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42. 牧野知弘『2020年マンション大崩壊』

 マイホームか、賃貸か。

 ぼくは、昔からの賃貸派。基本的に飽きっぽいのに加えて、できるならいろいろな地域、さらにはいろいろな国に住んでみたいという思いが強く、マイホームは重荷でしかないように感じていた。賃貸となると、自然、住むのはマンション一択になる。

 それはさておき、牧野知弘氏の『2020年マンション大崩壊』は、タイトルが実に刺激的な一冊だ。

 2015年に出版された本書で示される「2020年問題」は、投資目的で購入された東京のタワマン群が、東京オリンピックの終わりとともに一斉に売られるというものだ。
 2021年に生きるぼくたちは、理由はともあれ、それが起こらなかったという事実を知っている。しかし、本書が提起する問題が無事に解決したわけではない。タイトルこそセンセーショナルだが、「2020年問題」に触れているのはごく一部で、本書の軸にあるのは、外観からは知りえないマンションにおける空き家問題と、やがて訪れる老朽化したマンションのスラム化だ。

 れっきとした資産でありながらも、ライフスタイルとの不一致ゆえに相続人と連絡がつかなくなり、管理費も修繕積立金も滞納される。住人の高齢化や多国籍化が進み、管理組合が機能しなくなる。空き家が一向に減らないにもかかわらず、新築のマンション、特にタワマンは増える一方。

 2020年は無事に越した。でも、空き家問題が解決する気配は一向にない。ふと、中国の地方で見かけた、真新しい高層ビルだらけのゴーストタウンが頭をよぎった。

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