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Shift

 「何もしない」を2日間くらい味わっていたら、心がスッキリしていくのがわかった。ふかふかのベッドは最高の相棒で、睡眠は最強のリラクゼーションだ。嫌だった出来事も足首の疲れも、僕の知らないどこか遠くへ連れて行ってしまう。今後本当にテレワークが中心になっていくなら、作業用の椅子にお金をかけるのも悪くない。特別給付金はすべて家に入れてしまったけれど、貯金を切り崩して拵えている、そう遠くない未来が見える。

 先週半ばでようやく仕事を終えることができ、久々にフリーだ。徹夜の作業に慣れていながら、オフになるとたやすく眠れてしまう僕の体は、こういう時に都合が良い。そうして少し余裕が出ると、「隣駅の新しいドラックストアに行ってみよう」「久しぶりにお風呂を沸かそう」なんて考える。それに加えて、彼女や友達に会う約束があれば、もう充分にリセットできてしまう気がする。コスパの良い自分でよかった。ナイトクラブで踊り明かすことや年イチの海外旅行が趣味だった人とか、いま大丈夫かな。

 とはいえ、スマートフォンを何回か操作するだけでモノが買えてしまう環境下、外出とひきかえに物欲はどんどん高まっていく。ウイルスはダンボールに長期間生息しやすいとか、そういうニュースをいつからか気にしなくなってから、Amazon、楽天、ヤフオクなど、いろいろなサービスを豪勢に利用している気がする。やけ食いならぬ、やけ買いのようなものなのだろうか。「いつか一人暮らしをするなら、今のうちに好きなものを買ってしまおう」という理論は、今後どれくらい有効なのだろう。

 大学入学直前に購入したMacBook Proも、5年半をもってお別れすることにした。ネットサーフィンもブログの執筆も、ときには写真や動画の編集も一緒に歩んできた、マイ・ファースト・マック。USBポートは心なしか緩くなっている気がするし、「Shift」キーや「A」キーなんて黒塗りが剥がれてしまっていて、ちょっと切ない。PCの平均寿命は5年半と言われているから、相応の老いっぷりだろう。未だに気に入ってる機種なので、捨てたり下取りに出したりせずに、新しいMacBook Proに世代交代をするつもりだ。

 正直に書けば、前回Macを選んだ決め手は、背面の光るAppleマークに憧れたからだったけれど、今度うちにやってくる機種はもう光ってくれる仕様ではない。USBポートはすべてType Cになって、キーボードの上部はTouch Barというタッチパネルに、トラックパッドは感圧式に。今使っているMacはSDカードスロットも内蔵されていたから、ティムクックの都合でどんどん刷新されていく新Macに慣れない人たちに、「一番いい時期のMacだね」なんて言われることも多く、そのたびに僕は、ちょっと鼻が高い心持ちでいた。

 だけどこれからは、新しいモノに適応していこうと思う。仕事の現場で使われるアプリケーションは日々進歩するのが世の常だし、前段の刷新の話だって最近に始まったことではないから、ここまで読んでくれた人はきっと〈今更何を文句言ってるんだ〉とツッコミを入れたかったにちがいない。
 レザーケース、液晶保護フィルム、スタンド、USBハブ、それに外付けSSDも取り揃えてしまった。手厚いケアをして出発する2代目は、どんな夢を見させてくれるかな。

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