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MOKUBAZAの「チーズキーマカレー」

 今年に入って、カレーの雑誌を2冊も買ってしまった。『BRUTUS』の特集と、調理する機会もないのに『dancyu』。SNSで特集本が出るという情報を聞きつけると、僕はすぐに飛びついてしまう。ほかにも2冊欲しいムック本がすでに出ているし、先日『マツコの知らない世界』でも(今までの放送の再編集版ではあるが)「カレーの世界」が放送されたようで、ここ数年、カレーはやっぱり大人気コンテンツなのだなと感じさせられる。

 僕がカレーにハマったきっかけは、間違いなくインスタグラマーの吹春友介くん(年上の方です)だ。とてつもなくイケメンで、身長が僕と同じくらいに低めの、ゆるゆるマッシュ。「ファッションの勉強に」と思って何気なくフォローしたのだけれど、彼のカレーに対する熱意が、ハンパなかった。
 フォローした時期がおそらく彼にとってのカレー最盛期だったのか、投稿は5回に1回くらいお店のレビュー。ストーリーズのハイライトにも他のお店情報がまとめられているし、行く店すべてがおしゃれ。彼をフォローして、カレーがCoCo壱やインドネパールだけのものではないんだな、ということを、まだ東京で全然遊んだことのなかった当時の僕は知ったのだ。

(写真は恵比寿の「Good Luck Curry」)

 と、ここまで吹春くんの話をしてきたけれど、今回取り上げるこのお店は彼経由で知ったお店ではない気がする。僕がはじめてMOKUBAZAを訪れたのは、2018年9月。彼のその頃の投稿を見ると既に「チェック済み」のようだけれど、どうもそんな気がしないのだ。しかし、彼の投稿から垣間見えるおしゃれライフを求めて、軽い足取りで向かったのは覚えている。なんてったって、人生初のカレー店なのである。「食べるだけで強くなれる気がする」、童心にかえったような気分だった。

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 「北参道」という馴染みのない駅に着いてしばらく歩くと、行列が見えた。オープン時間を事前に調べて平日の開店前に向かったから、少し予想外。でもその行列が、何だかちょっと嬉しくて、僕は即座に列に入った。
 店内は、真昼間であることを感じさせないくらい、温かみのある雰囲気。夜のバー営業がメインだから、バーカウンターに座って食事を楽しむ(テーブル席もある)。頼むのは、インスタで見た「チーズキーマカレー」。

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 ここまで書いて、思い出した。僕はこのカレーライスっぽくないビジュアルに心を打たれて、このお店に寄り道をしたのだった。卵黄の下にチーズ、そしてキーマ、白ごはん。リゾットのようにしていただく日本のカレーは、シンプルだけど、ちゃんとコク深い味わいだった。これは美味しい。

 そして、この可愛い見た目からは想像できないけれど、意外にもこのキーマは辛かった。卵黄を崩してマイルドにしても足りず、自由に注げる冷たい水を何杯もがぶ飲み。今思い返せば、あれは「洗礼」だったのかもしれない。けれど、そのスパイスがクセになって、忘れられなくて、僕はこの時から、カレーめぐりの旅をはじめようと決意を固めてしまうのである。

 今年4月のステイホーム期間、各カレー店がこぞって始めた冷凍カレーの販売。僕は、MOKUBAZAのこの「出会いの味」を忘れられなくて、3袋分注文してしまった。出来上がったカレーは、お店で食べたそれには敵わなかったけど、塞ぎ込んでしまった心にエールを与えてくれた。また心おきなく遊べるようになったら、訪れたいお店。今度は誰かと一緒に楽しみたい。

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