2021年・同人誌装丁まとめ
※同人・BL・二次創作についての記事です。
2021年は、同人活動に力を注いだ1年でした。装丁を楽しむオタクの記事です。全5冊とブックケースの装丁をまとめました。
①俺と師範のささめごと
仕様:A5 / 106P / オフセット
表紙:FC / マーメイド白 160kg
本文:スミ / コミックルンバ白
遊び紙:前後 / タントセレクト TS-7 クリーム
加工:箔押し・黒
印刷所:ホープツーワン様
発行日:2021/03/14
同人活動3年目にして、初めての箔押し・3桁ページの本でした。
あたたかい風合いの「マーメイド」を使用し、タイトル部分に黒の箔押しを施しています。
黒の箔押しは「クールな作風の人がインパクトを出すために使う」イメージがあったのですが、紙とフォントの選びで「柔らかく」使うことができたのは良い発見でした。
本の感想として「タイトルが、筆で書いたよう」とのお言葉も頂けて嬉しかったです。ゼンイツくんが書いてくれたようで、いいですね。
本文はグレスケ原稿を入稿しました。オフセットなのでベタは勿論綺麗です。グレスケ部分はどうなるかな?と不安に思っていましたが、トーンぽく仕上がっていて可愛いです。
トーンのような出力は、「絵柄に合う・合わない」があるかもしれませんが、可愛めの絵柄の方にはドンピシャに似合うかと思います。
表紙デザインはwelca様にお願いしました。表紙用紙・箔押しをご提案いただきました。ありがとうございます。
②ラウンドアバウト
仕様:A5 / 58P / オフセット
表紙:FC / サーブルスノー160kg
本文:スミ / コミックルンバピンク
遊び紙:前のみ / アート遊び紙ハート小
加工:箔押し・赤・2箇所 / 角丸加工(再版時のみ)
印刷所:ホープツーワン様
発行日:2021/03/14
この本は、「いちゃいちゃラブラブ・浮かれポンチ」本なので、「cuteとアホに装丁ステータスを振ろう!」と、思い切って裏表2箇所に、赤の箔押しを施しました。ピンクに赤の箔押しを重ねるのは、中々にアホっぽくていいですね。
小さな凸凹がある「サーブル」に印刷したので、箔押し部分にも模様が浮き出ています。「エンボス紙に箔押しは向かない」とよく言われますが、これはこれで“味”なので、私は好きです。
遊び紙はホープツーワン様オリジナルの「アート遊び紙 ハート小」です。箔をベタベタに貼った表紙を捲って、一番に目に飛び込むのが、このハート!かなりインパクト大です◎
トレぺ素材なので、手触りも楽しめます。
本文用紙は「コミックルンバピンク」。
表紙・箔・遊び紙・本文までピンク系統で揃えた、いちゃいちゃラブラブ本でした。作品に合った装丁が出来たので、お気に入りの一冊です。
表紙デザインは樵様にお願いしました。ありがとうございます。
③俺の神様
仕様:A5 / 148P / オフセット
表紙:FC / OKフロートホワイト 120kg
本文:スミ / コミックルンバ白
遊び紙:前後 / TS-1 橙
加工:箔押し・艶消し銀 / 空押し(面積換算上で1箇所)
印刷所:ホープツーワン様
発行日:2021/05/30
驚異の10.8 mm本でした。背幅にタイトルを入れることが出来たのは初めてです。
タイトルロゴ部分には艶消し銀の箔押しを、エ霞部分には空押しを施しました。シンプルですが、箔押しの光沢感と手触りが楽しめる一冊です。
初版・三版時は「OKフロートホワイト」を採用しましたが、二版時は「OKムーンカラーホワイト」を使用しました。
どちらも、空押しをするときの定番表紙ですが、同じ120 kgでもOKムーンカラーの方が、手触りがしっかりしていて表紙向きかな?と思います。
でも触り心地はOKフロートの方がサラッとしていて気持ちが良いです。
また、同じホワイトですが、OKムーンカラーの方は「パール感がある」+「地の色が少しだけクリーム色寄り」なので黄色の発色が強く出ているように見えます。
同じデータ・出力方法でも、紙が違うだけでこんなにも印象が変わるのは、とても楽しいですね。
遊び紙は「TS-1 橙」を使用。少しだけ、本文1ページ目が透けて見えるのが素敵です。ゼンイツくんのイメージカラーに近いので採用しました。
あと表紙を捲ったときに、裏から見える「箔押しの凸凹」めちゃくちゃいいですよね。
本文はこんな感じ。やっぱりオフセットはベタがマットで綺麗!
