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【経歴票・詳細論文】「添削」 From 情報工学部門の受験者さん/技術士第二次試験

【1】 受験者さんの紹介

 今回、技術士第二次試験の受験申込みに必要な「経歴票」及び「詳細論文」の添削依頼を受けました。依頼者はブロガーの「よっぴー」さんです。

 以前にも、令和5年度の情報工学部門・必須問題の添削をご依頼いただき、その添削経過をご本人さんの了解いただいて、下記に示すnoteの記事に投稿させていただきました!(よっぴーさん、いつもありがとうございます^^)

 そして、今回添削させていただいた過程を、よっぴーさんはご自身のブログに、下記のとおり投稿されています!

 上記のよっぴーさんのブログの内容とほぼ重複しますが、私の視点で添削させていただいた経過を、以下に掲載します。

【2】 経歴票の添削

2.1 経歴票とは

 技術士第二次試験では、受験申込書に「経歴票」を記入しなければいけません。経歴票は5つ登録します。その項目は、以下のとおりです。
 1)勤務先(部課まで)
 2)勤務先の所在地(市区町村まで)
 3)勤務先の地位・職名
 4)業務内容(★)
 5)従事期間(年・月~年・月)→ 経験年数が自動計算される

 あと、理系大学院の研究経歴を最大2年まで記入できます。
 必要な経歴年数をすべて言うとややこしいのですが、一般的に多いのが経歴「7年以上」です。

 そして、この「経歴票」で最も重要視されるのが、上記★印で示した「業務内容」です。ここで、受験に必要な経験をしているかチェックされます。

2.2 2パターンの経歴票 from よっぴーさん

 よっぴーさんは経歴票を2パターン作成されました。

・パターン1は「社歴を並べたもの(個別プロジェクトではなく、ざっくりと概要だけ記載したもの)」

・パターン2は「出来るだけ個別プロジェクトを並べたもの」

 よっぴーさんが作成された2パターンの経歴票を、以下に示します。
なお、赤字は私小泉による追記です。
{表がちっちゃくでごめんなさいm(__)m}

2.2 質問2点 from よっぴーさん → 回答 by 小泉

 経歴票の添削にあたり、よっぴーさんより2点質問を受けました。
 その質問に対して、それぞれ回答しました。

質問1
 パターン1とパターン2だとパターン2の方が良いでしょうか?パターン1は4社分の経歴概要であるのに対し、パターン2はC社の経験がメインになりますが、プロジェクトの詳細が分かる分、こちらの方が良いのでは?と思っています。
 ↓
回答
パターン1でも、いろんな会社で情報工学の経験を積んできたとアピールすれば、こちらのほうがよいと考えます。
{回答当時、パターン2では経歴不足だと思っていましたが、計算違いでした。よっぴーさん、大変失礼いたしましたm(__)m}

質問2
 出願時の話ですが、実務経験証明書の証明者は、部署の「課長」または「部長」で問題ないでしょうか?
 また、業務内容詳細は現職でなく前職のものですが、証明者は現職の部長や課長でも問題ないと思っていますが、認識間違いはないでしょうか?
 ↓
回答
・問題ありません。
・組織(会社)によりますが、現職の部長または課長さんから、「もっと上の役職もしくは総務・人事部から証明をもらう」ように言われれば、それに従えばよいです。
 (人数の少ない会社だと、社長さんが証明することもあります。)

2.3 質問以外の添削事項 by 小泉

 前述の質問以外に、小泉による添削事項を以下に記載します。

1)R6(2024)年度受験であれば、2024年3月までの経歴を書くことができます。(パターン1の最終行の従事期間が「2023.9~」であり、終わりの年月が書かれていませんでした)

2)業務内容に記入する用語として、令和5年受験案内PDF・p42を参考に、選択科目に該当する内容が入っているとなお良いです。
参考:https://www.engineer.or.jp/c_topics/009/attached/attach_9251_2.pdf

3)ただ、必ずしも上記p42に示される内容の単語を入れる必要はありません。

4)私が情報工学部門の専門ではないということもありますが、業務経歴を読んだだけでは、どの科目に受験されるのか判断できませんでした。
 →逆にいうと、受験科目の専門性のアピールがうすい、ということになります。

5)経歴票は5行ありますので、できる限りすべて埋めた方がよいです。
 →年数のバランス的にC社を2行にするのはいかがでしょうか?

