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双極性障害研究ネットワークニュースレター

以下、メーリングリストに登録しているので、送られてきた文章からの引用です。

さて、今回は、脳画像で精神疾患を分類し直すという野心的な研究の論文をご紹介します。

Vol.141 2023年8月29日

- 脳体積による精神疾患の新たな分類を提案
~認知・社会機能と関連、精神疾患の新規診断法開発への発展に期待

精神科の臨床現場において、鑑別診断が困難であることが時にあります。これは、双極性障害等の精神疾患を有する患者・当事者の方々の、主観的な訴えとしての症状や徴候に基づく診断基準を利用していることと関連しています。こうした背景から、客観的なバイオマーカーを利用した新たな診断基準の創出が期待されています。

大脳皮質下領域構造は大脳の深部にある構造で、これまでの脳神経画像研究等から、運動機能や記憶・情動・意欲などに関与することがわかっています。しかしながら、現行の診断基準の限界点を乗り越える、認知・社会機能を反映するような脳神経画像データ駆動型の臨床的診断基準は、これまでにありませんでした。

そこで私たちは、認知ゲノム共同研究機構 (COCORO)によるオールジャパンでの多施設共同研究体制のもと、14の研究機関において、双極性障害、統合失調症、大うつ病性障害、自閉スペクトラム症の患者さん・当事者の方々と健常者の計5604名より、脳神経画像の一つであるMRI脳構造画像データを収集し、大脳皮質下領域構造についての大規模解析を行いました。なおMRIとは磁気共鳴画像法のことで、磁気を利用して体内を撮像し、放射線被ばくがなく安全な検査装置であり、医療現場で広く利用されています。またMRI脳構造画像は、200枚程度の断層写真の撮像により脳の立体的な形状を知ることができ、脳の部位の体積を算出することが可能です。

まず、各疾患における大脳皮質下領域構造の体積の特徴を調べました。平均すると健常者と比較して、双極性障害、統合失調症、大うつ病性障害において側脳室の体積が大きく、双極性障害、統合失調症において海馬の体積が小さく、統合失調症において、扁桃体、視床、側坐核の体積が小さく、尾状核、被殻、淡蒼球の体積が大きいことを見出しました。

これらの結果は、米国より報告されていた多施設大規模研究の結果を概ね再現しました。

次に、計5604名について大脳皮質下領域構造の体積によるクラスタリング解析を実施し、4つの類型(脳バイオタイプ)に分類されることを見出しました。またこの分類は、認知機能および社会機能と関連しました。

本研究の成果は、近年進みつつある従来の精神疾患の診断基準の見直しに一石を投じ、生物学的データ駆動型の新たな精神科診断基準の創出につながる可能性があります。こうした取り組みは将来的に、精神科の臨床現場において、双極性障害等の精神疾患を有する患者さん・当事者の方々の予後予測や治療法選択に役立つものと期待されます。(岡田直大・東京大学、橋本亮太・国立精神・神経医療研究センター)

Vol.141 2023年8月29日

現状では、精神科医による診断とは、精神科医の経験値に依存しているため、実際には「誤診」も多いのが現状です。

それが将来的に「MRI診断画像」によって病名の特定が可能になるような将来があるならば…もっと望めば、血液検査によって精神疾患の診断名が特定できるような「未来」が、一日も早く、期待せざるを得ません。

それほどまでに、現状の精神疾患における「診断名」の特定とは、DSM-5などに依拠しすぎており、はっきりいって「医学」と呼べるような診断方法ではないと思います。

もっと科学的、客観的な「診断方法」が、1日も早く求められる昨今です。

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