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きっかけはいつも瞬間にある

いつだったか
晴れ間に訪れた雨を見ながら
コーシー(コーヒー)を飲んでいた事があった。

雨はめぐみだわな」

ってぼっそりつぶやいて眺めていたばぁちゃんは
雨がいかに優しいのかを淡々と口にしてた。

「そげやって(そうして)植物に必要なもんを
 黙って運ぶだけんな
 ここに雨が要るだなぁって
 ちゃんと見ちょー(見てる)だけん
 草もわしの畑の子やち(野菜や果物たち)も
 喜こんじょーわ」


私に伝えているかと思って
うんうんと聞いているけど

どうも目が合わない笑笑

でも口から出るその言葉に耳を傾けているのは
すごく心地が良くて
届いているかどうか分からない相槌を繰り返す。

「色んなもんを流すてーのは
 簡単な事じゃないけんな
 人間には出来んことも雨がしてごす(してくれる)が
 ほんにありがたいけんなー

 感謝しちょーますわ雨さんよ


そうやって雨に向かって手を振ってたばぁちゃん。
孫としては
そんなばぁちゃんの生き方が好きで
ばぁちゃんは雨とも話すんやねと問いかけると

「あぁ?誰が?
 雨が降ったら土が動くけん畑に行かにゃいけんで
 かなわんわ(嬉しくないわ)」

って言うまるで別人の回答が返ってきた。

さっきまでそこで雨に語ってた人
どこ行ったん!!!!!!

っていう
口に含んだコーシーが鼻から出るかと思った
出来事をやわらかい雨が降ると思い出す。

昨日は無心になりたくて
餃子をせっせと包んでみた。
無心にはとうていならなかったけど
そう言えば
愛するじぃちゃんと最後に一緒に作った料理
餃子だったなぁと思い出した。

お昼寝中のじぃちゃんを起こして
山盛りの肉ダネを一緒に包んだ。

台所の番人だったじぃちゃんに
私が唯一エッヘンとできるのは餃子を包むことくらい

ばぁちゃんは基本監督なので
不恰好に包まれたり
はみ出したり
むしろそれはワンタンでは?
と思うようなじぃちゃんの餃子
やれ下手くそだのやれこうしろだの突っ込んで
「あんたさんはそげな事も出来んってや」
(あなたはそんなこともできないのか)
自分はやらないくせに言う
まぁ監督だもんね笑笑

でも食べる時は
「どれがオズーさんのやつだかいな?」
って言って
箸で選んで食べる

おじぃはおじぃで
「うまいちょこ(上手に)出来ちょーが!
 ダネがな、こだわっちょー(拘っている)けん」
っていう
自分が全てやったかのような物言いで威張る。

ふざけんなよ!って笑って言う私だけど
あ〜ぁ、もう。
愛してるよって思っちゃう。

なんかそんな事をこの数日思い出している。

いつもきっかけは瞬間的に訪れて
流れた時間を見せては
私の背中を押して行くんですな。

あなたも
不意に何かを思い出す時
思い出した記憶の先にある時間を
愛おしく思ってくださると嬉しいです。

最後まで読んでいただけたこと
お時間をくださったことに感謝します。




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