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「下天を駆けろ!」第37話(全42話)

〜大城・電霊宮〜
《…だれ?》
キリエの意識が外部からの接触を感じ取った。だが意識といっても、その殆どがこの大城の中枢に溶け出して希釈されている。キリエはもう、どこまでが自分なのか分からなくなっていた。

~コード…MIO.2…~

突然声が響いた。いや、声ではない。むしろ信号に近い無機質な情報だった。
《みお…?》

~大城…初期化する~

《しょきか?…》

~そう…初期化…全て…大城は…消滅~

《消滅…それは…死…なのか?…》

~死…解読不能言語…無視…~
~…最後に言い残すこと…は?~
 
「無い…ずっと死を…望んでいた…から…」

~…解読不能言語…記録のみ…~
~初期化ぷろぐらむ…注入開始~

《う…お…?》
キリエは、僅かに残された自分の形骸が、漆黒の素子群に溶け出していくのがわかった。
その時だった。
《…居る…》
キリエは、自分が希釈されていく漆黒の素子群の果てに、自分とは違う微かな「気配」を感じた。

~…解読不能言語…記録のみ…~

《…この素子群の…中に…別の…誰か》

~…解読不能言語…記録のみ…~

《…い…る…》

~…解読不能言語…記録のみ…~

《……》

~…対照消失…記録終了…~

キリエだったその存在は、素子群の海に溶かされていく様に見えなくなり、初期化の渦に飲み込まれていく。

~第一任務…初期化ぷろぐらむ注入…完了~

するとミオ・ツーは端子を体内に収納し、みるみる楔形に変形していく。

~続いて…第二任務…移行~

つづく「下天を駆けろ!」第38話

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