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58. 星覚『坐ればわかる 大安心の禅入門』

 ベルリン出身、兵庫県の安泰寺の元住職で、いまは大阪で禅を説くネルケ無方氏。対象的に、福井県の永平寺での修行を経て、いまはベルリンで禅の道場を開く星覚氏。
 その星覚氏による禅の入門書が『坐ればわかる 大安心の禅入門』だ。

 お寺の息子でもなければ、大学で宗教を専門に学んだわけではない、俳優志望の青年だった著者が、たまたま禅に触れ、禅の世界へ入っていく。途中、欲に負けそうになる、あるいは負けてしまうエピソードも赤裸々に描かれている。
 禅をはじめ、仏教をテーマとした本をいくつか読んできたが、個人的には仏教の教えが頭にすっと入ってこない。ことばは悪いが、一種の浮世離れ的な感覚がどうも苦手なのだ。
 だからこそ、俗世に近い著者の話は、ぼくにとってずいぶんとわかりやすかった。入山後の苦労や、日々のお寺での生活が生き生きと伝わってくる。

 副題に「大安心の禅入門」とあるように、禅の入門にはぴったりの本書。ただし、具体的な坐禅のやりかたにはほとんど触れられておらず、坐禅の入門書ではない点は要注意。

 いまのところ特に予定のない年末年始。坐禅体験や宿坊を探してみるのもいいかもしれない。

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