百日紅軒

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小説を読むことと書くことと映画を見ることが好き。 本の感想まとめページの発信をメインにしたブログを始めました。 https://sarunoki.com/

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最近の記事

友人とそれ以前の境界

友人のひとりに対して、LINEの返事を明らかに少なくしたり、こちらから送ることがなくなったり、何気ない話題で声をかけることがなくなっている。 不義理をしているという自覚があり、時々思い出しては悪いことをしているだろうかと思ったりもする。 けれどその度に、すでに自分がされた不義理を思い出し、関係の修復に勤める気力が削がれてゆく。 何かをしてあげたいだとか、これを教えてあげたいだとか、この話を聞いてほしいだとか、そういうことを思わなくなって数ヶ月。 最初に記した『友人』という単語

    • 昔のこと。2

      わたしの住んでいる部屋は社員寮の一室だった。社員寮、といっても自分の務めている会社ではない。父が経営している会社の社員寮だ。6階建てでワンフロアあたり4部屋程度のワンルームマンション。最上階は父と父の家族が住んでいる。 わたしは父の娘だけれどそのときの父にはわたしの母とは別の奥さんと、わたしとは別の娘たちがいた。 わたしは高校卒業と共に上京したくて、東京に行きたいと父に相談したところ、社員寮が空いてるから住んで良いよと言われそこに住んでいたのだ。当時なんでそんな微妙なとこ

      • 昔のこと。

        隣の部屋で誰か倒れた。 ワンルームマンションの一室で、夜中二時過ぎに聞いた音を不振に思っていた。ワンルームマンションのため、隣の部屋はわたしの住んでいる居住スペースではない。気にはなるけれど、おいそれと見に行けるような環境ではないのだ。なによりも音の正体がよくわからなくてこわかった。 玄関扉の覗き穴からそっと外を覗く。なにもない。真夜中だというのに煌々と照っている照明が狭い廊下を照らしていて、隣の部屋の扉も閉まっているのがみえた。しばらく見ていたけれど、扉が開くことはなか

        • 大切にするもの、乗り越えるもの。

          ガラスの城壁 (文春文庫) 神永学さんの本を読むのは実ははじめてだ。気になりつつもシリーズものはなんとなく手を出せず、機会を逃していた。 今回、たまたま本屋でタイミング良く読み切り作品に出会えたので、ここぞとばかりに購入、寝る前の読書時間に読み進め3日ほどで読了。 文章が読みやすく水のようにするすると入ってくる。ガラスの城壁、というタイトルはこの作品だけのタイトルではあるが、著者の文章の透明感を表しているようでしみじみとこの本自体の完成度に舌を巻いた。 メインとなる登

        友人とそれ以前の境界

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        • あとでよむ
          3本

        記事

          もしかしてもしかするとKindle Unlimited ってものすごくおとくなのでは……?(小説以外の本を1日1冊読むようになった軒の気づき)

          もしかしてもしかするとKindle Unlimited ってものすごくおとくなのでは……?(小説以外の本を1日1冊読むようになった軒の気づき)

          小説を読みたい

          小説とは別の媒体に数ヶ月触れていたのであまり本を読めていなかったのですがそろそろ本を読みたいと思いぱらぱらとページをめくる。本を読むのには体力とはまた違った力が必要だ。想像力、集中力、読解力、とか、そういうふうに呼ばれるもの。そういうふうに呼ばれているけれど特別高尚なものでもない気がしている。本を読んでいるとつく力なので、才能とはあまり関係ない、と、少なくとも私はそう思う。 とはいえ本を読んでいないとそういった力があちこちがたがたに弱っていると感じるのも事実で、弱っていると

          小説を読みたい

          2020年5月に読んだ本の感想

          月初に更新しようと思っていたのに、すっかり遅くなってしまった。5月に読んだ本をまとめました。今回も知らない作者を、と思ったのですが、新しい出会いに少し疲れたので、よく知っている作者の本と前評判を調べて買った本を半分ほど。 あなたが消えた夜に 光待つ場所へ UFO大通り チャイルド44上巻下巻 なにもかも憂鬱な夜に あなたが消えた夜に。一見するとバラバラに見えるパーツが少しずつくみあがってゆくのが感覚として感じ取れるので面白い。伏線が絶妙。まったく気づけないほどの隠し方でも

          2020年5月に読んだ本の感想

          『誰か』いませんか

          すきなものに沈んで、思考の底をごろごろと転がっている時間がしあわせだ。 そこに『誰か』はいらなくて、本や映画や美しい風景や音があればそれでよくて、けれど『誰か』が作り出したものであったり『誰か』が守ったものは必要だった。 思考の底に潜るにはひとりでいる必要があって。幸いなことにそれをさみしいと思う器官はわたしの身体に存在しない。けれど誰もいなくなってしまえと望めないのは今触れているなにもかもに『誰か』の存在を感じているからなのだろう。 きっと、それぐらいの距離と温度でちょ

