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牛ノ寝通り

 小屋平から石丸峠に出て「牛ノ寝通り」を通って奈良倉山まで散歩。

[甲斐大和駅→小屋平バス停]

 高尾駅で大月方面に行く電車に乗り換えようと思っていたのだが、車内アナウンスでその電車が八王子始発だとわかり、慌てて下りると、ホームには溢れんばかりの登山客。登山口である「小屋平」までのバスが出る甲斐大和駅までは1時間以上かかるので座れないとしんどいなと思っていたが幸運なことに着席できた。大月で少し下りたくらいで、その他大勢の方々が途中下車する気配はなく、「まさか皆大菩薩なんてことはないだろう」と思っていたのだが、まさにその通りになった。

 甲斐大和駅で下車したはいいが、階段が人で埋まって動かない。ようやく出口に辿り着くと、外にはありえないほどの数の人。バスの数から推測すると、300人くらいはいたと思われる。始発のバスの時間よりも30分早く着いたが、時間はまったく稼げず、30分強待ってようやく乗車。バスを待っている間に、ソロの女子と会話をする。「すずらん」から取り付いて、牛奥ノ雁ヶ腹摺山→小金沢山→石丸峠→大菩薩峠と縦走する予定だと言っていた。

[小屋平バス停→石丸峠→牛ノ寝通り分岐]

 バスに揺られ40分強、9時頃に「小屋平」バス停に到着。小屋平から石丸峠までの登りは経験済みだが、いきなり急登なのでやはりきつい。50分ほどで石丸峠に着く。富士山の写真を撮りつつ、小金沢山方面へと進み「牛ノ寝通り」の分岐に到着。甲斐大和駅からバスで大菩薩方面 (上日川峠) に向かった人数を考えれば、登山客はいるものの混雑はしていない。

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[牛ノ寝通り→榧ノ尾山 (かやのおやま)]

 「牛ノ寝通り」の山行記録のどれを見ても詳しく書かれていない区間。なだらかな下りが続き「もしかしてこのままこんな感じなのか」と思っていると、急に高度を下げ始める。石丸峠から約2.5kmで500mほど下るが、よく踏まれている上に、落ち葉のクッションもあり (膝に優しい)、ストレスを感じることなく歩ける。期待していた黄葉 (紅葉はもう少し後?) はここから先の展開。榧ノ尾山で小休止をとる。いい天気である。

[榧ノ尾山→大ダワ]

 黄葉している自然樹林帯をずんずんと4.5kmくらい歩いて「大ダワ」に到着。多少アップダウンはあったものの、ほぼ平坦な道。ここで大休憩をとる。ソロの登山者と雑談し「鶴寝山からの富士山が素晴らしかった」と聞く。ここから「小菅の湯」へと下れるが、鶴寝山経由で奈良倉山へと進む。ここから途端に道が不明瞭になった気がする。「小菅の湯」へと下る人が圧倒的多数なのだろう。その理由が後ほど判明することになる。

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[大ダワ→鶴寝山]

 GPSとにらめっこしつつ進むが道を外す。踏み跡が薄い上に、落ち葉で敷き詰められているので、道が不明瞭極まりない。特に「トチの巨樹」経由の小菅の湯への下りの分岐以降。ルートファインディングにストレスを感じつつ、大ダワより3km弱歩いて、13時頃に鶴寝山に到着。残念ながら富士山には雲がかかってしまっていた。まだ5kmほど残りがあるので、気を取直し、歩き進む。鶴峠のバスの時間が気になる。鶴峠バス停のひとつ前は小菅の湯であり、混雑しているだろうことは間違いなさそうなので、できれば15時台のバスに乗りたいのである。

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[鶴寝山→松姫峠→奈良倉山]

 鶴寝山以降、さらに道が不明瞭になったとうっすら記憶している。疲れがたまってきていて、足取りが重い。松姫峠で一旦公道に出て奈良倉山に取り付くが、林道があるのでそちらを歩くことにする。残すところあとわずかと油断していたからか、分岐を見逃し、山頂まで短いが直登を強いられる。ビューポイントはあったが、富士山はすっかり雲に隠れてしまっていた。さて、ここからが本格的にきつかったのである。最後の最後に現れた試練。皆様「小菅の湯」に下るわけである。

[奈良倉山→鶴峠]

 ここまでの日向の道が一転して、日陰一辺倒の道になる。あと1時間ほど遅かったら、ヘッデンが必要だったかもしれない。これまで「道が不明瞭」とはいったが、そんな程度ではない。踏み跡がほぼ無いのだ。GPSを片手に、膝をかばいつつ、牛歩で進む。3km足らずの距離だが一番時間を要した。追い抜かれることも、すれ違うこともいない、まったくの一人旅。整然とした植林帯が不気味さを倍増させている。「ここでクマに遭遇したら、ひとたまりもないな」とびくびくしながら、ゆっくり下る。コースタイムの倍はかかったのではなかろうか、ようやく鶴峠バス停に到着。ほっとする。歩行距離16.6km、休憩込みで5時間半の山行終了。

 誰一人バスを待っている人がいないので、本当に来るのか心配になっていたら、お一方が登場。その後、マダム二人が登場し、どこへ登ったのか尋ねてみると「奈良倉山」と。「道が不明瞭ではないですか」と伺うと「地図の見方を勉強しなさい」と諭された。ごもっとも。

 そうこうしているうちにバスが来たが、予想通り座れず。上野原駅まで1時間立ちっぱなし。駅に到着し、東京方面の電車に乗ると、まさかの朝の女子との再会。お互い疲れ過ぎていたからか「偶然」に驚くことなく、普通に山談義。いやはや「然もありなん」であるが、少し疲れが癒された。今日も多くの登山愛好家と言葉を交わした。たぶん何よりも歩くことが好きな方々。今年はこれで終了かな。

[追記]

 黄葉は確かに見事ではあったが、わざわざ見に出かけるほど興味がないことを悟った。さんざん黄葉の中を歩いてきて、一番惹かれたのは鶴峠バス停の前の黄葉。最寄駅のそばのイチョウの黄葉はもう少し先になるのかな。

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