小説『人間きょうふ症』20

 テスト二日目。今日は得意である理系科目もあった。
 数学と地学の場合、制限時間は30分とはいえども、すぐに解き終わらせた。大体15分くらいだったと思う。
 最終科目はK先生が担当している倫理だった。教科書の部分ばかりだから、かなり簡単だったといえる。とはいえ、中にはマニアックな知識も所々必要だった。そういうのが出るときには、集中して熟考し、出来るだけ空欄を埋めようと力を注いだ。
 テストの制限時間が終わると、先生は合図をする。
 「二日間、お疲れさま。」
 「ありがとうございます。どの教科も解きごたえありました。でも、実際に解けたかと言えば、所々わからない部分があって、難しかったです。」
 「どの科目も定期テストよりは難しめだから、解けなくても仕方ないね。んじゃ、これから採点しますね。」
 まる付けをしている間は、課題の時みたいに先生の顔を覗いていた。視線をずっと感じていたのか、目を私の方に向けてくれることが何度かあった。そのときは目を逸らそうとしていた。まだ目を合わせることは苦手なのです。
 長い時間の採点が終わると、先生は少し驚いた様子で言う。
 「佐藤さん、ほとんどの科目は9割でした。中には満点もありました。現代文もすごく成長しましたね。」
 「本当ですか…!」
 「本当よ。あなたの場合は知識の吸収力が高く、思考判断力もずば抜けているのね。難しいと言っていた箇所もほとんど合っていたし、そこまで心配はしなくても良いと思う。これからは受験勉強だけでも良さそうなくらい。だって、教科書の全範囲から沢山問題出して、短時間でスラスラ書いてるくらいなんだから。」
 私は照れながら感謝する。今まで、何かで褒められることは滅多になかった。そのため、なんだか身体がくすぐられるような感覚を覚えた。するとその時、先生は安心しながらも少し考え込んでいる顔をして話し始める。
 「…佐藤さん。これをいうのも何だけど、一旦学校の授業を受けてみない?」
 先生のこの発言は頭を真っ白にさせられる黒魔術のようなものみたいだった。


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