中高年のヒーロー ドラマ「半沢直樹」

第1弾に優るとも劣らず、今作も面白かった。前回の伏線をきれいに回収し、モヤモヤ感も解消。池井戸潤さん原作のドラマは、簡単に言えばどれも同じ流れだが、どの作品も目が離せない。その中でも、半沢直樹はキャラの個性が立っていて、ピカイチだと思う。

ここまで魅了される理由を考えたところ、半沢直樹は、子どもにとっての仮面ライダーや戦隊シリーズのように、中高年のヒーローなのだという結論に至った。彼のように信念を持ち、清濁併せ呑み、長いモノに巻かれず、恫喝にも屈せずに信じた仕事を遂行し、背中で語りながら、気づけば後輩や仲間に恵まれている。誰でもそんな働き方をしたいものだ。

しかし、実際には難しい。家族がいればリスクは取りにくくなり、危ない橋は渡れない。マルチタスクを抱えて仕事をこなしている現代のサラリーマンは忙しく、政府や上司の指示とあれば、何も考えず、そのまま受け入れる方が楽だし、後から言い訳もできるので、多少違和感を覚えても、そのまま従ってしまう。高圧的で、強い口調の人と議論をするのはエネルギーが必要であり、疲れてしまう。

半沢直樹は、そんなことはどこ吹く風で、組織ではなく、顧客のために戦い続ける。眩いばかりのスーパーヒーローだ。自分がやりたくてもできなかったことを、彼の姿に投影し、溜飲を下げる。そして、翌日からの仕事へのモチベーションを充電するサラリーマンは多いだろう。

私も忙しさの中で、妥協してきた場面か過去にあった。全てにおいて信念を追い求めると仕事が進まないが、半沢直樹のようにここ一番では妥協しないよう、何のために働いているのかを改めて問い直したい。家族のために、というのは耳障りがよいが、思考停止ワードな気がするので、もっと脳を使って考えたい。

半沢直樹はカッコいいが、そのまま真似してうまく行く人はごく一部であろうことに注意を要する。過去の似た経験を思い出す。私は長い間サッカーをしてきた。中田英寿さんが彗星のように現れたとき、中学生だった。彼もまたスーパーヒーローで、サッカーだけではなく、生き方がカッコよかった。思春期の私にはとても眩しく、強い影響を受けた。同年代にそんな方は多いだろう。

彼は、当時の日本サッカー界では飛び抜けた存在であり、見ていたビジョンが違ったのだろう。驚くようなところにパスを出し、FWが反応できなければたとえ先輩だろうと容赦なく叱咤する。これもカッコよかったので、当時の私は、到底届かない位置にパスを出して、届かなかったFWを怒鳴りつけた。今思うと恥ずかしい。ビジョンもテクニックもないただの凡人が、信念も狙いもなく、ただDFの裏に強いボールを蹴りこむだけの独りよがりのプレイだったのだ。

強い相手にやり返す「倍返し」はカッコいい。しかし、能力もなく、ろくに努力もせず、信念も持たずに、上司の揚げ足を取り、当たり散らすのはただの厄介者だ。強烈な存在感は、強烈な個の力とそれに見合う性格があって初めて成立するものだ。才気煥発とは言えず、うまく怒鳴ることもできない私は、半沢直樹の信念に殉ずる気持ちは見習い、しっかり信念を持ちながらも、上下左右と良好な人間関係を築いて仕事を進めていきたい。そして誰かのヒーローとはいかなくとも、尊敬されるようになれれば最高である。

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