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私の中の柔らかい場所 16

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リヤドに帰り夕食を食べた。

その晩何だか人恋しく寝付けず、モハメドに連絡したが返信が来なかった。

全く返信が来ないのでイライラしながらも昼間の疲れで眠りに付いた。

次の日の朝10時過ぎに、昨晩は友達とワインを飲んでいた。ハッシシも少し吸ったので頭が痛くて寝てしまった。

と返信が来た。

モロッコの人達は普段お酒を飲む習慣が無いので、お酒が弱い。

ハッシシは友人達で回し吸いしたりするから、断れない雰囲気なのか。

いずれにしても何だか腹が立ち、返信しなかった。

お昼過ぎにランチは食べたかと返信が来たのだけど、それにも返信しないでいた。

その日はプールサイトでボーッとした時間を過ごしながら、昨日会った彼の事を考えていた。

17時過ぎにリヤドを出て砂丘に向かった。

昨日彼と出逢った砂丘の辺りまで行くと、まだ強い日差しが照りつけていた。

砂丘と砂丘のすり鉢状の窪み、丁度日陰になる様な場所を見つけてそこに横たわった。

ふと、自分はこれからどうなるんだろうなーと考えた。

何処に行っても、誰といてもそこはかとなく感じる寂しさは何でなんだろう。

誰といても、何故かこの寂しさは消えない。

でも、誰かとずっと一緒にいるのは疲れてしまうんだ。

分からない。一体何で?

そう思うと自然に涙が頬を伝った。

砂丘の砂の温かみを感じながら、どうにも分からない自分の寂しさを感じて泣いた。

結局、一人でいても人といてもこの心の空虚な感じはいつまで経っても埋まらないのだ。

しばらくひとしきり泣いた後、背後に砂を踏みしめ歩いてくる音を感じた。

おそらく昨日の彼が来たのだろう。

ああどうしよう、こんな顔を見せられないな。

スマホのカメラモードで自分の顔を見てみた。

やはり目が紅く腫れていた。

ふいに目に砂が入った事にしようと思った。

私は立ち上がり砂丘の崩れ落ちる砂に負けないように足を踏み出した。

砂丘の頂上に来ると、彼が丁度近づいてくるのが見えた。

彼が私に手を振った。

彼の歩いてくる姿を見つめた。

肩に付く直前まで伸びた髪、無駄な肉が無く引き締まった身体と端正な顔立ちだ。

彼が笑顔で「早かったんだね」と言いながら私の横に座った。

微かにふわりと香水の香りがした。

泣いていたのを悟られたく無くて、彼の顔を見る事ができなかった。

「うん。暇だからね、早めに来て昼寝してたよ。そしたら眼に砂が入っちゃって」彼と目を合わせないで話した。

「大丈夫?」彼が私の顔を覗き込む。

びっくりしてふいに顔を逸らした。

「そういえば、あなたの名前聞いて無かった!」

そう私が話し終わった瞬間に、彼に抱きしめられた。

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