炭善同人誌1冊目(俺と師範のささめごと)を描いた後に「長編の構成はこういう風にすればよかった」と思うことが多かったので、リベンジができて満足した1冊でした。
この作品を機に、長編作品への抵抗感が無くなったので、同人活動自体においても重要な作品になったと思います。
表紙デザインは、高遠様にお願いしました。ありがとうございます。
④TNZN緊急SUMMER
仕様:A5 / 82P / オフセット
表紙:三色刷り(蛍光ブルー・蛍光オレンジ・蛍光イエロー) / 五感紙 純白キラ 135kg
本文:群青インク / コミックルンバ白
遊び紙:トレーシング52kg 黄+白トナー刷り
印刷所:サンライズ様
発行日:2021/07/11
装丁を考えるのがとっっっっっても楽しい本でした。
パール感+エンボスで、とんでもなく輝く「五感紙 純白キラ」に蛍光インクを3色刷りしました。とにかくうるさくてポップでキュートです。
イベント会場では一際目立ったそうで、「この本を目印に、炭善島に来た」とのお言葉も頂きました。どんだけ目立ったんだ。
値段が高い蛍光インクを3色刷りは夢のまた夢…というか、やろうとも思っていなかったのですが、今回はサンライズ様の「カラフルかき氷ひんやり大作戦」(セット名)を使用したので、まあまあのお値段で発行できました!
遊び紙は、「トレーシング52kg 黄」に白トナーで地図を刷りました。「本文インク:群青+トレぺ:黄」で補色にしたので、遊び紙が重なっているときは、本文インクが黒く見えるのですが
遊び紙を捲った時は、鮮やかな群青インクが目に飛び込みます。本文インクの変化(黒→群青)を使って、「夏が始まる雰囲気」を演出しました。この意図に気づいてくださった方が一人いらっしゃって本当に嬉しかったです。装丁意図が伝わったときは、喜びもひとしおですね。
本文はこんな感じ。かなり細かい線まで綺麗に印刷されています。
タイトルの「TNZN緊急SUMMER」は、イベント名の「日輪鬼譚緊急SUMMER2021」から文字りました。イベント名の面白さに乗っかるしかない!と最初にタイトルが決まり、そこから本の内容と装丁を考えた一冊でした。
タイトルや本の内容や装丁まで、「楽しく面白く」に振り切った本なのでお気に入りの一冊です。本当に楽しかった!
表紙デザインは、jire様にお願いしました。ありがとうございます。
⑤春を連れてきて
仕様:A5 / 192P / オフセット
表紙:FC / グラフィックファンシー 150kg
本文:FC / マットコート 110kg
見返し:色上質 さくら 中厚口110kg
印刷所:グラフィック様
発行日:2021/12/12
web漫画に描き下ろし100Pを加えて本にしました。シンプルに分厚い。本文用紙にマットコート110kgを使用したので、かなり重いです。
表紙用紙はグラフィックオリジナルの「グラフィックファンシー」。
サイトの説明文によると「マットな塗工処理が施された、ややラフな紙表面で、インキが乗ったところは、グロス感を帯びた仕上がり」だそうです。確かに、マットでラフでグロス感があります。
今回表紙用紙を決めるにあたって重視したことは「余白の白が映えるように、地の色が真っ白であること」「英字タイトルの黄色の発色が良いこと」でした。
他選択肢としては、「アラベールスノーホワイト」「ミセスB-Fスーパーホワイト」「Mr.Bスーパーホワイト」を予定していました。
アラベールスノーホワイト(図の右上)は黄色が綺麗に出ますが、画用紙のような風合いがあるので、絵全体が少しだけぼやける印象。
ミセスB-Fスーパーホワイト(図の左上)は、黄色より赤色が綺麗に出るので、肌の赤みが強く出る感じ。
Mr.Bスーパーホワイト(図の左下)は、発色は綺麗ですが、グロス感が強すぎるため、絵の柔らかい雰囲気を壊すかな?と断念しました。
その点、グラフィックファンシーは、ラフな手触りがあるため、弱めのグロス感が絵の雰囲気を壊さず、黄色の発色も良いので、採用しました。
結果、思い通りの黄色が出たので大満足です。
わかりやすい特殊紙では無いので、表紙用紙は一見なんともない紙のように見えますが、実は悩みぬいたものでした。
(ちなみに:上の写真はグラフィック様のPAPER CATALOGのものです。標準紙から特殊紙まで幅広く取り揃えてるので、実生活にも応用できてめちゃくちゃ使い勝手が良いです。)
見返しには、「色上質 さくら 中厚口」を使用しました。
表紙の桜の色により近い色は「色上質 コスモス」ですが、やはり「さくら」という名称の方が魅力的だったので、コチラを採用。
でも、コスモスは「秋桜」とも書くので、それでもよかったかもしれません。
見返しを付けるのが夢だったので、付けてみましたが、ページを捲るのが少しだけ厄介になります。表紙用紙や本文用紙、製本との関係を考えるべきでした。でも可愛いからヨシ!
