サポートのヴィブラフォン奏者が見たフジロックフェスティバル2021

「電話があってフジロック苗場で演奏することになりました!!正式に開催することになったみたいです!!」

僕が2019年からサポートメンバーとして籍を置かせてもらっているピアニスト、草田一駿からそんなラインが飛び込んできたのは今年の2月22日のことだった。
他のサポートメンバーを含めたグループラインでのこと。他のみんなはその日のうちに「おめでとう」と口々に言っていたが僕は返信をしなかった。
あまりにも嬉しすぎた。

と言うのも、僕は中学生の頃からロックが大好きだった。
ブルーハーツに心を奪われ、教室の隅でリンダリンダを熱唱していた。
友達に勧められてミッシェルガンエレファントの沼にハマり、『スモーキンビリー』のPVを観て将来は絶対タバコを吸おうと心に決めた。

そんな僕だから、フジロックに出演するということがどれだけのことなのかは痛いくらい知っていた。そのフェスに出れるという事実が死ぬほど嬉しかった。しかも、鉄琴で。

そんなこんなでフジロックフェスティバルの歴史に名を刻んだ草田一駿よりもテンションがぶち上がっていた憐れな(迷惑な)サポートメンバーの視点から今年のフジロック出演に関して述懐していこうと思う。長文メンゴ。

ステージ集合

はじめに今回の主役である草田一駿と、その素晴らしい楽曲を彩るサポートメンバー達について僕(窪田想士)の視点からご紹介させていただきたいと思う。
各々の素晴らしい実力と音楽性については僕が解説する必要もないので、敢えて人間性にフォーカスして記述していく。
その後に当日の記録をダラダラと述べていくのでお付き合いください。

草田一駿について

画像2

・1999年広島県生まれ。5歳よりピアノを始める。
・初めて触ったゲーム機はDS。この時点でジェネレーションギャップ。
・よくリハで「じゃけぇ」って言う。
・偏差値が高い大学に通ってる。頭も良い。
・映画が好き。映画音楽が好き。
・髪型や服装がオシャレ。洋服は原宿で買ってるらしい。
・行きたい国は南フランス。これもなんかオシャレで鼻につく。
・好きな寿司はカッパ巻き。これはそんなにオシャレじゃない。
・窪田のネガティブさ、卑屈さに嫌気が差しながらも毎回呼んでくれる義理堅い男。
・スマブラで攻撃を受けると「痛っ」と叫ぶ。感受性がエグい。
・「クサダ」ではなく「ソウタ」。
・下の名前は「ソウタ」ではなく「カズトシ」。
・アーティスト名は「カズトシ」ではなく「カズーシ」。トラップが多い。
・ギタリストの人が草田ではない。
・マリンバの人が草田でもない。
・そもそもバンドにマリンバはいない。

サポートメンバーについて

朝田

Gt.朝田拓馬
聖人君子。ソリッドで攻めたクソかっこいいギタープレイからは想像もつかないほどの良い人。忙しい中にも関わらずいつも窪田の相談に乗ってくれる。そこをつけ込まれて窪田に粘着されている可哀想な人。

宮地

Ba.宮地遼
イケメン・高身長・高収入・陽キャ、ベースがカッコイイ。しかも酒やタバコはやらないという、何もかもが窪田とは対極に位置する人。僕がもし音楽をやっていなければ一生知り合うことのない人物。こわい。よく話すけど未だマトモに目を見て話したことがない。(仲は良い)

井口

Dr.井口なつみ
北海道函館市出身。窪田とは同郷ということもあり話が弾むかと思ったが函館と札幌の距離感もあり思ったほど弾まなかった。スマブラが鬼強い。ゲーム好きのドラマーというよりはドラムがクソ上手いゲーマー。スマブラで窪田を吹き飛ばす時に小声で「さようなら」と言う

