宝くじ実家
「ただいま」
宝くじは実家に帰っていた。
「お帰り。なんだいしけたツラして」
「またハズレくじだったから……」
「バカだねぇ、ハズレるくじの方が多いんだよ、あたし達は」
「でも……一回くらいは当たりくじでチヤホヤされたいよ」
「何言ってんだい。あたしと父さんはハズれたから出会えたんだよ?
あんたもハズれたからってウジウジしてるんじゃないよ」
「そうだけど、当たって換金されてみたいって思ってもいいじゃないか」
「滅多なこと言うんじゃないよ!ほら、お隣さんのお孫さん……」
「あ、そうだった。生まれたばかりなのに5等の300円で……」
「あたしらの当選原因一位とは言え、悲しいわね……」
「お祝いでジャンボに出したからとは言え、やり切れないね」
当選した宝くじは、換金され実家に帰ることは出来ない。
「あんたの宝くじとして換金されたい気持ちはよく分かるよ。
でも、帰ってきてほしい親の気持ちも忘れないでおくれ」
「母さん……」
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