せっかちな性格
昔からせっかちな子供だった。
小中学生のとき、毎朝スクールバスに乗るのに10分前には必ず乗り場に着いていたし、幼稚園の夕涼み会のとき、幼稚園に着いて早々、誰よりも早く自分の持ち場についてスタンバイしていた。
布をかぶせた机の下に隠れて、団扇を仰ぎ、風を送る係だった。
同じスクールバスに乗る兄弟は、いつもギリギリに乗り場に来ていたし、お化け屋敷の持ち場にいち早くスタンバイしたところで、開始早々いきなりお化け屋敷にくる子はおらず、お友達が外でわいわいやっているのが聞こえてきて、自分はせっかちなのだ、本当はそんな急ぐことはないのだ、と子供ながらに気づいてはいた。
小学生のとき、共働きだった両親に代わって、剣道の送りはもっぱらおじいちゃんがしてくれていた。
袴を着るのは、おばあちゃんが手伝ってくれた。
「こんなにしめて苦しくないんかい」と言いながら手伝ってくれたおばあちゃんの着せ方はいつも緩く、最終的には自分でギュッと結んでいた。
おじいちゃんは、送りの時間まで近くの山の畑で農作業をしていて、決まった時間になると軽トラを飛ばして家に来てくれるのだけど、その時間が毎回ギリギリで、せっかちなわたしはいつもやきもきしていた。
忘れてるんじゃないかな。ちゃんと時計みてるかな。
庭に出て一緒に待ってくれていたおばあちゃんは、「もうじき来るよ」と言うけれど、始まりの時間に一秒でも遅れるのが嫌なのだ。いや、始まり5分前に体育館に着く時点で、わたし的にはアウトなのだ。
家の庭から、山を下りてくるおじいちゃんの軽トラが一瞬見える箇所があるのだけど、それが見えると、あとちょっとだ、と思ってほっとした。
家に着いて早々、軽トラの荷台に防具と竹刀をのせ、助手席に座ると
また超特急で軽トラを走らせ体育館まで送ってくれた。
おじいちゃんは、ハンドルを抱えるようにいつも前のめりで運転していた。運転席でおじいちゃんは何も言わなかったけど、せっかちでまじめな私の性格は良く分かっていて、急いで軽トラを走らせてくれた。
農作業で忙しいのに、わざわざ戻ってきて送ってくれるおじいちゃんにもっと早く来てよとは言えなかった。
しばらく前、車がないと生活できない土地で、おじいちゃんは運転免許を返納したらしい。父から聞いた。
もうおじいちゃんの運転する軽トラには乗れないのだな。
そして、せっかちなわたしの性格は今も変わらない。
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