小説『人間きょうふ症』16

 ついに、テストを提出する日がやって来た。先生は、例の教室で待っていた。
 「おかえりなさい」
 「ただいま...って、え?」
 「どうしたの?」
 「“おかえりなさい”っておかしくないですか?家でもないのに」
 「帰るところが家だけだとは限らないでしょう。」
 「ま、まあそうなんですが、ここ、学校ですよ?」
 「そんなに驚かなくても良いと思うけど。そもそもここに帰ってきてるんだから、使っても良いでしょ?」
 「先生、それって単純化しすぎてません?」
 「そんなことはないはずよ?あ、そういえば、採点しないとだね。」
 「あ。」
 「自信ある?」
 「そこまでないです。でも、頑張りました」
 肝心なあの問題のことは何も言わないでおいた。先生はその場で青ペンを持って問題の採点を始めた。
 「そういえば、青で丸つけするんですね。」
 「あなたが前に課題出していた時、それでつけてたからよ。もしかしたら、赤はインパクト大きすぎるからなのかなとか思って。」
 「まあ、半分当たってますね。」
 すると、先生は改めて添削し始めた。しばらく沈黙が続いた。その間は、先生が採点しているところをじっと眺めた。

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