・各経歴に技術士法第二条に示される「計画、研究、設計、分析、試験、評価、指導」が入っていてよいのですが、1つの経歴の中にメインとして実施したことを2つ程度に収めた方がよいと考えます。個人的主観かもしれませんが、3つ以上あるとしつこさを感じます。

6)A社(1社目)でも何か地位・役職を記入されることをお勧めします。ただ俗称(ヒラ社員など)はダメです(笑)

7)経歴票は、上から下にかけて、成長の過程が表現できるとなおよいです。下の経歴で「指導」が入るなど。


【3】 詳細論文の添削

3.1 詳細論文とは

 受験申込書には、前述の「経歴票」のほかに、業務内容の詳細(以下、「詳細論文」という。)を720字以内で書かなければなりません。

 「経歴票」に勤務先の業務経歴を5つ記載しますが、そのうち1つを選択して、その業務経歴に対して「詳細論文」を書くのです。

3.2 詳細論文(原案) from よっぴーさん

 今回の添削依頼にあたり、詳細論文を表形式でいただきました。
 受験申込書では論文形式で記入するのですが、表形式で送られたということは、まだ構想中の原案なのかな?と思い、この内容で添削しました。
 私が受け取った内容を、文章形態に変更して以下の記載します。
 (noteの体裁に合わせるためです)

1.背景
化学プラントの製造装置は24時間365日運転で、安全安定運転による装置の連続運転が必須。
国内の人口減にともなう需要減と採用難を先に見越しており、少人数運営の基盤作りやベテランの暗黙知の見える化による技術伝承を進めていく上でITの利活用が必要。

2.立場と役割
製造現場(全XX部署)のDX推進の情報システムインフラ、プロジェクト予算管理の責任者として、運転管理システムの計画、設計、試験、評価に従事。

3.技術的課題と問題点
技術的課題:OT側へ外部からの侵入を防ぎ安全にITネットワークを接続すること。
問題点:運転業務最適化のためITシステムを活用する中でOT情報の取り扱いは必須だが、OTセキュリティを担保するためITとOTネットワークはITとは分断されいる。ベテランの暗黙知や運転の引継ぎ情報は紙や口頭ベースの伝達のため電子媒体が存在しない。

4.技術的解決策
・OTのシステムをITとOTネットワークを分けるDMZへ配置し、OT→ITのみデータの転送を許可。
・全部署の運転業務を整理し、運転情報を一元管理できる業務システムを導入。
・ベテラン運転員の暗黙知の見える化のため、紙媒体のOCR化、RPAを活用したExcel情報のデータベース化。

5.成果
交代勤務時の申し送り打ち合わせを1部署あたり15分/回短縮。1部署あたり1日平均300分近い時間短縮効果。削減した時間で本来業務へ注力するリソースを創出し、装置の安定・安全運転へ貢献。トラブル時の過去情報検索が容易になり、トラブル収束の短時間化(1.5時間/件)、トラブル件数の削減(3件/年)。

6.(リスクの対策)(今後の展望)
・AIを活用
 予防保全によるトラブルの削減
 トラブルの根本原因の推測

3.3 質問2点 from よっぴーさん → 回答 by 小泉

 「詳細論文」の添削にあたり、よっぴーさんにより2点質問を受け取りました。そして、私は以下のとおり回答しました。

質問1
 「5.成果」は、技術的な成果を挙げるべきでしょうか?私の専門はIT会社ではない会社の情報システム部門なので、技術開発そのものよりも開発された技術を利用した製造メーカー本来業務への成果がメインになってしまいますが、問題ないでしょうか?
 ↓
回答
・成果とは、技術的課題及び問題に対して、技術的解決策を実行した結果、技術的課題及び問題がどうなったかの「結果」と考えます。(当然、課 題・問題が解決された結果です。)
・問われている成果とは、自社部署へ開発済の技術を導入したことでもよいか、ということでしょうか?
 →それでもよいと思います。ただ、口頭試験では「コミュニケーション(コンピテンシーの一つ)」を意識し、自社内部だけでなく、社外関係者との意思疎通も行ったことを意識してください。

