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陽光
太陽の光を提灯にして
石垣りん
私たち 太陽の光を 提灯にして
天の軌道を 渡ります。
おそろしいほど深い 宇宙の間です。
人間は 半交替で 眠ります。
一日背負っている 生きているいのちの重みは
もしかしたら 地球の重みかもわかりません。
やがて 子供たちが 背負うでしょう
海山美しい この星を。
ひとりひとり 太陽の光を 提灯にして
天の軌道を 渡るでしょう。
石垣りんさんが好きな詩について短い文章を書いた『詩の中の風景』という本の最後にあるご自身の詩である。本の帯には「詩との出會いは、心と心との向かい合いだから宝です。石垣さんはその宝を密やかな口調で語っています。解説はもう澤山。詩との巡り合いを求めてください。それはあなただけの宝を、あなた自身が創り出すことです」という串田孫一さんの文が添えられている。
「心と心が向き合った時こそが詩であり、書くことはもちろん、解説など到底できるものではないが、十分過ぎるほどわかっていて、余すことなく表現もされているのではなかろうか」などと書いてみる。ひとたび言葉にすると、天地ほどの差が生じ、その差を縮めようとするほど、差が広がったりする。「キリがないな」と明らめた瞬間、言葉にできぬ/ならぬままひとつになったりする。