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ショートショート「燃える免許の思い出」

あれは10年前
燃える免許、と言うものを取得しに
門真燃焼免許試験場に向かっていた

燃える免許とはどう言ったものなのか
当時はネットに転がっている情報を
見つけるのが難しく
取得するととても楽しいことになる
と言ったことしか分からなかった

燃える免許試験当日
そこには、暑苦しい猛者たちがひしめき合っていた
燃えるってそう言うことか
と少しガッカリしたのを今でも鮮明に覚えている

そんな中、一人、冷めた男が居た
仮にNとしよう
Nはわたしがため息をついていると
そばに立ち、語りかけてきた

「自分、燃える免許とりにきたん?
 僕もやねん。
 いやぁどんなもんか知らんときたから
 こんなに暑苦しい猛者たちが
 ひしめき合っててるとはおもわんかったわ。
 ははは」

どうやらNも燃える免許が
どういったものか知らないらしい

「で、じぶん、実際燃える免許が
 どう言うもんか知ってる?」

正直にその正体を確かめるために
この試験場に来たことを話した

「なんや!じぶんもかいな!ほな、試験内容は?」

知るはずもない

「役に立たんなぁ、じぶん」

棚にあげるなぁ、自分のこと、とその時は思った

「まぁ、試験内容みたら、
 どんなもんかわかるか。
 ほな、またあとで!」

そう言うとNは違う試験会場へ向かった

その後、今までで一番燃えたことを
原稿用紙に書けるだけ書く
と言う、訳の分からない問題が出され、8時間缶詰。なんとか時間内に捻り出し
結果発表の時を待っていた。

「じぶん、どうやった?」

とりあえず、一番燃えたプロレスの試合を
書いたことを話した

「ええやん!僕は何にも浮かばんかったわ!」

そして、結果発表
どうやら合格らしい
燃える免許を手渡される

燃えたよ
そう一言書かれた免許は今でも手元で光っている


※この作品は朗読企画に出演した際に、休憩時間にお客様にお題をいただいて書き、その場で発表した作品です。

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