質問2
 業務内容詳細は簡潔に事実ベースでまとめてみましたが、技術士のコンピテンシー(専門的学識、問題解決、マネジメント、評価、コミュニケーション、リーダーシップ、技術者倫理)を意識した書きぶりの方が良いでしょうか?
 ↓
回答
・コンピテンシーは、口頭試験で聞かれる内容ですので、ここの詳細論文ではコンピテンシーにこだわらなくてよいと考えます。
 情報工学に関する技術的な課題解決と成果が記載されていれば、それで良いと考えます。

・おしゃられる通り、コンピテンシーを意識して業務詳細論文を作成してください。口頭試験で問われることがないレベルまで、コンピテンシーの内容が入っているとGoodです!(ここは小泉の考えを改めました。)

3.4 詳細論文(受験申込書フォーマットへ変換)

 受験申込書は、所定のExcelファイルを日本技術士会HPからダウンロードして、経歴票や詳細論文を記入することになっており、記入後PDFへ変換したものを印刷して提出することになっています。

 このExcelファイルには決まり事があって、それに沿っていないとエラーが表示され、PDFに変換してくれません(+_+)

 まず、3.2章で掲載した文章式の詳細論文を、このExcelファイルに記入したところ、720文字以内であるべきところが「725」文字と表示され、PDFファイルに変換できませんでした、、、

 とにかくPDFファイルで表示された状態をよっぴーさんへ見せたかったので、内容の変更に支障がないように句点「。」を5つ省いて720文字に収めてPDF変換しました。
 そのPDF変換した詳細論文が以下のようになりました。
 {またもや表がちっちゃくなっちゃってごめんなさいm(__)m}

3.5 添削事項 by 小泉

 私小泉による詳細論文への添削事項を、以下に示します。

1) 体言止めの表現を、動詞止めとしてください。(~する。~した。など)

2)箇条書きで表記する場合、項目4のように、文章の頭へ「・」を付記してください。

3)文章書きとする場合、段落の頭は一マス空けるよう気を付けてください。(上表は字数を720文字に収めるため、意図的に頭の一マスを明けないようにしました)

4)「5.成果」において具体的な数値で評価しているのであれば、技術的課題の前後に、技術的解決策を実行する前の数値を示すと、改善効果がわかりやすいと思います。
 → 現在示されている「5.成果」の数値がどの程度改善されたのか判断できるようになると、効果を把握しやすくなります。

5)全体的な論文の流れとして、以下の構成がよいと思います。
a)「背景」で、本業務の理想またはあるべき姿を述べる。
b)「立場と役割」は、記載の内容でOK。ただし、他項目の書き直しにより、本項目も修正の可能性あり。
c)「技術的課題」で、「背景」で述べた理想・あるべき姿にない状態を理由として、本業務で達成しないといけないことを挙げる。
d)「問題点」では、本業務で達成しようとすることに対し、障害となることを挙げる。
e)「技術的解決策」では、「問題点」で挙げた障害をクリアするための解決策を挙げる。その解決策を選択した理由を付記する。
f)「成果」では、「技術的解決策」を実行した結果、プラスの効果・改善されたことを数値付きで述べる。
g)「リスク対策、今後の展望」は字数が余れば記載する。
 記載するのであれば、「リスク対策」では「成果」が現れているが、今後発生するかもしれないマイナス要因とその解決策を述べる。
 また、「今後の展望」では「成果」が目標値・理想値に到達していない場合、今後、その目標値・理想値をクリアするために何をすべきか、何を現在しているか、を述べる。

6)現論文のままだと、一連の流れがなく、一つ一つの文章が単発的になっています。

7)さらに、私が情報工学部門の専門でないから、本論文を理解できないのかもしれません。
 しかし、逆にいうと、素人を納得させられない論文であるということです。

3.6 助言

 よっぴーさんには上記までの記載事項をお伝えしました。
 あとで、1点伝え忘れたことがありますので、ここに助言として記載します。

 詳細論文において、項目名を含めた書き方として、以下のようにすると改行が少なくなり、場合によってはこちらのほうが読みやすくなります。
 ただ、下記の方法をとるか否かは個人の自由です。

【1.背景】化学プラントの・・・
【2.立場と役割】製造現場・・・
【3.技術的課題と問題点】・・・
  ・
  ・
  ・

 つまり、項目名を【 】で囲み、その右側に文章を書く方法です。
 私が今まで添削してきた受講生さんが多用されています。(私が添削する前から、この方法で記載されています)

 今回の添削は以上となります。
 なにかご指摘、ご質問、改善点等ありましたら、コメントをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。


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