前日から苗場プリンス入り

出演日8月21日の前日である20日に渋谷でリハをしてそのまま苗場へ向かうことになった。

前日リハ

この時点で僕・草田くん・朝田さんの3人は陰性の結果が出ていたが、宮地さんと井口さんの結果がトラブルにより出ていなかった。あわや出演辞退も考えられたが、リハ中に宮地さんと井口さんの陰性が報告された。今年はまだこんなに興奮した時間はない。

リハで使った機材を車に積み込んで苗場に向かう。僕が運転する車のメンツは僕と草田くん、そして写真家の垂水佳菜さん。

紹介が遅れてしまったが、今回はフォトグラファーとして垂水佳菜さんに帯同をお願いしていた。
この記事で使う写真の大半は垂水さんの素晴らしい技術によって撮られたものである。僕もかなり盛った状態で何枚も撮っていただいた。実際にお会いする人たちが現実の僕を見て幻滅しないことを祈るばかりだ。

そんなこんなで、楽しく怪談話なんかを峠の薄暗い道でしながら宿泊先の苗場プリンスホテルに着いた。

ホテル

ホテルにはフジロックフェスティバルのプロジェクションマッピング。

外

会場の方を見たら煌びやかな照明。
実感が湧かない。

会場入り後、垂水さんに髪型の派手な青年を紹介してもらったら、かの君島大空さんだった。君島さんのご宿泊している部屋に草田くんと二人で招待していただき、深い話をたくさんさせて頂いた。実感が湧かない。

関係者用ホテルには売店や無料で利用できるレストランなども充実しているが、アルコール類は一切置いていない。徹底している。

ポカリバー

ポカリバーなる施設があり、いつでも飲み物がもらえる。ノンアルコールビール6杯くらい飲んだ。普段から車で仕事に向かうヴィブラフォン奏者にとってはもはやオフクロの味。

そして至る所に消毒液が置いてある。同じ検温機や消毒液を日本を代表するスター達が使っているのだろうか。テンションが上がる。

宮地さん達も遅れて会場入り。宮地さん・井口さん・草田くんの4人で会場を散策。なぜ朝田さんがいないのかと言うと、朝田さんはフジロック出演者に多くの知り合いがいるためそちらの方々とハングするらしい。こんな人に粘着している自分を恥じる。

ホテルでの部屋割りは朝田さん・草田くん・僕。

部屋

アサダリョウという存在しない人物の名前が明記されているが気にしないでおこう。

僕らの部屋に宮地さん達も合流し、僕が持ち込んだSwitchでスマブラ大会。

スマブラ

(盗撮なのでタイミング的にそうなってしまっただけで基本はマスクしてます)
(部屋での行動は細心の注意を払っています。草田くんは、真面目です)

宮地夫妻

スマブラガチ勢の宮地さんと井口さんの一騎打ち。
見応えがすごい。

写真を撮りそびれてしまったが、草田くんと朝田さんのド素人対決は宮地さん達の時よりも見応えがあり、RIZIN観戦中並みに熱くなった。
ちなみに僕は宮地さん達より下手で朝田さん達よりは下手ではないという中途半端な実力のため、全く面白くない。
この中途半端さは僕の音楽に似ている。

宮地さん達も部屋に戻り、就寝時間。
朝田さんが最も早く寝た。草田くんは読書をしていた。
僕は緊張から全く寝付けず、草田くんに「緊張して眠れない」と話しかけた。「小学生かよ」と草田くん。ほっといてくれ。
草田くんの読書も一段落ついたのか、消灯。
なんだかんだで気づいたら僕も寝ていた。運転はやはり疲れる。

当日、会場入り〜本番

7時ごろに起床。朝食会場に向かう。

朝食

感染対策で横並び。
戦に備えてガッツリ目に食べておく。どれだけ緊張していても腹は減る。

9時、会場に向けて出発。
みんなは演者送迎用のバスに乗り込んで移動。僕は楽器があるため許可を得て自分の車で会場に向かう。今思えば普通の楽器の人は送迎バスで会場入りするため、それなりにレアな経験をしたと思う。
手伝うために草田くんは助手席に乗ってくれた。道中かなり喋るも、お互い極度に緊張しているため会話が全く噛み合わない。

