見出し画像

“東京演劇道場”が開催する“Dojo WIP”で上演する“再生”について

東京演劇道場が開催する【Dojo WIP】で上演する『再生』に演出として参加することになりました。なったんですが、この報告だけでは演劇に詳しい人にしかよくわからないんじゃないかと思い、僕の個人的な視点から「どんなイベントなのか」「誰がなにをするのか」「何を見れるのか」このnoteで整理してみたいと思います。


“東京演劇道場”ってなにさ

僕は“幻灯劇場”という劇団にも所属していますが、“東京演劇道場”という集団にも所属しています。“東京演劇道場”を簡単に説明すると、東京芸術劇場の芸術監督・野田秀樹が立ち上げた「次世代の役者・芝居人のための修行の場」です。

東京演劇道場最初の公演となった『赤鬼』のフライヤー

東京演劇道場には過去2回のオーディションで選ばれた俳優たちが在籍しています。芸術監督の野田秀樹に加えて海外から演出家・俳優のリロ・バウアー、エリック・マレット、ダンサー・振付家の井手茂太や黒田育世、劇作家・演出家の柴幸男らを講師に迎えてのワークショップや勉強会を実施。2020年夏には東京演劇道場としての最初の公演『赤鬼』、2022年冬には柴幸男を演出家に迎え『わが町』を上演したりしています。

二回目の公演『わが町』(演出 柴幸男)

2021年に「東京演劇道場 the2nd」と称し、新メンバーを募集するオーディションが行われ、最終的に36名のメンバーが新たに加わりました。僕もそのうちの1人です。
現在僕は京都に住みながら、道場でなにか企画がある毎にせっせと東京へ通っています。普段活躍されているジャンルも世代も多様な俳優さん達との作品作りはとても刺激的で、自分の作品へさまざまな影響を与えてくれました。
普段クローズドな活動が多く、謎に包まれた印象を持たれる集団ですが、「舞台俳優の為の研鑽の場/修行の場」という言葉通り、僕にとっては演劇と自分を見つめ直す、とても有意義な場になっているのです。

WIPってなにさ

WIPってなにさ。読み方“ウィップ”であってる?

ここまで読んでいただき“Dojo WIP”のDojoパートは理解していただけたと思うので、WIPってなんだろという話をしていきましょう。

WIPは[Work In Progress]の略で“作業中/やりかけ”という意味があります。ワークインプログレス公演は、観客が普段見ることができないような“創作過程”を公開したり、制作途中の“未完成の作品”を公開したりするイベントです。「え、完成してないのに途中を見せちゃうの」と驚かれているあなた! 超わかる!

僕はWIP公演を観るのがかなり好きなんです。作品を完成させるために作家や俳優はいろんなプレッシャーにさらされる。「評価されるものを作らねば」と焦ったり「売れるものを作らなきゃ」と気負ったりして、今までにない難しい演出に挑戦することを避けてしまったり、どこかで見たことがある表現を多用してでも完成度を上げようとしてしまうこともあります。

WIP公演では作り手がそういう緊張から放たれて、自由な発想で創作に向き合うことが出来る分、いつもより大胆な挑戦ができたりします。「見たことがないものを見られるかも!」と思えるので、僕はWIP公演が好きです(見たこともないほど大失敗する作品もあるかもしれません)。

しかも、今回のイベント“Dojo WIP”では八企画ものワークインプログレス公演を一気見することができるんです!! こんなに大量の“つくりかけ”を観ることができるイベントはなかなかありません!! 演劇って色んな面白がり方があるんですねぇ!

『再生』との出会い

東京デスロック『再生』劇団+現地バージョンツアーのフライヤー

昨夏『再生』という作品を初めて見た。生身の俳優が目の前でなんども再生(REPLAY/REBIRTH)するのを目の当たりにして、客席に座っているだけの僕も汗だくになっていた。ほぼスポーツ観戦だ。紛れもなく“演劇でしか体験できない”作品だった。

DojoWIP版『再生』の製作風景

2006年初演当時の社会問題であった集団自殺をモチーフにしながら30分の物語を3回繰り返すという特異な構造で、決して再生できない“時間”や今ここにある“生”を克明に描き出していく。東京デスロックの多田淳之介さんが考案した『再生』という作品は、僕の中の“演劇”をひっくり返すような画期的な作品でした。

Dojo WIPでの上演では、多田淳之介さんの原案をもとに30分バージョンの新しい『再生』を作ることに挑戦します。90分の作品をどうやって3分の1にするんだろう。ゲームのRTA(リアルタイムアタック)のようにショートカットできるバグを見つけるのか、全編三倍速で再生するのかちょっと見当もつかないが、共同演出の李そじんさんと尊敬する9人の俳優の皆さん(安東信助さん、大野明香音さん、川原田樹さん、木山廉彬さん、平野 鈴さん、益山寛司さん、間瀬奈都美さん、瑞生桜子さん、茂手木桜子さん)とともに、WIPらしく、のびのび大胆な挑戦を重ねていきたい。

藤井が東京でお芝居することあんまりないよ!

2021年こまばアゴラ劇場主催プログラム『盲年』上演写真

僕の演出作品が関東圏で上演されることはそんなに多くない。特に東京でのこれまでの上演機会はたった三回だけ。
2021年こまばアゴラ劇場での『盲年』、2023年3月新宿シアタートップスでの『0番地』、そして23年11月東京芸術劇場シアターイーストでの『再生』だ。

『盲年』のWIP(作ってる途中)

今後も機会に恵まれたらいいなぁと思っているけど、今んところ次に関東圏で演出作品を上演できる機会は真っ白だ。せっかく関東圏で上演する珍しい機会ですので普段「関西まで流石に観に行けないわ」と諦めている方もぜひ、この機会に観に来てください。

23年3月に新宿シアタートップスで上演した『0番地』

限られた時間の中で、身体と必要最低限のものを使ってなにができるのか。稽古は始まったばかりですが今から上演が楽しみです。八つの作品のWIPを通して、演劇の懐の深さを楽しめる企画になればいいなと思います。

「才能が出会いさえすれば、面白いものが出来るのを私は知っている」

チケット料金
[全席自由・税込]
一般2,500円高校生以下1,000円
発売日

一般発売:2023年10月21日(土)10:00~

チケット取扱
【東京芸術劇場ボックスオフィス】
電話0570-010-296(休館日を除く10:00~19:00)
※一部携帯電話、PHS、IP電話からは、ご利用いただけません。
窓口営業時間:休館日を除く10:00~19:00WEB
https://www.geigeki.jp/t 
※24時間受付(メンテナンスの時間を除く)

イベント詳細は東京芸術劇場HPへ🔽
https://www.geigeki.jp/performance/theater353

❤︎スキを押してくれると「心の底からありがとう」というメッセージが出ます。他にもいろんな場所からありがとうが出る可能性があります。 サポートしていただいたお金は僕の生活や創作を潤します。なぜか最近手がカサカサなのでハンドクリームを買います。ありがとうございます