不妊治療と医療機関の関係

前稿では、妊娠について、当事者の影響を記載したところだが、不妊治療において、当事者ではない医療機関の事情というのは非常に重要だと思うのでこの点について、少し記載したい。

医療機関の事情についてお話する前に、結果論として、私自身の経験を記載しておく。
・夏頃、婚活相手と結婚の意思をお互いに確認
・秋頃、不妊治療に向けて(過去に卵子凍結をしていた)不妊治療機関で検査開始
・11月、入籍に伴い、不妊治療開始(保険適用となるものについて)
・翌1月、卵子・精子採取⇒体外(顕微)授精
・2月、受精卵を子宮に移植
・3月、着床確認
・10月、出産(予定)

これだけみれば、子を希望する者とすれば非常に順調に進んでおり、結婚記念日より前に子を迎えられるというかなりのショートトラックである。
これには勿論両親となる男女の健康状態なども作用しているが、はっきり言って、個人の感想としては、医療機関の指向性も非常に大きかったのように思う。

というのも、不妊治療開始時点で、母体は39歳、父親は50歳であり、はっきり言って、うまくいった場合を考えると子育て待ったなしなのである。また、母体側に顕著な(というか検査でわかるようなレベルのものは)身体的障害は見当たらないものの、父親側の精子の活動量が平均値より若干低めという状況があった。これを踏まえて(だと思うが)、通った不妊治療機関は、最初の不妊治療から、最短コースを迷いなく提案してくれたのである。

ご存じかもしれないが、不妊治療といっても色々ある。私も初めてから知ったが、自然妊娠(特に何も意識せず、Sexにより妊娠)のほか、不妊治療の方法として、
・タイミング法:月に数日しかない排卵時期を狙ってSexをして、自然に体内で受精するのを期待する。最も自然な形だが、排卵時期は流動的でもあり、排卵時期に男性に射精のプレッシャーをかけるのは(男性によっては)あまり好ましくない(機能障害を生じさせかねない)し、そもそも卵子・精子、母体の生殖器(子宮・卵管など精子の通行経路)に何ら問題がないことが大前提となる、結構な博打である。
・人工受精:別途採取した精子を、排卵終期にある母体の子宮に挿入する。男性側の勃起障害等には有効かと思われるが、精子・卵子その他の状況に左右されることはタイミング法と同じ。
・体外受精(ふりかけ法):成熟した卵子を採取し、これに別途採取した精子を振りかけて受精することを期待する。受精した場合、受精卵を子宮に移植し、着床を期待する。受精については比較的直接的な方法だが、卵子と精子の相性のほか、受精卵が子宮に戻せる程度に成熟するか、成熟した受精卵を子宮に移植した際にちゃんと着床するかはわからない。
・体外受精(顕微授精):成熟した卵子を採取し、これに別途採取した精子から活動能力等良いものを直接注入して受精させる、もっとも直接的な受精方法。受精した場合も成熟するか、子宮移植がうまくいくかは分からない。

といったように、方法はさまざまである。
私が通った医療機関は、上記の年齢等の状況を踏まえて、タイミングをとってダメなら次のステップに行って…といった時間がかかるかもしれない方法ではなく、最も可能性が高い・直截的な方法として、最初から顕微授精でいくことを提案してくれた。

勿論、同じ医療機関でも、年齢が比較的若く、特に身体的障害が見当たらないような場合には異なる提案もするのであろう。ただ、不妊治療は基本的に1回でうまくいくものではなく、自然妊娠でも受精しなければ1か月待たなければならなくなる。これが卵子の採取や受精卵の移植を行う場合はホルモン剤採取期間なども考慮しなければならないし、着床しない、着床しても早期に流産してしまうなどとなると、どんどん時間が経って行ってしまう。そして、期待した分だけ成功しなかったときに精神的疲労が溜まる。

個人的には精神的疲労を積み重ねながら不妊治療を進めるのは相当の苦労であることからすると、個人の身体的状況を踏まえて、二人にとってどのような方法でいつまでに結果を得たいのか、費用・期間の想定などを踏まえて、医療機関と相談をして最も効率的な方法を当事者である二人と医療機関が一緒になって決めていくのが望ましいと思っている。

なお、医療機関の選択にあたっては、私個人は卵子の凍結保存の際に、いくつか受診・コンサルしてみて、最も自分が通いやすいところを選んだ。不妊治療をする際にも、平日も含め毎月(時によっては月二回など)治療に通い、また、相当程度待つ可能性もあるから、職場や住居に近い、平日だけではなく週末・休日も開いている、対応している医師の数が多く予約が取りやすいなどがポイントになった(勿論、実績なども一応見たが)。

不妊治療の医療機関は、女性が何度も通うことになり、かつ、医療従事者から時には精神的にダメージとなりうる宣告を受けることもある(避けられない)。それを考えると、対応する医師(たち)への印象もとても大事なポイントになるように思われる。

非常に長くなったが、不妊治療医療機関についてはこれでひと段落として、次は人生初の妊婦生活について書いてみようと思う(産んだらきっと忘れてしまうので)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?