          『誰か』いませんか

          千種創一【千夜曳獏】を読んでいます

          まだ途中ですが、著者の前作【砂丘律】と同じく心のやわらかな部分にもかたくなった部分にもよく刺さります。 一首一首読み進めその度に揺さぶられるこの感情を言葉にして出力できるほどの力が私にはまだないので読んで体験していただくことしかできないのですが、眠る前にその日に読んだ一行の中にあるフレーズが映像として頭の中によみがえるような、そういう作品の数々です。 本の中に「これ走馬灯に出るよ」という出だしの作品があって、ちょうどそんな感じです。眠る前、夢に落ちる直前の疑似走馬灯のような

          千種創一【千夜曳獏】を読んでいます

          固有名詞を覚えること

          料理の名前とか、道具の名前とか、地名とか。そういうものを覚えるのがとにかく苦手だ。当然、その中には人の名前も入っている。えーっとあの、こんな色でこんな形でこういうやつ。特徴はわかっているし書いてある名前を見ると頭の中に残った特徴と結びつけることは可能だ。けれど頭の中にその特徴を持った個体についている名前を置いておくことがとにかく難しい。 不便は特になかった。インターネットはどこでも繋がるし、スマホやPCでブラウザを立ち上げて特徴を打ち込めば該当する商品が出てくるから買い物に

          固有名詞を覚えること

          2020年4月に読んだ本の感想

          本屋さんでびびっときた文庫小説をとりあえず買ってみよう、そろそろ半年となりました。元々は去年の年末、休みの間に読書したいけど新しい刺激が欲しいなと思って始めたことなので、我ながらよく飽きずに続いているなぁと感心してます。飽きっぽいことと出不精なところが性格の半分以上を占めているので。最近は書店が休業だったり営業時間短縮で1ヶ月ほど行ってないので、今月中には1度出向きたいところです。ちなみに一度読んだ作家さんで別の本が読みたいときは電子で買うということも決めているので、引き続き

          2020年4月に読んだ本の感想

          ハローグッバイ

          天まで届きそうなほどのプライドと、こうであるべきという思い込みが強すぎて、ものすごく生きにくい。自分の悪いところなんてわかっているよ。何年の付き合いだと思っているんだ。物事がうまくいかないのもイライラするのもなにもかも、生きにくいと思うすべては自分の悪いところが原因だとわかっている。といっても、原因を認められるようになったのは最近になってようやくだ。なんなら今年に入ってからだ。それまではプライドが高いことも思い込みが激しいことも自分には無縁と思っていた。いや、指摘された過去を

          ハローグッバイ

          著者:鈴木祐【最高の体調】を読んだまとめ

          小説以外の本は取扱説明書の類いですら滅多に読まないのですが、最近はこういう指南書のようなものもたまに読むようになりました。隙間時間に読めて知識が広がって創作のネタにもなって一石四鳥ぐらいしています。ありがたい。せっかくなので個人的に印象に残ったところをまとめようと思います。 意思の力で肥満に立ち向かうのは無駄食欲や食事に関わる器官が発達したのはおよそ二千年前で、このときにはカロリーの低い食品しかなく食べ物にありつけることも少ない時代だったため、人間の身体はそもそもカロリーの

          著者:鈴木祐【最高の体調】を読んだまとめ

          どうにもならなくなったとき

          体調が悪いとか、気分が沈んでいるとか、人の声にいらいらするとか、何を思っても傷つくとか、そういうどうにもならいときには辞書を読む。 読むページはいつも適当。その日の日付をページ数にして開いたりする。5月15日なら515ページとか。どのページにもきれいな言葉がいっぱいあって安心する。正しい単語と正しい意味がひとそろいで掲載されている、ということを指してきれいと表現したけれど、この表現もきっと今だけ。何十ページか読んで、読んだページに印をつけて、またどうにもならなくなったら開く

          どうにもならなくなったとき

          映画【ハロウィン】を観た感想

          因縁の親子バトルの話。バトルものとスプラッタものとしてはわくわくしたんですがリメイクだと言うことを知らずにこれを初めて見たのでストーリーの部分は少し物足りなく感じました。40年投獄されることになったマイケル6歳の時の殺人について回想がもう少しあったらもうちょっと情報拾えたのかもしれません。 とはいえラストまで観るとぞっとするような恐怖の種を残してくれるのでよかったです。

          映画【ハロウィン】を観た感想

          映画【残酷で異常】を観た感想

          以前から気になっていた作品がアマゾンプライムで観られるようになったので鑑賞。作品紹介からもループものだとわかっていたのですが、妻殺しの男が自らの罪を認め悔いるために死後の時間で罪の告白を強いられ、それが終わると妻を殺すまでの時間を再び体験させられる、ということを何度も繰り返す話。繰り返してゆく中で妻殺しの瞬間に至るまでの時間が徐々に鮮明になりどんなことが起きていたのかが明らかになるが、死後の時間で罪の告白を強いられることに男は納得できず、同じ境遇の人間が集められた大部屋から逃

          映画【残酷で異常】を観た感想