きくなればなるほど音量が最小になるまでの速度が速くなります。

LEVEL・・・オペレータの最大音量レベルを設定します。
値は0~127で0の時、オペレータは無音になります。
メガシンセシスではLevelですがYM2612を模したソフトやハードではTotal Levele(TL)と表示される場合が多い印象です。

Tips:このパラメータは非常に繊細で、数値が1の差でもサウンドががらりと変わる事もあります。
FM音源でのサウンド作りに音がノイズの様になってしまう場合はこの数値が大きすぎる時が多い感じです。

MULTIPLIER/FREQ・・・オペレータの周波数を設定します。
簡単に言うとそのオペレータの音程(1.00が標準音程)を設定します。
通常はMULTIPLIERの値となりますがオペレータをFixedモード(スペシャルモードやCH3モードと呼ばれる場合もあります)の時にはFREQ値となります。
値はMULTIPLIERの場合0.5(1オクターブ下)~15(表示は15.00)、FREQの場合は1Hz~9755Hzまで(76.5Hzきざみ)。

DETUNE・・・選択しているオペレータのデチューンを設定します。
オペレータの音程を微細に変化させることによりデチューンの効果をもたらす・・・らしいです。
ただ非常に微細なパラメータなのか、これを変更してもサウンドに大きな変化を感じ取る事は、個人的には出来ませんでした。
音色づくりによってはこのパラメータが本領発揮をする事もあるのかも知れませんね。
値は‐3~+3までで0だとデチューン効果は無しとなります。


と言う感じのオペレータ固有の主要パラメータとなりますが、DTMStationさんのメガシンセシス紹介記事にある古代祐三氏のインタビュー項目にも記載されている通りメガシンセシスでは幾つかのパラメータがYM2612と比べて高解像度になっていたり、値が反転していたりするそうで実機で作った音色データ等をそのまま流用する場合に苦労するそうです。
例えばFEEDBACKは実機では0~7の8段階であったのに対しメガシンセシスでは0~127の128段階となってたり、Sustain Levelが0~15が0~127と高解像度に、またパラメータの最小値と最大値の概念が逆になっているものもあるそうで、音色データを基に再現する場合に一苦労あるそうです。
こちらに関してはSONICWARE さんの方で将来的に変換表をリリース予定との事なので気長に待ちましょう。


てな感じで今回も長くなってしまったのでここまで。
上段側にあるパラメータと下段右側のオペレータ固有の設定キーに関しては次回予定って事で・・・

いかにもメガドライブな感じのサウンドが美しいですね。
名作ゲイングランドのエンディングより時空の扉です。
メガドライブのFM音源(厳密にはメガドライブを模した音源)ってこんなきれいな音が出るんですよ。


メガシンセシスには現在、第二次生産分(3月以降に出荷予定)の予約が始まっていますので超気になるって人はMEGA SYNTHESIS製品ページ(こちらのページから予約ページへとジャンプできます)にとりあえずレッツゴーです。
またページ上部の[オンラインマニュアル]からMEGA SYNTHES日本語マニュアルやPCMリスト等、各種マニュアルをダウンロードする事が出来ますので併せてチェックしてみてください。

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