本文はこんな感じ。細い線まで綺麗に印刷されています。
フルカラー印刷で、二色刷りとは?という感じですが、元々本にする予定ではないデータで、解像度が足りなかったためフルカラー印刷になりました。
試し刷りのオンデマンド印刷と、実際のオフセット印刷の比較です。オフセット印刷は少しだけ濃く印刷されているように見えます。オフセット印刷の方が「力強く」「鮮やか」な印象ですが、あまり大して差は無いかな?
たくさん描けて分厚い本が作れたので本当に満足しています!楽しかった~!!!反省点としては重すぎたことです。404gは流石に言い訳ができません。分厚い本を作るときは、まず束見本を作るべきですね。
次回は本としての読みやすさを第一に考えて作りたいと思います。
表紙デザインは、吉川夏子様にお願いしました。ありがとうございます。
⑥「春を連れてきて」ブックケース
仕様:A5 / スリップケース縦タイプ / デジタルオフセット
印刷:FC / マーメイド スノーホワイト210kg
加工:箔押し・パール箔
印刷所:プリントオン様
発行日:2021/12/12
ラフな風合いの「マーメイド」+タイトルと花びら部分にパール箔を施しています。パール箔は、色紙・濃い色・グラデーションの上に重ねるイメージがあったのですが、「マーメイドスノーホワイトの白地」でも十分視認性があります。
他選択肢としては、「マーメイド+白箔 / 空押し」「シャインフェイスシルバー」「キュリアスメタル」を考えていました。(吉川様にご提案頂きました。)
ブックケースに入れる本の表紙用紙が「ラフ感・マット感・グロス感」と幅広いので、正直どんな紙でも合うな…と悩みましたが、
「他の人がわざわざ使わなさそうな紙を使いたい」「デザインの白地を活かせる紙にしたい」と思った結果、マーメイドを採用。
また、パール箔は光の加減によってピンク色に光るので、さくら感が出るかな?と思って選びました。春らしく、上品な輝きが可愛いです。
図らずしも、最初に発行した炭善本(ささめごと)と同じ用紙になったので、2021年全体で統一感が出てよかったかなと思います。「マーメイドに始まり、マーメイドに終わる」1年、いいですね。
ノベルティでブックケースを頒布するのは、同人活動を始めてからずっと夢に見ていたことだったので、2021年最後に叶えられて本当に良かったです!
ちなみに、今回は突発的に作ったのでかなりギリギリのスケジュールでした。プリントオン様にお願いしましたが、イベント三週間前に入稿で割増扱いなので、皆さんはお気を付けください。
さいごに
同人活動3年目。紙と印刷に慣れてきて、1冊1冊により強い想いを乗せられるようになった1年でした。装丁は勿論、中身の原稿についても全力を注げたのでとても満足していますし、本当に楽しかったです。
2021年は1冊1冊が重かったので、今年はポンポンと軽いものを出して色んな装丁を楽しめたらなと思います。
とりあえず、次に挑戦したいことは「孔版印刷」「用紙取り寄せ」「トムソン加工」です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
おぬし
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