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37. 中村淳彦『東京貧困女子。 彼女たちはなぜ躓いたのか』

 オーディオブック、特にaudiobook.jpの聴き放題の強みは、ものすごく読みたいというわけではない、もしくは、買って読むほど関心が強くないとき、ライブラリにワンクリックでさっと追加し、通勤やらお買いものやらで歩きながら気軽に聴けるという点だろう。

 貧困にさほど関心があるわけではないが、だからこそ、貧困や介護、風俗といった社会問題を主戦場とする中村淳彦氏が描くノンフィクション、『東京貧困女子。』を聴いてみた。

 書名をひと目見て、売春をテーマにしたものかと想像していたが、それは貧困がたどりつく先のひとつに過ぎなかった。奨学金という名の学生ローン、東京での生活のコストに釣りあわない非正規という働きかた、そして、いざというときに機能しないセーフティーネット。

 こどもの7人に1人が貧困という時代。世界の恵まれない国の話ではない。この日本の話だ。人生のボタンを一度かけちがえると、容易に貧困に陥ってしまう。それも、ボタンのかけちがいはいつでも、誰にでも起こりうる。40歳を間近にして、生活はそこそこ安定しているぼくであっても、だ。

 オーディオブックの再生時間にして10時間。読みごたえ、もとい、聴きごたえのある1冊だった。

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