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ショートショート『紙飛行機の行方』

「明日こっちに来なくていいよ。というかもう別れよう」
久し振りに会えると思ったのに、そんな簡単に言わないでほしい。

洋服だって、誕生日のプレゼントだって準備してある。もうすぐ家を出るというところなのに。

かばんの中からファイルを取り出す。
夜行バスの乗車券を印刷したもの。
片道7時間。
いつもはあなたを想いながら目を閉じるけれど、
このままじゃ家のベッドでも眠れそうにない。

テーブルに置いた乗車券へ自然と手が動いている。
行先が見えないよう半分に折ったところで気づく、
鶴も作れない私が唯一折れるのは飛行機だけ。
こんなの小学校以来かな、友達と一緒に遠くまで飛ばして遊んだっけ。

完成した紙飛行機を持ち上げてみる。不格好で安定して飛ばせる自信はない。
ただ飛ばしても良かったけれど、ちょうどゴミ箱が目に入った。
私は綺麗に手首のスナップを利かせて紙飛行機を離す。
ゴミ箱に入るかなんて、どうでもよかった。





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