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53. 山鳥重『「わかる」とはどういうことか 認識の脳科学』

 書名にある問いかけ、「わかる」とはどういうことか。ぼくには結局、よくわからなかった。

 「わからない」があるから、「わかる」がある。
 記憶があるからわかる、記憶になければわからない。
 できごとの記憶をくりかえせば、意味の記憶になるものもあれば、手順の記憶となるものもある。
 全体から俯瞰するとわかる。整理するとわかる。ストーリーとしてつながるとわかる。

 脳科学に立脚した本ながら、エッセイのようにさまざまなエピソードや事例が散りばめられ、ひとつひとつの話は楽しく読める。でも、エピソードが長くて本題が何かわからなくなったり、似たような話のくりかえしだったりで、ぼくの脳内は終始右往左往。

 「わかる」とは何かを知りたかったのだが、「わからない」ばかりが増幅されてしまった。いや、「わからない」があるから、「わかる」がある。なら、「わからない」が増えたというのは、つまりは「わかる」に一歩近づいたのかもしれない。

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