見出し画像

カプセルのなかで読みたい本

今回は、カプセルの中でこそ読みたい、カプセル的空間について考えられた本を紹介してみたいと思います。
ご紹介するのは、『ひとり空間の都市論』(南後由和著、筑摩書房)。こちらは、「カプセルホテル」のようなものからお一人様用の「一人カラオケ」、「半個室型ラーメン屋」など、日本の都市部にあふれる「ひとりのための空間」について考察した、非常に切り口が面白い都市についての本です。都市でひとりで生きる人物像の例として、『孤独のグルメ』の井の頭五郎の行動の分析から始まる導入からして面白いです。
この中で、移動することを前提にした生活スタイルのために設計された建築として、中銀カプセルタワービルにも触れられています。その部分では、このカプセルタワーに込められた思想の副産物として、カプセルホテルや一人カラオケなどが生まれたと述べています。

住まいのほか、飲食店・宿泊施設、さらにはウォークマンなどメディアによってできるひとりの空間について、徹底的に考察された本書。都市で人が集まることとは、集まらないこととは何なのだろう、というようなことを考えさせられるこの本を、ひとり用のカプセルの中で読んでみるのはとても贅沢なことなのかもしれないですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?