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【R5電気電子部門:必須問題】Ⅰ-1[添削論文]/技術士第二次試験

【1】 はじめに

 以前、私の下記noteで受講生さんの試験後の「再現論文」を投稿しました。

https://note.com/sosou_nino/n/n236bd9ea67fd

 この記事では、再現論文に対する添削事項、添削後の解答論文などを以下に掲載します。


※注意事項: 2024年4月16日(火)より、本記事の【5】以降は有料版とします。


【2】 問題文

 大規模かつ複合的なシステムで広く用いられてきている仮想化、レイヤ化、モジュール化、ソフトウェア化、などは、効率的に開発するうえで重要な『手法』である。一方でこのような『手法』は、入出力情報をもとにハードウェア技術の理解なしに組み合わせているため、統合されたシステムの全体の振る舞いが把握しにくくなっている。例えば、技術者が入力と出力しか把握しないことで、それまで実施確認していた事項がおろそかになり、エンジニアリング業務を遂行するうえでの障害になっていると考えられる。上記の状況から、電気電子分野における影響を踏まえ、 今後どのように克服して発展させていけばよいか、解決策と将来像についての道筋を示すことが求められる。以下の設問に技術面で解答せよ。(人事、政策などは含まない。)
 
(1)電気電子分野の技術者としての立場で上記『手法』を活用する際に生じる3つの課題を多面的な観点から抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。(*)
(*)解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。
 
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対する解決策を3つ、電気電子部門の専門技術用語を交えて示せ。
 
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
 
(4)前問(2)で示した解決策の実施において、技術者としての倫理、社会の持続可能性を踏まえて必要な要件を題意に即して述べよ。


【3】 再現論文(添削前:by 受講生)

(注)noteの表示上、項目名を下線で表示できないので、太字で表示させます。また、最後の1文も太字で表示させます。

1.大規模・複合的なシステムで用いられる手法の課題及びその観点
●観点1:仮想化、レイヤ化、モジュール化、ソフトウェア化などの手法を活用する際に、ハードウェア技術の理解が不十分である場合、システムの全体的な振る舞いを把握することが困難になる。
 →課題1:ハードウェア技術に関する知識を深める。
●観点2:大規模かつ複合的なシステムを扱う場合、システムの複雑性によって、システムの全体的な振る舞いを把握することが困難になる。
 →課題2:システムの構造を明確にする。
●観点3:技術者が入力と出力しか把握しないことで、それまで実施確認していた事項がおろそかになり、エンジニアリング業務を遂行するうえでの障害になっている。
 →課題3:システムの全体的な振る舞いを把握する手法を確立する。

2.最重要課題とその理由、及び解決策
 前述した課題のうち、最も重要と考える課題は「課題3:システムの全体的な振る舞いを把握する手法を確立する」である。
 その理由は、システムの全体的な振る舞いを把握することは、システムの設計や開発において非常に重要であり、システムの問題点を特定し、改善するための基盤となるからである。
 この課題に対する解決策として以下の3つの手法が挙げられる。
➀システムトレーサビリティ
 本手法では、システムの要件から設計、実装、テスト、運用までの全てのプロセスを追跡し、システムの全体像を把握することができる。
②モデルベースシステムエンジニアリング
 本手法では、システムのモデルを作成し、そのモデルを用いてシステムの全体像を把握することができる。
③システムアーキテクチャ
 本手法では、システムの構造を明確にし、システムの全体像を把握することができます。システムアーキテクチャには、ハードウェアアーキテクチャ、ソフトウェアアーキテクチャ、ネットワークアーキテクチャなどがある。

3.新たに生じうるリスクとその対策
➀コスト増加:例えばシステムトレーサビリティを実施するためには、システムの全プロセスを追跡するための追加のリソースが必要になることがある。
②時間の増加:例えばシステムアーキテクチャを明確にするためには、システムの構造を詳細に分析する必要がある。
③技術的な問題:設問(2)で挙げた各解決策を実施するには、多くの場合、新しい技術を学ぶ必要があります。例えば、モデルベースシステムエンジニアリングを実施するためには、モデルベースのシステムエンジニアリングソリューションを使用する必要がある。
2)新たなリスクへの対策
 各リスクへの対策として、より効率的な方法を探し、新しい技術を学ぶためのトレーニングや教育を受けることが必要である。

4.技術者倫理及び社会の持続可能性に必要な要件
1)技術者倫理

 技術者はシステムの設計や開発において、倫理的な観点から、人々の安全性、プライバシー、セキュリティ、および環境に配慮する必要がある。システムが人々のプライバシーを侵害する可能性がある場合、技術者はその問題を特定し、解決するための方法を見つける必要がある。
2)社会の持続可能性
 技術者は、システムの設計や開発において、社会の持続可能性に配慮する必要がある。システムが環境に悪影響を与える可能性がある場合、技術者はその問題を特定し、解決するための方法を見つける必要がある。