会場に着いて、搬入・セッティング。

セッティング1

K&Kのヴィブラフォンピックアップマイクはレコーディングでは使ったけどライブでは初お披露目。ほんとは8月16日の自分のリーダーライブでデビューさせるつもりがミキサーを家に忘れたからだ。まぁ、フジロック出演がきっかけで購入したワケだから別にいいんだけどさぁ。

山とヴァイブ

万緑に映える鉄琴。感じたことのない開放感。

サウンドチェックとリハーサル。
ふと気づいたら、ヴィブラフォンのマイクにトンボが止まっていた。
脳内に流れ出す久石譲。エモい。

トンボ

サウンドチェックの合間に、井口さんにスティックと楽器を借りてドラムを叩かせてもらった。

ドラム小僧


フジロックでドラムを叩く。ドラム小僧だった僕の当時の夢が叶った瞬間だ。嬉しい。
ツイートしたらヴィブラフォン関連の投稿よりも伸びた。複雑。

チェックを終え、控え室のテントに戻り本番を待つ。緊張からケータリングのヴォルビックを4本くらい飲むもトイレには全く行きたくない。
草田くんが何かしらのインタビューを受けている。
ピアノを弾いていない時の彼は朴訥な普通の好青年だ。なんかやたらとフワフワしてはいるけども。

そして演奏開始。喉から胃が出そうなほどの緊張。
他の人達はそこまででもなさそう。場数が違う。

演奏中

演奏については特に記述しないので配信かなんか観といてください。

本番後〜帰宅

本番後は汗とアドレナリンがドバドバ。
みんな汗だくだけど達成感のある顔つき。サウナ帰りみたい。
草田くんは色んな人からの連絡や電話に対応しまくっていた。まぁ、そりゃそうなるよね。
楽器を片付けてホテルに戻る。

楽屋

出演日当日は楽屋を用意してもらえる。
この日の全出演者の楽屋が同じ階層にあるため、他の楽屋にはサンボマスター、クロマニヨンズ、NUMBER GIRL、The Birthday、King Gnu、Ken Yokoyamaなどなど、信じられない文字が並んでいる。
もう2日目だけど慣れない。
荷物を置いたらとりあえず食事に行く。

昼食1

昼食2

出演者用の食堂で昼食を取る。
美味しい。しかも無料。

そして楽屋に戻り休憩&魂のエゴサタイム。
僕の場合「草田一駿」はもちろん、「ヴィブラフォン」「ビブラフォン」「ビブラホン」と4回に分けてエゴサをしなければならない。疲れる。
その後はみんなで配信のアーカイブを鑑賞する。映像がとにかくカッコいい。フジロックってすごい。

楽屋集合

楽屋でフジロックフェスティバル公式Tシャツをもらったので記念撮影。
一生の宝にする予定なので、僕はもうおそらく袖を通すことはないだろう
このTシャツと「草田一駿」と書かれた出演者証は是非とも僕の棺に入れてくれたまえ、未来の妻よ。

ここで、宮地さんと井口さんはレンタカーの時間もあるため一足先に帰京。
本当にお疲れ様でした。また10月のライブで会いましょう。それまでにポケモンユナイト始めときます。

この後、僕はフジロックを全力でエンジョイするべく会場へ。
朝田さんと草田くんは楽屋で寝ていたらしい。本当は僕だって寝たかったけどこの日の出演者が熱すぎて無理だった。カッコよく言うとロックが僕から睡眠を奪った。後悔はしていない。(強強打破も飲んだし)

