「もがく。」1話

競輪。それはバンク(競走路)の上を自転車で走り、誰が一番最初にゴールするかを競う至極簡単な競技である。ただその選手達は一番を目指す為に血を吐くような努力する者たちの集団である。

北海道七飯町。ここから函館市にある高校まで毎日片道30km。毎日自転車を漕ぎながら通う。
もうすぐ、夏休みだが今日は憂鬱だ。
高校3年の夏になってもやりたいことが見つからない。今日は進路相談。はぁ、憂鬱だ。
そんな事を考えてると、時刻は7時50分。
やばい遅刻だ、、
急ぎ漕ぎ出し、学校へ向かう。


「….   …   新垣。 新垣新。 新垣新いるか??」
教室の担任の声が広がる。
すると廊下から声がしてくる。
「はい、はい、はい!います。新垣新います!」
息を切らしながら、走ってくる。
「おう、間に合ったな。」
担任は笑顔になり、教室も笑いが広がる。
すると、担任から一言。
「新垣、今日の放課後残れよ。進路相談。まだだろう。」
俯きながら返事をした。
はぁ、憂鬱だ。


放課後になり、担任の元へ向かう。
「新垣、お前やりたい事とか学びたい事ないのか」
少し緩い空気を出し、担任が聞く。
「学びたい事。やりたい事。ないですね、、」
これは本当だ。
「とりあえず、大学いこうかなと、、。」
したを向きながら答える。
「そうか、まぁもうあまり時間もないからな、」
担任も少し悩みながら話す。
「やりたい事は大学から探しても問題ない。」
持っていた資料を観ながら話す。
「とりあえず来週までに行きたい大学探しておけよ」
こちらに再度、視線を向けて話す。
「はい、、、」
はぁ、探すか、、やりたい事、、。
「そうだ、新垣。今日帰り道、人が多いかもな」
思い出したように言う。
「え、なんで、ですか?」
疑問に思い返した。
「いや、函館の競輪場でデカい大会があるらしい」
その疑問にすぐに、担任は返す。
「競輪?ですか?」
競輪、、名前は聞いた事あるけど、ギャンブルでしょ、あれって、、、
「なんだ気になるのか?高校生でも観れるから観てこいよ新垣。」
「はい、、てか先生、なんで知ってるんで、、」
問いかけるとすぐさま
「ささ、終わり終わり、帰れー」
担任はすぐに言いかけた言葉を遮った。
逃げられた。
担任に別れを告げ、帰路に着く。
ようやく解放された。競輪か、、観てみるか。
心の中で思う。

帰り道の外れにある函館競輪場。
普段、たまに目にする時は人はほとんど見られず、
閑散としている。
ただ、今日は全く違った。
観客の数がすごい。歓声もたくさん聞こえる。
これが競輪場、、、凄いな。
心の声が漏れる。
ここには昔一度来た事がある。
冬季はスケート場として開放されているここに、
小さい頃一度来たきりだ。
その時のうろ覚えな記憶を塗り替える人を多さ。
驚きが隠せなかった。
すると1人男が声をかけて来た。
「おい、ガキがこんな所で何してんだ。」
強面の男。身長は180くらいか?妙にガタイがいい。
「あ、いや、帰り道に人混みが気になって、か、か
、かえります。」
男に話しかけられ逃げるよう去ろうとすると、
「観るのは初めてか、競輪。」
ドスのきいた低いこえで話してくる。
「はい、、」
続けて話す。
「こっちへ、こい、」
断れない。これは、
「はい、、」

室内のベンチに座る。片手に紙を握り滑走路を眺める人が沢山いる。周囲を見ていると、男が話す。
「始まるぞ。ガキ。」
振り返り男に視線を向ける。
「始まるって何が、」
男に聞く。
「決勝だ。今日重賞なんだよ。みてろ。」
重賞の決勝?何を言ってるかわからない。
するとラッパのような音が会場に鳴り響く。
その音と同時に会場は歓声で盛り上がる。
驚いて声が出ない。
いろんな服をきた選手が並び自転車にまたがる。
すると銃声がなり、レースが始まった。
始まると男が解説してくれた。
「レースは5周走る。最初の3周は隊列を組んだ選手同士で並んで走る。」
「隊列ですか?個人戦ですよね?」
出て来た疑問を男にぶつける。
「競輪はチームで戦う個人戦だ。基本的には同じ地区同士でチームを組んで戦う。」
淡々と男は答える。
チームで戦う個人戦。かっこいいな、
「もうすぐ動くぞ、残り2周だ。」
「はい。」
目線が選手達から外せない。
一気に速度が上がる。隊列を組んだ選手が列になり、先頭争いをしだす。
すると会場から鐘がなる。
あと一周半だ。
先頭を逃げる選手のスピードが更に上がる。
速い。1人だけ圧倒的に。素人目に観てもわかる。
そして、そのまま逃げ切った。
会場は大盛り上がりする。
放送からは.
「1着は佐々木駿。圧巻逃げ切りです。」
佐々木選手。すげぇ、かっこいい。
あいた口が塞がらずにいると男が話す。
「佐々木駿。今競輪界最速の男だ。」
その名前が頭から離れなかった。


男と別れ、帰路に着く。
自転車を漕ぎながら考える、
さっきのレースが忘れられない。
佐々木駿。信じられない速度だった。
会場の盛り上がり。歓声。
俺もあの場所で走りたい、、、
やりたい事が見つかった。
競輪。競輪がしたい。
心のに決めて自転車を漕ぐ。
いつもより少し早く。




この1人こそのちに、競輪界を震撼をもたらす、
怪物世代と呼ばる125期の1人である。









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