以上

【4】 評価事項(By 小泉)

https://note.com/sosou_nino/n/n236bd9ea67fd

 上記記事で私が評価した事項を、以下に再掲します。

本復元論文の受講生さんは、問題Ⅰにおいて「B」評価とされました。
私の評価もBが妥当と考えます。実は評価に結構悩みました。
私がB評価とした根拠、悩んだ経緯を以下に示します。

・設問(1)は問題文をオウム返ししているだけで、ここだけを取り上げればC評価となる。
・設問(2)以降は全体的に文章が読みやすく、概ね題意に沿って解答している。ここは評価できる。
・設問(3)の2)新たなリスクへの対策は、やや具体性に欠ける。
・設問(4)は概ねよいが、1)と2)各々の最後の一文が重複して点がマイナスポイント。別々の表現のほうが見識の広さを強調できる。

【5】 解答論文(添削過程:By 小泉)

 ➀追記・修正箇所を「太字」、②不要箇所を「取り消し線」、③部分的なアドバイスを「( )書き」で示しました。

※すみません、編集の過程で消えてしまいました。ごめんなさい🙇

以上


 添削過程の解答論文だけでは、最終的にどんな論文になるのかわかりづらいと思いますので、下記【6】に添削後の解答論文を示します。
 なお、noteの表示の制約がありますので、実際の解答論文では太字で表示することはありません。鉛筆・シャープペン書きなので。
 下記【6】で太字で示した文字は、実際の解答論文では下線を引いて表示します。

【6】 解答論文(添削後:By 小泉)

1.大規模・複合的なシステムで用いられる手法の課題及びその観点
 大規模かつ複合的なシステムで広く用いられてきている手法には、性能劣化、セキュリティ、管理の各観点に対する課題がある。以下に各観点に対する課題を述べる。
1)性能劣化の課題
 仮想化やレイヤ化などの手法を用いることによって、システムの性能が低下することがある。例えば、仮想化によってオーバーヘッドが発生し、処理速度が遅くなることがあり、また、レイヤ化によってデータのアクセス速度が低下することがある。
2)セキュリティの課題
 仮想化やレイヤ化などの手法を用いることで、複数の仮想マシンが同じ物理マシン上で動作するため、機密情報が漏洩する可能性と、他の仮想マシンからマルウェアが侵入する可能性があるなど、セキュリティ上の問題が生じることがある。
3)管理上の課題
 仮想化によって、複数の仮想マシンを管理する必要があるため、管理コストが増加することがある。また、レイヤ化によって複雑なシステム構成になるため、管理が困難になることがある。
2.最も重要な課題と考える理由及び解決策
 前述した課題のうち、最も重要と考える課題は「セキュリティ」である。
 その理由は、セキュリティに問題がある場合、システムが外部から攻撃される可能性と、機密情報が漏洩する可能性があるからである。
 この課題に対する解決策として以下の3つの手法が挙げられる。
①アクセス制御の強化
 システムにアクセスするユーザーを厳密に制限することで、不正なアクセスを防止することができる。その例として、パスワードの複雑さを増すこと、二段階認証を導入することなどがある。
②暗号化の導入
 データを暗号化することで、外部からの攻撃に対するセキュリティを強化することができる。その例として、SSL/TLSを利用することで、データの暗号化を実現することができる。
③脆弱性の定期的なチェック
 システムに脆弱性がある場合、外部からの攻撃を受けやすくなる。このため、脆弱性のチェックを定期的に行い、問題がある場合には修正することが必要である。その例として、ペネトレーションテストを実施することで、脆弱性を発見することができる。
3.新たに生じうるリスクとその対策
1)新たに生じうるリスク
「①アクセス制御」の強化によって認証情報が漏洩した場合には、「a)不正アクセスを受けるリスク」がある。また、「②暗号化の導入」によって、暗号化アルゴリズムの脆弱性が発見された場合、「b)暗号化が解除されるリスク」がある。「③脆弱性の定期的なチェック」によって、脆弱性が発見された場合には修正が必要となる。しかし、「c)その修正によって、さらに新たな脆弱性が発生するリスク」がある。
2)新たなリスクへの対策
a)不正アクセスに対する対策
:アクセス制御、ログ管理、ファイアウォール
b)暗号化解除に対する対策:鍵管理、データの分散
c)修正による新たな脆弱性発生のリスクに対する対策:脆弱性診断、セキュリティパッチの適用
4.技術者倫理及び社会の持続可能性に必要な要件
1)技術者倫理

・情報システムの安全性を確保するために、最善の努力をすること。
・情報システムの利用者のプライバシーを尊重すること。
・情報システムの利用者に対して、適切な情報提供を行うこと。
2)社会の持続可能性
・環境に配慮したセキュリティ対策を実施すること。
・セキュリティ対策の実施に際し、社会的責任を果たすこと。

以上

【7】 おわりに

 疑問点、さらなる改善事項等ありましたら、コメントをいただけますとありがたいです。
 
 よろしくお願いいたします。


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