観覧したアーティストについては別の記事で。

ナンバーガールまでタップリとエンジョイして22時ごろに帰路に着く。帰る間際に石若駿さんにお会いしたら、僕のことを覚えててくれた。今夜はよく眠れそうだ。

草田くんと朝田さんと深夜のドライブ。
昨夜ホテルの部屋が一緒だったこともあり、割と盛り上がる。今の所まだ眠くはない。

深夜2時半頃、朝田さんのご自宅に到着。
ここまでくると眠かったので朝田さんに「泊めてください」と半分冗談(半分本気)で言ってみる。朝田さん苦笑いで帰宅。せめてちゃんと断ってくれ。

朝田さんといえば、本番終了後のツイートにおいて「草田一駿」を「草田駿一」と誤字るという、かつて誰もしたことのないミスをしてツイートし直していたが、その内容がこれだ。

朝田さんのツイート

せっかく直したのに今度は「草田一駿」ではないところを誤字ってしまっている。あのギタープレイとのギャップが尊すぎる。
なんなんだこの人。愛おしすぎるだろ。一生ついていきます。

朝田さんと別れて、草田くんを家まで送る。
車内ではすごく深い話をする。(深すぎて道まちがえた)
草田くんがしきりに「運転本当にありがとうございました」と言ってくれる。


確かに苗場に彼を運んだのも、家まで送ったのも僕だ。
でも、本当の意味で僕をあの夢の舞台まで連れて行ってくれたのは、他ならぬ君だ。
感謝してもしきれないけど、とにかく本当にありがとう。


そして僕もようやく家路に着く。明け方5時くらい。
寝る前に発泡酒を開ける。2日ぶりの酒であり大舞台終わりの酒。
世界一美味い淡麗グリーンラベルを飲んだ。

最後に

そして今。
出演日から4日経ち、仕事もぼちぼちこなしてようやく現実の世界に帰ってきたという気がする。
宮地さんも井口さんも朝田さんも、そして草田くんも、みんな本当に素晴らしいミュージシャンだから、きっとこれから先もフジロックに出るチャンスはあるだろう。
でも僕はどうか。
演奏技術はさておき、僕がやっているヴィブラフォンという楽器においては、そのチャンスが何回も巡ってくるというわけにはいかない。
キーボーディストがヴィブラフォンのサウンド設定してしまえばそれでお払い箱の世界だ。
ここまで読んで頂いた方の中には少なからず「興奮しすぎ」「オーバーじゃない?」と思った方もいるだろう。
だからハッキリと言いたい。

ヴィブラフォンでフジロックに出演するなんて奇跡に近い事象だ。

しかも元々ロックが大好きでドラマーになりたかった僕だ。
正直言って、ヴィブラフォン奏者の道を選んだ時点でフジロックに出るなんていう夢はとうに諦めていた。ね?興奮するしオーバーにもなるっしょ?

エントランスで野田洋次郎が誰かと話していた。
廊下で菅田将暉とすれ違った。
エレベーターで細美武士と乗り合わせた。(宮地さんが)
向かいの楽屋からは常田大希と井口理の歌声が聞こえた。
そして何より、
子供の頃からの僕のヒーローであるヒロトとマーシー、チバとクハラが僕と同じフロアに存在していた。
あまりにも現実感がない、夢のような話だ。

先ほども述べたが、そんな夢を見させてくれた草田くんに心から感謝している。

だが残念ながら、本当に残念ながら人間には欲というものがある。
こんなにいい夢を見させてもらったのにも関わらず、愚かにも今の僕はこう思ってしまっている。

またあの場所に行きたい。

それがいつになるかはわからないけど。
いつの日か、またあの場所に行けるように・・・



草田くん!いや草田様!!!!
運転するし飯も奢るから!!!!!!
またヨロシクお願いしますよ!!!
靴ならいくらでも舐めますんで!!!!!!!!





ご静聴ありがとうございました。

2021年8月25日
草田一駿 五重奏体系ヴィブラフォン奏者
窪田想士

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